理学療法士が実習生に伝えたい「実習はこわくない!」

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 はじめまして。私は理学療法士として10年以上病院・施設・訪問リハ等で勤務し、多岐にわたる疾患の超急性期~生活期、ターミナルケアまで多くの患者様に関わらせていただいてきました。それと同時に多くの学生さん達の行う機会がありました。これと並行して現在はこちらで「実習コンサルタント」として個別で学生さんのサポートをさせて頂いています。無料でのヒアリングからでも結構ですので、良かったらこちらもご利用お待ちしています。


 さて自己紹介はこの辺で本題です。学生さん達の多くは臨床実習を行うにあたり多くの”壁”にぶつかります。患者さんを目の前にしてまず何をしたら良いのか。バイザーへの質問の仕方、報告などはどうすればそこから適切な情報が得られるのか。評価項目、統合と解釈、治療プログラム、考察などをどう順序立てて、なにを材料に決定していったら良いのか。レポート、レジュメ、発表!?どうすればいいの!?などなど、漠然とした不安を抱えている人も多いと思います。


 理学療法士、医療人として求められる「人間性や社会性」・「思考力」について具体例を交え、最初の1歩からお伝えしていきます。これから実習を控えている学生さん達が抱えている”不安”を”安心”に変えていきましょう。そしていきなりですが時間は有限です。以下の項目に沿って進めますが「これは私に必要ないな」と思う項目は飛ばして読んでください。

では始めましょう。


1,礼節 ~ラポール形成~
2,評価 ~評価項目立案の材料~
3,統合と解釈とは?
4,治療 ~プログラム立案の材料~
5,考察 ~考察って?~
6,レジュメ・レポートの間違えない書き方
7,最後に






1,礼節 ~ラポール形成~

 当たり前のことではありますがコミュニケーションの基本は挨拶です。人の第一印象は2秒で決まる!なんてことが言われたりしますが、事実です。自ら率先して大きな声で職員のみなさんに挨拶しましょう。挨拶をされて嫌な気分になる人などいません。もしもいたら、あなたがその人と関わる必要はありません。あなたの大切な「時間」を奪う存在です。
 実際の臨床現場においても挨拶のできない職員は多々います。しかし私はお構いなく、返事がなくとも挨拶します。それでOKです。
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 続いて患者様とのコミュニケーションでは「敬語」を貫いてください。多くの学生さんたちは、最初は敬語で徐々に砕けた話し方になり最終的にはタメ口になる傾向があります。
 「患者様と打ち解けた」という側面もありますが、バイザー達から見れば、終始敬語を使える学生のほうが評価は間違いなく高いです。まず大前提として多くの患者様は学生さん達よりも多くの人生経験を積んできた方々です。それを忘れないようにしましょう。「人間性」確立への第一歩です。以上のことを徹底してみてください。自ずと良い関係性が築けるはずです。
 学生さん個々でコミュニケーションスキルに差は生まれますが、それを埋める力を持っているのが「挨拶」です。当たり前のことを当たり前のように言っていますが本当に大事なことです。




2,評価 ~評価項目立案の材料~

 「この脳梗塞の患者さんの評価項目あげてきて!」なんて漠然とした課題を学生に与えるバイザーが今だにいますが、そんなバイザーに出会ったら心の中で「は?」と言ってやってください。
 多くの学生さんがまず出会う関門でしょう。評価項目の列挙はトップダウンで行うのが鉄則です。ボトムアップで行っていたら時間がいくらあっても足りません。そのために必要なのは”情報”です。その患者様が病前どのような生活を行っていたかによって項目は千差万別です。
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 例えば元々一人暮らしで家事も一人でこなしていた方だとすれば、起居動作、移乗、立位、歩行、自転車or自動車の運転、家事動作などの評価は最低でも必要になるでしょう。
 では元々車いす生活で他者の介助が必須の生活であった場合は?という具合に病前生活及び患者様のHOPEといった”情報”に沿って評価項目を考えていきましょう。つまり、診断名だけで評価項目をあげるなどというのはそもそも理にかなっていない指示なのです。




3,統合と解釈とは?

 やたらと難しく考えてしまう学生さんが多いのですが、統合と解釈というのは簡単に言えば【結果】と【考え】のつながりです。評価で得た結果をなぜそうなったのか?と点と点を結ぶ作業になります。
 例えば、「膝が痛い」→「いつどの程度どこが痛いのか?」→「荷重時に内側裂隙がNRSで8/10くらい痛い」→「それは○○○だからであると考えられる」といった形に考えていきます。あくまで仮説でOK!それを立証していくのが次の”治療”です。




4,治療 ~プログラム立案の材料~

 だんだん流れがつかめてきましたか?プログラム立案では【評価】+【HOPE】を材料として使用していきます。患者様のゴールはどこなのか?自宅?施設?介助者は必要?
 例えば、「家族と同居で自宅に帰って生活がしたい。」ということであれば家族はどこまでを求めているのか?というのも大事です。とりあえず帰れれば良いなんてことはないはずです。最低限一人で歩いてトイレに行けるようになってほしいとか、一人で食事をとれるようになってほしいなど。そのHOPEによってアプローチは変わってきます。
 一人でトイレを自立が条件となれば、ざっくりと言えば下肢の筋力UP、立位での下衣操作安定、もちろん歩行の自立も目指さなければならないでしょう。
 もちろん評価の段階で”このHOPEは厳しいなあ…”なんて思うこともあります。そんな時、患者様の機能面ばかりに固執せず【環境】に目を向けてあげてください。
 例えば、独歩自立は厳しいけど手すりがあれば自立できる!、トイレの下衣操作もL字手すりがあれば自立できる!など自助具の提案をすることも治療の立派な一環です。
 といった感じで患者様の意向をしっかりくみ取って、評価と照らし合わせ組み立てていくという流れで進めていくと良いです。
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5,考察 ~考察って?~

 これもまた学生さん達の悩みのタネ。統合と解釈とごっちゃになってしまう学生さんが多い印象を受けます。
 考察は治療までをやり終えた段階で手を出していくものになります。具体的には初期~最終に至るまでにどんなアプローチをして、どんな結果が得られたのか、それはなぜなのか?反省点、改善点はあるか?といった流れで書いていくものになります。個人的には図や表で書き起こすよりも文章化するほうが理解が深まると思います。




6,レジュメ・レポートの間違えない書き方

 まずそれぞれの大まかな違いですが、、、
レポート:初期から最終にかけて得たすべての情報を元に、問題点を洗い出し、解釈を書き出し、プランを立て、結果を考察する。

レジュメ:自身の伝えたいことに的を絞り、得てきた結果をもとに問題点を整理し解釈、考察していくもの。プレゼンテーションに近いものです。

上記を意識しながら作成していけば大きく道から外れることはありません。こればかりはバイザーによって求める「答え」が変わってくるためです。
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7,最後に

 ここまでお付き合いいただきありがとうございました。私が学生のときから現在に至るまでの糧になった思考をお伝え出来ればと思います。

・間違えを恐れない、正解を覚えようとしない。

・調べても何も出てこないということは、エビデンスが乏しいという有用な結果であり、軌道修正に大いに役立つ事実である。

・betterを実行していくことでだんだんbestが見えてくる。

・bestを求めることは時間を要し、またそれにたどり着くとも限らない。

・調べるだけでは本質は見えない。「だからなに?」を繰り返し具体的な策に落とし込むことが重要。

最後に、私が尊敬する方から教えていただいた言葉があります。バイザーにあなたの本当の「魅力」を知ってもらうための言葉です。

魅力=与(よ)をもって生じ、求(ぐ)によって滅す。
他者に答えばかりを求め、自ら動くこと(自ら考え行動し、他者に与える気持ち)を忘れてしまうとあなたの良い部分が消えてしまいます。謙虚な気持ちを忘れずに、有意義な楽しい実習になる一助になれれば幸いです。
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 最後までお付き合いいただきありがとうございました。




















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