春画

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美容・ファッション
 春画は、主に羽織の裏、額裏に描かれます。
 春画の描かれたものは、着ていく場所は決まっています。いつでもどこでもどんなときにも着ていいものではありません。それは、お茶屋さんです。
 喫茶店のお茶屋ではありません。大人の遊び場、お茶屋さんです。
 羽織は、自分で脱ぐものではなく、人に脱がせてもらうものです。
 お茶屋のご主人に、「今日は暑いな」とかなんとか言って、暑くもないのに理由をつけて訴えるのです。すると、ご主人が羽織を脱がせてくれます。そこで、羽裏を見たご主人が、「おお。だんな、今日は粋ですな」とかなんとか言いながら、そっと、丁稚の小僧さんに、馴染みの御姐さんを呼びにいかせるのです。
 もちろん、案内されるのも、離れの誰も来ないような特別なお部屋です。そこでの見たこと、聞いたことは、絶対に他言は無用なのです。
 それ以外でのお茶屋さんでのそういう行為は厳禁です。
 そういうことができるようになるには、かなりのお金を使い、常連以上のお付き合いがないと出来ません。
 その辺のお茶屋さんに、そこそこ顔が売れてきたからと同じことをすると、出禁です。そもそも、馴染みの御姐さんの顔なんざ知らんがな。

 そんな符号のような額裏の春画ですが、現在でも時折見かけます。
 昔のような生々しいものではなく、ヤッテルことはヤッてるけど、肝心なところは描かれてない。

 さて(笑
 これを、海外縫製に持ってくるお店があります。
 日本でこそ、春画は芸術ですが、海外に持っていくと、ただの猥褻画像になります。ズバリ、捕まります。逮捕です。
 一度、ベトナムへ春画の額裏を輸出して、ベトナムからたいそう怒られたそうです。
「こんなハシタナイものを送ってこないでくれ。犯罪者になりたくない!」

 その大事な情報が共有されてないってどういうことだろうな。

 ベテラン平社員の年下先輩に、その話を教えてもらって、春画は返品な。と、私が知っているのに、上司は知らんかった。
「春画が来てるんですけど、返品でいいですか?」
 なんのことかと、のこのこと私ブースにやってきて、手元をのぞき込むのです。男女の絡みの描かれた額裏です。ちらっと、表情を伺うと、真顔。
 いや、ここは、多分、笑うところw そして、宣うこと、一言。
「なんで返品? (ベトナム工場に)送っていいよ」
「え!」
 コロナの人員整理で辞職された先輩の名前を出して、「犯罪になるから送っちゃダメ」っていわれましたよ?
「日本では芸術ですけど、ベトナムでは猥褻物になるんですって」
 上司、真顔。
「じゃあ、返して」
……。なんというか、冗談の通じない御仁ですな。ってか、じゃあ、って何? じゃあ、って。なにその渋々感。

 そんなこともあり、転職した現在、今のメンツなら、大笑いしてくれるんだろうな。(令和5年4月)

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