背筋も凍る…校正事件簿

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こんにちは。校正・校閲のサービスを出品中のみねパセリです。

校正・校閲は、著者や編集者が気付かなかった文章のミスを見つける仕事ですが、人間である以上、見落としを限りなくゼロに近づけることはできても、ゼロにはできません。
それが「1万字の中で1か所だけ『お客様』が『お客さま』になっている」程度の見落としならまだしも、人名・会社名のミスは大変な失礼になりますし、説明書のミスは商品の信用を落とし、値段や数字のミスは時に金銭的な損害をもたらします。

もちろん私もいろいろやらかしましたし、周りがやらかすのも見てきました。
その中でも、特に忘れられない校正ミスを2つご紹介します。

これらは10年以上前に私が見聞きした事件ですが、私の担当案件ではないことを一応弁明しておきます。
「おもしろ誤植」なんかを期待されている方には申し訳ありませんが、全然笑えないやつです。


その1:真夜中の鳴りやまない電話

校正には特に間違ってはいけないものがいくつかあり、その一つが電話番号です。にもかかわらず、誤った電話番号が印刷物に掲載されてしまったことがあります。
よりにもよって、それは夜間の救急連絡先。更に悪いことに、誤って載った電話番号は存在して、病院とは全く関係ない一般家庭の番号でした。

夜中に切羽詰まった電話がジャンジャンかかってくるのですからたまりません。発覚後、偉い人が菓子折り持って謝罪に行きました。
しかし、電話番号が載った印刷物はとっくに出回っており、読者全員に即座に訂正を伝えることは不可能でした。下手をすれば新しい版で印刷物が作り直されるまで、そのお宅にはご迷惑がかかり続けたでしょう。

この件が恐ろしいのは、そのお宅だけではなく、電話をかけた方々も大いに困ったということ。
夜間救急に電話する人の多くは緊急事態なわけです。なのに病院に通じないなんて……もしもこのせいで手遅れになったら、菓子折りや訂正文の掲載ではとても取り返しがつきません。


その2:命の危機をもたらす文章

ある記事で、「小麦アレルギーの我が子のために」との店長の思いから生まれた米粉料理のお店が紹介されました。
記事を読んで「これなら食べられそう」と思った小麦アレルギーのお客さんが料理を食べ……重篤なアレルギー反応を起こしました。何とか命は助かったものの、一時は危険な状態に陥ったそうです。

実はこの料理、米粉100%ではなく、わずかに小麦成分を含んでいたのです。アレルギーには個人差があるので、店長の子どもには大丈夫な量でも、このお客さんはアレルギー反応を起こしたのです。

取材をしたライターは、料理に小麦成分が含まれることを知っていました。
なぜそれを書かなかったのかと訊かれたライターの答えは、「いや、だから『小麦を使わない』じゃなくて『小麦粉を使わない』って書いたんですよ」。
……。
えぇ…屁理屈にしか聞こえないんですけど。

確かに記事には「小麦粉を使わない米粉料理」と書いてあります。
でも、ここから「小麦粉を使っていないだけで、小麦グルテンを使っている可能性はあるな」と読み取れる人なんていないでしょう。
そのうえ、小麦アレルギーの子どもへの思いが語られていたら、「この料理はアレルギーがあっても大丈夫なんだ」と受け取るでしょう。

これはみんなの思い込みが招いた悲劇です。
ライターは、この表現できちんと事実が書けていると思った。その意図を説明された店長も記事にOKを出した。
一方、編集長や校正者は、「小麦」と「小麦粉」が別のものを指すとは思いもよらずに記事をチェックした。読者もごく自然に「小麦=小麦粉」と捉えた……。

誰か一人でもしっかりチェックしていれば防げた電話番号事件とは異なり、このような事態を防ぐのはすごく難しいです。

これらは、若かりし日の私が「校正・校閲は人命に関わる仕事なんだ」と思い知った事件です。

当の校正担当者を糾弾するつもりはありません(擁護もできませんが)。
文章の責任を負うのは校正者ではなく、著者や発行者です。確かに校正者の仕事は文章チェックですが、文章チェックはライター・編集者・関係各所みんなの仕事でもあるのです。

これほどのミスはめったに起こりません。
だからこそ、思いがけないところで自分の仕事が命に関わることがある、ということを忘れてはいけないと思っています。

という経験と覚悟のもと、下記のサービスをさせていただいています。

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文章にまつわる恐怖体験を避けるには、複数の目でチェックするのが重要です。ぜひお手伝いさせてくださいね。
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