自分の人生を歩むためには

記事
コラム
前回・前々回に引き続き、今回もドラマおちょやんを参考にして生きることは何かを考えていきたい。
どんだけおちょやん好きなんだよと言われるかもしれないが、それだけ心に響いた作品なのだ。

私が本当に辛かった時期に放送していて、その辛さを千代と一緒に乗り越えた感じがするのだ。
またその辛さを演じた、主役千代役の杉咲花さんと親友みつえ役の東野絢香さんの演技が素晴らしい。
親友みつえ役の東野絢香さんは鬱の演技が本物にしか見えなかったし、杉咲花さんは泣きの演技と、自分の人生は自分のもので、自分で選択していいと気づきを得たときの演技が圧巻だった。

ドラマ終盤の副題「うちの原点だす」の週。89話目。千代が演劇を志すきっかけとなった「人形の家」の台詞を一人で2分半もの長時間の演技。
この台詞は、これまで何度もドラマの中で引用されてきたが、千代はまだその言葉を言わされてる感があったのだが、この回で自分のものにする。これまでの言わされてる感はこの回のための伏線だった。さすが半沢直樹の脚本家である。
「気づき」を得た瞬間の演技を若干23歳でできることに驚く。静と動の演技が素晴らしい。いったい、杉咲花さん自身、どんな人生を歩んできたのだろうか。
またこのシーンは千代の心理描写を表現しているカメラワークも素晴らしく、何度見ても目が離せない2分半なのだ。

このシーンを私は何度も繰り返し見たし、多分私はこれからもことあるごとに観ると思う。
背中を押されるし、人が成長できた瞬間に立ち会える喜びがあるし、気づきを得ることは次の試練を乗り越えるための力がつく瞬間だからだ。
私にとってこのシーンは、これまで自分にはできないと思っていたことから解放されるための、血沸き肉躍る瞬間なのだ。
気づきを得たとしても、それはしばらくすると忘れてしまう。
初心に帰るため、自分を奮い立たせるために一生繰り返し見ると思う。

さて、ではその素晴らしい回のあらすじを書く
(ここからネタバレするので興味ある方はスルーしてね)

終戦直前、千代は「演劇をすることが不謹慎」であると周りの人間から責められたり、「女優としてチヤホヤされてきていい気になっている」とののしられ、人間のひどさを目の当たりにしつつも、それでも身近な人たちの支えになろうとする。
親友みつえの夫が戦地で亡くなった後に終戦が知らされ、直前まで軍国主義に洗脳されていたみつえの息子が「お父ちゃんは無駄死にやないか」と洗脳されていたときの自分や戦地に行った父を責めているとき、こう言う。
「うちはな、あんたのお父ちゃんのこと小さいときからよう知ってますから分かりますねん。あのへそ曲がりの臆病もんがお国のために命なんかかけられるはずあらへん。あいつが命懸けで戦こうたのはな、あんたとみつえ守るためだす。戦争が終わって、あんたとみつえがこないして無事にいてる。それをなによりも願うてたに違いなあれへん。せやさかいな、無駄死になんかになれへんだす」
そう言い、静かに泣く親友の息子の背中を、何か決意した顔でさする。

その後思いつめた顔で一人玄関を出た千代は、玄関先でうずくまり体を揺らしながら一点を見つめる。
ふ、と両手の手のひらを地面に置き、ゆっくり顔をあげ、聞こえるか聞こえないかの声量でぶつぶつ言う。
二言三言終えた後、
「私はただしようと思うことはぜひしなくちゃならないと思ってるばかりです」と、はっきりと口にする。
ドラマ内で何度も引用されてきた人形の家の台詞だ。

「私はただしようと思うことはぜひしなくちゃならないと思ってるばかりです」
途中体制を変え、つぶやき、かみしめ、泣きながら、決意しながら、彼女はこの台詞を5回続ける。そして言った後一人二役で台詞を続ける。
「言語道断だ。そんな風にしてお前の義務を捨てることができるのか」
「私には神聖な義務がほかにあります!」
「どんな義務というのだ」
「私自身に対する義務ですよ!」
「何より第一に、おまえは妻であり、母である」
「何よりも第一に、私は人間です。ちょうどあなたと同じ人間です。少なくともこれからそうなろうとしているところです」
「お前の言うことは子供のようだ。お前は自分の住んでいる社会を理解していない」
千代は涙をこぼしながらも声を張る。
「ええ、分かっていません。これから一生懸命わかろうと思います。社会と、私と、どちらが正しいのか、決めなくてはなりませんから!」
台詞を言い終えた千代は気の抜けたような顔を5秒ほどして、空を見上げる。
空には太陽が輝き鳥が飛んでいる。
陽に照らされた千代は、空を見つめ目には涙を溜め、朗らかな表情をしている。

私はこの人形の家の台詞を言う千代が、生きる喜びと、人生は自分のためにあると気づいた瞬間なのだと解釈している。

地面に両手をついたとき、地面のひんやりした感触から、硬さから、自分の手の温かさと柔らかさを感じ自分が生きていることを実感する。
他者の死を通して自分の命を感じ、自分の生を実感し、生きることのありがたみを感じる。

他人からどのように評価されようとも、大好きな演劇をバカにされようとも、自分が心から望むことをして生きることを決意する。そう表現しているのではと思っている。

自分の望んでいる答えや自分の心の状態はいくらネットで調べても人に聞いても出てこないし、例えそれが自分の望んでいる答えを貰えたとしても次第に忘れてしまう。
だが自分で考え自分で見つけ出した答えならば、一生忘れることはない。

だが、その自分の中で答えを見つけるためには、新しい価値観や体験をする必要がある。

人と話して意見交換をしたり、本を読んで新しい知識を得たり、漫画やドラマ・映画を観て感性を刺激する必要があるのだ。

そして常に自問自答を続ける。
自問自答を続けることで、その様々な知識や体験が、自分の中で統合され、自分だけの答えが生まれる。

自分の人生を歩みたい、自分のやりたいことを見つけたい、自分の気持ちを知りたいのならば、何人かの信用できる人と話をし、知識を得て感性を刺激し続ける必要がある。

自分と他人を理解したその先にしか、自分の答えはないのだと思う。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す