未知のシュテファン・ツヴァイク

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コラム
今、私が手書きの手紙の解読で楽しんでいるのは、この本です。
"Unbekannte Briefe aus der Emigration an eine Freundin"
(シュテファン・ツヴァイクの)亡命先から女友達に宛てた未公開の手紙、とでも訳しておきましょうか。
その付録として、実物の手紙のコピーがついているんです。

シュテファン・ツヴァイク。
簡単にウィキペディア情報から。
1930年代に活躍したオーストリア出身の作家、シュテファン・ツヴァイク。
ユダヤ人だったため、イギリスに亡命、その後南米へ移住するが、妻と共に自殺してしまうんですね。
代表作、特に日本で有名なのは「マリー・アントワネット」、ベルばらのネタ本として知られているらしい。

Brief einer Unbekannten「未知の女の手紙」という小説があるようです。それが、2004年に中国で「見知らぬ女からの手紙」というタイトルで映画化されている。

あらすじは、とある男が、知らない女から手紙を受け取る。彼はその女のことを思い出せないんだって。
その手紙には、彼女が若い時に関係を持ったこと、子供を産んだこと、そして今その子供が死んだことなどが告白されていた、と。
彼女は、ずっとその男を見ていた、そばにいた、いつも遠くから彼を見ていた、誕生日は毎年、彼にバラを届けていたと。

原作読んだことないので詳しくは語れない・・・ツヴァイク自体が私にとって未知な存在なもんで。
不勉強で面目ない。
もしご興味がある方はツヴァイクの小説をお読みください。
日本語の小説のタイトルは「未知の女の手紙」です。

若干違和感ある訳ですよね・・・。
だって。一応、過去に関係持ってるわけですし?忘れてしまうほど、どーでもい女とはいえ、未知ってことはないでしょー。

それに、今となっては「未知」とくれば「未知と遭遇」、未だ知らずで、未来、この先将来は知り合うことになる、というニュアンスがあるので、タイトルの訳がどうもしっくりこないっすね。
それなら、映画タイトル「見知らぬ女からの手紙」の方がしっくりきます。
2004年に中国で映画化されてるわけですし、新訳で出したらどうですか?
と、勝手に思ってしまいます。

それに、私もUnbekannteのニュアンスをどやぁと語れるほどドイツ語分かんないんで・・・えらそーなことは言えないけど、私の感覚から言っても、
「知らない人」程度の意味ですよね。

「今の人、知ってる人?」
「ううん、知らない、初めて会った」
という会話に使われる系の言葉なんですよね。

ちなみに「未知との遭遇」はドイツ語で
Unheimliche Begegnung der dritten Art
だそうです。
このunheimichは、不気味な、怖い、という感じの意味です。
親近感がまるでなく、今まで見たことのないものに遭遇してどう理解していいかわかんないレベルで怖いという感じです。

で、私のこの手持ちの本ですが、この本のタイトル、ばっちり「未知の女の手紙」を意識してつけられてますね(笑)

Brief einer Unbekannte.
Unbekannte Briefe aus Emigration an eine Freundin.

とあるお金持ちのいいところの奥さんが、ツヴァイクとやり取りしてた手紙を公開しているだけ本です。
この奥様とツヴァイクは、コレクター仲間だったんですね。
主に音楽関係の収集をしていたようです。

それで、手紙の内容も、収集品に関する情報交換、誰の手書き楽譜がどこのオークションでいくらで出されてる、これは買いだ、とかそんなんばっか。
自分のコレクションの話とか、何をいくらでーとか、高すぎたので買えなかったーとか、手ごろだけど、状態悪いんだよねーとか・・・そんなんばっか(笑)
この作家のものが欲しいなら、コレクターを紹介しましょうか、奥様?とかー
その作家のもので、保存状態がいいものが出物でありますよ、とかー。

なんか、オタクのコレクターとかがフィギュアとかレアもののアニメグッズとかの情報交換してる、みたいな雰囲気ですよ。
私、この本を手にしたとき、「なんでこれを出版した?」と不思議に思いましたね。

この本、日本語訳はないようです。
ドイツ文学、ツヴァイク研究者も翻訳する意味がないと考えたのでしょうか?

私も、まぁ偏見ですけど・・・お金持ちの奥様が自慢半分に「わたくし、ツヴァイクとはマブダチだったざます」って本出版したのかなと(笑)

ドイツでも、文庫本なのかデジタル文書なのかわかりませんが、アマゾンで出てます。
私が持っているものと同じバージョンのものも中古で出されていますが・・・
お値段は10ユーロくらいです。
ちぇ、プレミアついて高値で出せるなら売れたのに。

次回は、その本がなぜ私のところにあるのかということついてお話しましょう。
それは昭和39年にさかのぼります。
私が生まれるずっと前です。念のため(笑)






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