卒業袴・二尺袖・小振袖

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美容・ファッション
 仕立屋からの見方ですので、着付けの先生とは、意見が違うかもしれません。根本的に、違うんじゃないの? っていう突っ込みはなしにして、へぇ~、と、生暖かく笑ってもらえると、助かります。

 世に聞く、「卒業袴」というカテゴリーの袴はありません。袴といえば、男物の「袴」か、女性のはく「女袴」。女袴と区別するために、あえて、男袴ということもあります。
 仕立て方で分ければ、「馬乗り」か「行燈」。
 あとは、多少、形は変わるけれど、用途によって名前が変わります。
 舞に使う、仕舞袴、剣道に使う剣道袴、神主さんやお坊さんが使用する、切袴、道中袴、差袴(さしこ)、巫女袴、指貫等々。
 道中袴は男物の馬乗り袴であるし、剣道袴も、寸法が違うだけの馬乗り袴。女袴は、切袴から派生したものだと聞きますから、女袴は、切袴、巫女袴と酷似した作りになります。
 そこから、卒業式に使うだけのための女袴を卒業袴と呼ぶのだろう、と見当は付きます。見当は付きますが、じゃあ、女袴と卒業袴と、どう違うのか、何故区別するのか、は、ちょっと、わかりません。
 着物はレンタル業界が旺盛の昨今、一度着るだけに高価な着物を購入するのももったいないから、わかりやすく卒業袴と銘打って貸し出しを始めたのが最初なのでしょう。
 袴単体では着ることはできませんので、それにセットになる小紋の、袖の長い半着を、二尺袖と名付けたのでしょう。と推察します。
 つまり、小振袖と二尺袖は、同じではない。
 そう考えると、まあ、それはそれでありなのかな。
 では、どう違うのか。

小振袖

 袖丈1尺7寸以上2尺3寸ぐらいまでの袖の長い小紋。
 十代の娘時代に着る着物です。
 仮絵羽のある柄合わせのものは、付け下げ、あるいは、訪問着枠に入るので、小紋の柄付けの袖が長い長着をいいます。振袖、と、名前は付いていますが「小」がついていますので、振袖になりきれない振袖で、つまり、厳密にカテゴリ分けするなら、小紋の仲間になります。振袖になりたかった小紋。
 カジュアルです。十代の娘の場合は小振袖でよそ行きになります。付け下げや訪問着を十代の小娘が来ていると、ちょっと、背伸びしすぎるので、飛び柄の小紋で長いお袖を、付け下げや訪問着格として着用しました。

 そう。昔の話です。

 今は、小振袖そのものが絶滅危惧種に属していますので、見ることすら珍しいです。主に、袴に合わせるものとの認識のようですが、もちろん、単体でも着用できますので、着物好きの娘さんには、小振袖の復権を目指してほしいと思います。
 二十歳を過ぎると、さすがに未婚であっても娘時代は終わるので、小振袖も卒業のころ合いとなります。付け下げ、あるいは訪問着デビューです。

 ちなみに、振袖柄の小振袖がないとは言いませんが、それは、カクテルドレスを作る上等な生地でトレーナーやTシャツを作るようなものなので、あまりにちぐはぐで着ていくところがありません。

二尺袖

 現在の袴レンタルにおけるセットの着物で、袖丈が大体2尺で着丈がひざぐらいまでの袴着用に特化した半着。2尺袖単体では着用は難しいです。
 もともと、着物は男女ともに着丈で着用していましたので、それを基準として、おはしよりを取って着る長い着物を、長着、身丈のほぼ半分の着丈に仕上げるので、半着。といいます。
 例えば、お祭りなどで踊り狂うときに着用している着物は半纏とか作務衣の上着みたいなものかと思われがちですが、あれはもともと半着だったようです。
 2尺袖の丸みは舟形よりももうちょっと深い目の、90度の丸でないことが多いようです。なぜ? 時々、振袖でも、丸みの形を指定されて、わざわざ、その型から取らないといけないこともあるんですが、何か、ご家庭や家系で謂れがあるんでしょうか。ちょっと、聞いてみたいです。

 なので、2尺袖は、袴とのセットのみの着用で、単体ではちょっと着ることは難しいと思います。
 例えば、お祭りで、団体でそれ着ようぜ! っていうノリなら、ギリギリ、大丈夫、‥‥‥かな?

➡袖丈について
 袖丈は身長によって決まりますが、標準的に1尺3寸として、訪問着は+2寸。1尺5寸になりますが、背の高い人で体格が良いと、小紋で1尺5寸のこともありますので、最長で1尺7寸までは、訪問着の袖丈と認識しています。
 中振袖は、ふくらはぎの長さなので、大体、短くても2尺5寸から、2尺8寸ぐらいまで。
 小振袖が、訪問着以上中振袖以下の長さの袖丈なので、1尺7寸以上2尺3寸ぐらいまで、と、なります。2尺3寸~2尺5寸の間のお袖丈は、身長にもよりますが、あまりに中途半端でお勧めはしません。中振というには短すぎてカジュアルすぎるし、小振袖にしては、長すぎてフォーマルに寄りすぎる感じです。
 十三参りで作った振袖がその長さで、袖底が擦り減るたびに切り詰めていって、最終的に1尺7寸ぐらいの小振袖になる。という感じです。
(令和4年8月)
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