紗合わせ

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美容・ファッション
 絽、あるいは紗の生地に紗の生地を重ね合わせて2枚を1枚として、お単衣に仕立てた着物。
 「紗袷」といういい方があるが、2枚の生地を一枚に「合わせ」るので「紗合わせ」が正しい。が、袷のように仕立てるやり方もあるので、この頃は「袷」でも間違いではないのかもしれない。 
 ただし、カテゴリ―分けするなら、「お単衣の着物」。
 紗無双ともいう。

▶仕立て方

①2枚の生地を一枚として、お単衣に仕立てる。くけ目もお単衣同様に出す。
②2枚の生地を一枚としてお単衣に仕立てるが、表にはくけ目を出さない。
③外は外、中は中で縫って、袷のように閉じて裾は、お単衣同様に三つ折り。
④2枚の生地を一枚として縫うが、たて褄(褄下or衿下)はバラして比翼のように仕立てる。

①1番オーソドックスな縫い方。別に衿裏をつけるが、かけ衿だけは柄がなければ、外側の紗のみつけることもある。表にくけ目を出す分、目が落ちるとめくさい。縫込みは裏に全部見え、縫い目も見える。表から見ても裏から見ても普通のお単衣仕立て。
 縫い目隠しと言って、縦縫いの縫い目を隠す縫い方が多く見受けられますが、脇の縫い込みも、衽の縫込みも、ゴロンゴロンして、手に当たるし、畳むときに、脇の線がずれるし、変なあたりは出るしで、いいとこなしなのに、高価な着物だからと言って、丁寧に縫った気になって畳み辛いとか本末転倒のような気がするが、これも、個人的な意見。
裏勝りとは意味が違うので、隠さなくていいところを隠すのもなんか違う気がする。

②2番目にオーソドックスな縫い方。①と全く同じだが、くけ目は中の絽、あるいは紗の生地のみを掬い、表にはくけ目は出さない。非常にきれいに仕上がる。今は、おそらくこちらが主流の縫い方。むしろ、こっちでないと怒られる。

③表から見ても裏から見ても、縫い目もくけ目も見えない袷仕立て。縫込みは生地と生地の間に隠れ、とじを入れる。せっかく中に柄があっても、脇の縫込みが邪魔をして見えない。あらゆる縫込みが縦横に走って、あまり美しくない。それを防ぐために、脇の生地は3分ばかりで切り落とすこともある。この場合、お袖も無双に仕立てると聞いてびっくり。
確かに、ぺらんとめくった裏は、縫込みが全くなくきれいに見えますが、個人的には、人から見た着姿が一番美しくあれば、裏は、どうでもいい。どうせ見えないし。どうでも、ってこともないけど、多少縫込みが見えようが、きれいに始末されていればそれでいい、と思う。

④勘弁してください。そんなやり方があるんですか?

▶着用時期

 衣替え前後の2週間。特に、秋、とも聞くが、柄によるのだと思う。下の生地が紗にかかって透けて見える、おしゃれな着物であるが、重ねられた2枚分の生地は、思った以上に風を通さないので、暑い。重い。
 昔は、空調なんかなかったので、目で見ても涼を取るために透け感なども重要視されていたが、クーラー全盛期の現代、紗合わせ着てても、その透け感に寒々しさは感じないので、通年着てもいいような気がするが、そんなことを言ったら怒られるだろうか。

▶ちょっとした話

 紗合わせは、もともと花街(かがい。「はなまち」と読むと意味が変わってくる)のお姐さんが若いころにもらった華やかな着物を、紗をかけて、今でいうところのカジュアルダウンして、もらった旦那に着て見せた、ということらしい。今でも、あなたのことを大切に思ってますよ。と、いうこと。この場合の「大切に思う」は、恋愛がらみではない。
 花街のお姐さんは、育ててくれる旦那(パトロン)がいてこそなので、その恩をいつまでも、一人前になっても忘れずに感謝しています。あなたのおかげで一人前になれました。
 そういう意味もあるらしい。
 諸説あるようなので、そのうちの一つだと思ってください。

 ちなみに、下に来るのは、多くは絽の付け下げですが、原色バリバリの超ド派手な色味でないと、紗に負けます。

 そして、お単衣仕立なので、外側の紗は、表に見えるほうが表。ぺらんとめくって、下に来る生地は生地の裏になります。
 袷の仕立ては、表生地は、もちろん、表が外側。ぺらんとめくった裏は、八掛の表が見えます。
 つまり、生地の裏表だけを見れば、袷仕立は両面表。お単衣仕立は、ぺらんとめくった裏は、生地の裏が見えることになります。
 そういう意味からも、紗合わせはお単衣のお仕立て、ということになります。

                      以上(令和3年6月現在)
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