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これは世界で一番美しい場所、ローフォーテン諸島(ノルウェー北西部)を私がヒッチハイクで旅して回った時の記録。
第0話はこちら
(前回のあらすじ)
海外での初ヒッチハイク旅が始まった。
お別れとカモメ
海沿いにある大きなラウンドアバウト(信号機のない、円形の交差点)をぐるっと回り切ったところでドイツ人のリナさんにお別れを言い、大きなリュックを背負い直して車を降りる。
道端で拾ってもらった時に降っていた雨はいつの間にか止んでいて、相変わらず空を覆っている雲も少し明るくなっていた。
時刻はお昼の12時半を過ぎたあたり。気温は7℃。地図で確認すると、出発地から30kmほどにあるビェルクビク(Bjerkvik)という小さな町に到着したようだ。
道路はこのラウンドアバウトで北方面のトロムソーへ行くE6号線と、西方面のローフォーテンへ行くE10号線に分かれる。E6で北に行くリナさんを見送ると、私は西方面のE10へ行く車を探すことにした。
北の大都市トロムソーに向かう幹線道路ということもあり、ビェルクビクの道路沿いのスーパーマーケットやバス停は道の駅のように道路から入りやすく、しかも広い。車が安全に余裕をもって止まれるので、ヒッチハイクに最適だと思った。
しかし、しばらく車の通りを見ていると北のトロムソー方面の車や反対方向のナルヴィクに向かう車がほとんどで、ローフォーテン方面の車はほとんど皆無と言っていいことに気づく。お昼ご飯時で小腹は空いてきたものの、休憩している暇はないみたいだ。
まずは、車の通りはぐっと減る代わりに確実にローフォーテン方面へ行く車だけ呼び止められるように、ラウンドアバウトよりも西寄りに移動することにした。海沿いの道路だからか、等間隔で並んだ街灯の上でカモメたちが大合唱している。
同じ海に面したナルヴィクの街ではあまり動物の声を聞かなかったので、ついにローフォーテンへ向けて出発したんだという嬉しさと、(交通機関がほぼないので)気軽に戻れないヒッチハイク旅が始まったという不安と緊張とを感じた。歩き出した体が震えたのは、冷たい風のせいだけではなかったと思う。
ちょうど道沿いのお店の邪魔にならない場所でヒッチハイクに良さそうな「見つけやすく」「安全に止まりやすい」場所を見つけたので、そこで車を待つことにした。どの車も必ず減速するラウンドアバウトからもそう遠くないので、ベストポジションと言える。
と、突然。
「エオー!エオー!」
という甲高い大きな鳴き声とともに街灯上から1羽のカモメが急降下してきた。
「何事!?」と一瞬のことに状況を掴めていない私の顔に向かって襲いかかる。頭が真っ白になりながら、うわっと咄嗟にしゃがみ、なんとか避ける。
だがカモメは再度空に上がると、また急降下してきた。走って逃げる私。背後からべちゃっという不穏な音が聞こえてくる。
カモメは何度も空に上がってはねちっこく急降下しながら「べちゃっ」と攻撃してくるので、重たいリュックを背負いながら必死に10mくらい走ってその場から離れると、相変わらず「エオー!」という警戒音?は鳴き続けるものの、攻撃はやめてくれた。
バクバクはあはあ言う心臓をなだめつつ、さっきまで私が立っていた場所を見ると、そこには出来立てほやほやのカモメのうんちが。。。
急降下うんち爆撃…だと…?
もしあのまま逃げずにいたと思うと。。カモメ、怖すぎる。
カモメとのナワバリ争いに敗れベストポジションを失った私は仕方なくラウンドアバウト周辺から離れるしかなく、とぼとぼと西に向かって歩き出した。
西方面に歩くにつれてカモメはいなくなったものの、道路脇の停車スペースも急に狭くなって車が安全に止まるには不向きな道に。
その後、次の車に拾っていただくまで私は泣く泣くヒッチハイクに適した場所を探してローフォーテンへ向け歩き続けたのであった。
次回。
猫とおじさん。
お楽しみに!
*更新は毎週日曜日です。