寸法について

記事
美容・ファッション
 昔は、と言っても、四半世紀ほどのことですが、まだ、嫁入り道具に、着物一式をギリギリ揃えていたころのことです。
 着物は、すべて寸法が一緒ではありませんでした。それぞれの用途に合わせて寸法を変えています。
 カクテルドレスがTシャツと同じ首周りではないように、袖ぐりも普段着とは違うように、着物も違うのです。

▶袖丈

 柔らか物、あるいは、たれ物とも呼ばれる小紋や色無地は、柄によってはちょっとしたかしこまった場所にも着ていけるので、これを基準にします。動きやすさと振りの捌き易さを考慮します。
 多くは、1尺3寸ですが、当然、身長によって前後します。

~140cm → 1尺2寸
140cm~155cm → 1尺2寸5分
150cm~165cm → 1尺3寸
160cm~170cm → 1尺3寸5分
165cm~    → 1尺4寸
 部分的に重なるところは、体型によっても、また、好みによっても前後しますので、その含み分です。

 訪問着は、普段着と違って、カクテルドレス格になるので、動きやすさは求めていません。むしろ、優雅さが欲しいので、これに+2寸。

 逆に、紬や大島などの織の着物になると、今度は活動的になるので、優雅さは必要ありません。長すぎる袖丈は仕事の邪魔になるので、基本の袖丈-1寸。
 紬や大島は、普段着として着倒す勢いで着るので、袖底が痛みやすいことから、特に短くしないで、傷んだそばから切り詰めていくこともあります。

 また、10代であれば、基本の袖丈が1尺5寸ぐらいになります。かわいらしくてよいです。
 長襦袢が合わなくなるとのご意見を頂きますし、それには同意しますが、よく考えてみたら、結婚式のドレスのインナーにTシャツ着るかって言ったらそれはないので、着物だけが、どれもこれも同じ襦袢を合わせるのも違うかなぁ。とも、考えます。

▶身幅

 後ろ幅×2+前幅+衽≒ヒップ
 下前の脇の線に褄下の出来上がりが重なる、と言いますが、そこまで行くと着物に巻かれて裾裁きがしにくいように思いますが、世の着付けの先生方はいかが思われるでしょう。

 お襦袢の身幅は、着物の後ろ幅=襦袢の後ろ幅、着物の前幅+1寸、立衿幅2寸。これが標準です。が、そううまくはいかないのです。
 単純に前幅に1寸足すと後ろ幅と逆転してしまったりすることもあるのです。そんな時は、足し分、1寸を後ろ身頃と立衿に振り分けます。肩幅との兼ね合いもみつつ、後ろ幅+2分~3分。
 立衿が一幅で取れるときは、立衿幅3寸で前幅、着物+5分。通常立衿は、半幅を前身頃も利用しつついっぱいで取ります。

 さて。
 お襦袢の身幅の決め方がわかったところで、じゃあ、着物の出来上がり寸法に単純に足せばいいのかっていうと、そうではないのです。

 例えば、後ろ幅8寸、前幅6寸5分の人のお襦袢は後8寸~8寸2分、7寸5分~7寸3分。ところが、着物の出来上がりが、柄の都合で、後ろ8寸、前幅6寸8分に上がりました。この場合のお襦袢の寸法は、前幅7寸8分になりますか?
 なりません。
 着物の身幅は、あくまで柄の都合で広がっただけで、着用者が太ったわけではありません。着用者の寸法はあくまで8寸の6寸5分です。なので、お襦袢の身幅も、後ろ8寸、前幅6寸5分で割り出します。

▶裄

 最近は、皆様、腕が長い! 体格的には普通よりも細めなのに、1尺9寸とか!
 着物を着て、だらんと手を下げて立つのはみっともないとされます。通常でも、帯締めの下か、低くてもおはしよりのあたりで軽く手を組んで立ちます。
 案山子のように、突っ立ってるわけではないので、そんなに長くは必要はないと思うのですが、一応、目安はあります。

 基本の裄で、手首のぐりぐりに乗るくらい。
 手首のぐりぐりに触るぐらいが、紬や大島。手首のぐりぐりが、丸っと見えてしまうのは、ちょっと短すぎますが、浴衣はその限りではありません。
 半分以上隠れるのが、訪問着以上。つまり、振袖や留袖も含まれます。

 殿方の裄も、ほぼ、同じ基準です。大島やお召しなどは、ぐりぐりに触るくらい。紋付の羽二重は、ぐりぐりに、最低のるようにしましょう。
 ただし、殿方で裄が長すぎるのはよろしくありません。七五三ではないので、手首にかぶってきたら、直しに出しましょう。

▶身丈(着丈)

 身丈=身長ですが、最近は、なぜか、身長に+1寸するのが主流のようです。おはしよりが多すぎてもたもたしないかな?
 襦袢は、身丈×0.8 or 身長-30cm。
 着丈は、身長×0.85。あるいは、首のぐりぐりから足首のぐりぐりが隠れるまで。雨コートも同じ。
 背からの時は首のぐりぐりから、足のぐりぐりが隠れるぐらい。
 肩からの時は、肩が凝った時の硬い筋肉の上から、足はぐりぐりが隠れるぐらい。

  ▷背からと肩から

  同じ身丈で何故、二通りの測り方があるかというと、着姿に由来します。
  背から図った寸法は、自分がどれぐらい繰り越して着るかというのを体感で理解されていると、背からの寸法で指定されると衿を繰った時の身丈がきれいにでます。が、肩山のラインが後ろに引っ張られ気味になりますのでそれが気になる方は、背からの寸法は向きません。
  肩からの寸法は、肩山から測るので、繰越の位置が決まってしまいます。肩山のラインが丁度肩山に来るようになるので、それが気になる方、繰越がうまく抜けない方は、肩からの寸法が良いのかもしれません。

 一応、理屈ではそうなりますが、実際着付けてみると、背からも肩からも大差はありません。繰越を調節して着装できるなら、背からの寸法をお勧めします。
 そして、身丈は、身長に1寸足すことはお勧めしません。着装時の紐の位置が、ウエスト近くまで上がって苦しい思いをします。腰骨あたりで紐を納めないと、滑って着崩れの原因にもなります。

▶肩明き

 肩明きは、2寸7分の切と2寸5分の切があります。
 耳端から、2寸7分入ったところまで切り、そこから背縫い3分引いて、キセ分1分を外側に回すと、正味の出来上がりは2寸5分。
 同じように、2寸5分の切の場合は、正味出来上がり肩明きは2寸3分。
 単純に考えると、首周りに2分の差があるわけです。首周りの2分は大きいと思うのですが、あまり、話題にはなりません。
 習った作業所、学校などによって、固定の寸法なのでそういうものと割り切ってしまうのでしょう。
 ですが、伊達衿、重ね衿と言ったり衿比翼と言ったりしますが、そういうものを重ねるなら、あるいは、思いっきり後ろに引っ張ってお召しになるのが好きなら2寸7分の切でもよいですが、襦袢を着るだけなら、少しがばついてしまわないかと思います。
 特に、バチ衿に仕立てるなら、2寸7分は大きすぎると思うのですが、どうでしょう。
 もし、衿周りの収まりが悪いと思われたら、肩明きを狭くしてみるのも一つの手です。

▶繰越・付け込み

 どちらも、衿を繰ってきたときの衿の形に作用するところです。
 つけ込みを深くすると、衿が後ろ側に倒れます。
 繰越を深くすると、衣紋が抜けやすくなります。
 例えば、繰越8分だと、特に着付けの技術がなくても、首のぐりぐりから8分下がったところまで衣紋が抜けます。理屈ではそうなります。
 つけ込み5分だと、首のぐりぐりが見えやすくなります。
 訪問着ぐらいになると、つけ込み5分でも衿の形がきれいに抜けて見えるのかもしれませんが、大島や紬でそれをやるとちょっと考えてしまいます。作業着にラウンドネックとか、あんまりしないと思うんです。
 着る方の好みでもあるので、あまり、口を出したくないところでもありますが、一番、気になるところでもあります。
                        以上(令和3年6月現在)
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す