博士号って役に立つの?

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 今日は博士課程ってどうなの?役に立つの?っていう点について書きたいと思います。 

 僕は修士過程,卒業後に就職しています。博士号については,社会人15年目ぐらいに取得しました。いわゆる社会人ドクターというやつです。
 博士号を取得するには、2つあり、大学院の課程に入学して、所定の論文の提出をして取得する方法と、すでに論文を数本書いており、大学院の在籍関係なく、審査で認められることで取得できる方法があります。Octaib自身は前者の方です。
 修士課程のときには博士課程に行こうとは思いませんでした。ちょうど自分の時代は就職氷河期で、博士課程に行ったら更に厳しくなるのではないかという不安もあり、就職しました。
 社会人になってなぜ博士課程に行こうと思ったかというと、

・単純に自分の知らないことを知りたかったから。博士課程自体がどんなところなんだろうという興味本位。

・自分がこれまで取り組んだ仕事をまとめて、工学的な知見で深く調べ直したかったから。

です。行きたかったからというのもありますが、行って良いよという会社の許可ありきです。
 博士号を取得するための大学選びは、ちょっと迷いました。自分の研究テーマをまとめるのに適した研究室はいくつかあったのですが、選定基準は

「会社勤めに理解があるか,こんなやつでも面倒を見てくれるか」

という点でした。社会人で博士号を取得した方々に話をいろいろ聞くと、会社勤めを経験されていない先生の中には理解がなかったりして、やりとりが大変だったとお聞きしたためです。お金を余裕があるわけではないため、3年以内に卒業したい、仕事をしながらきっちり学びたい、わからないことだらけなので、こんな僕でも面倒を見てくれる先生を選びたいと思いました。人は全く知らない人の面倒をみるということは、なかなかしないと思います。会話があり、懇意があり、その人のことを知って、そこから始まるものだと思います。そこで相談したのは、修士過程まで指導してくださった教授です。その教授は自分の研究室に来たら?とは言いませんでした。その教授はもう60歳代。その教授は次世代の教授の育成の意味で、僕を若い教授に紹介してくださいました。その教授は多忙の中でも非常に面倒見がよく、丁寧に指導してくださいました。

 僕が通った学校での博士号の取得要件は、国際査読付きの論文3報をアクセプトさせて、さらにそれをまとめた博士論文を学校に提出し、受理されることでした。国際査読付きの論文の本数は、入学する学校、学部によっても異なります。極端な例では査読付き論文なしで学位論文だけで卒業というところもあります。。。これは正直,楽しくないと思います。。。
 国際査読付き論文は当然、海外の方(レビュアー)に書いた論文を出版社(エディター)経由で査読していただき、修正点などを指摘、修正し、より良い論文を書き、納得していただく作業があります。英語でのやり取りなので、レビュアーやエディターへの挨拶文などの作法など新鮮なことばかりでした。ほぼ会社もしくは家でメールベースで教授や海外とやり取りしていました。通学は3年間ほぼ無し。ここらへんは教授にご協力いただいたおかげかと思います。
 仕事しながら、アクセプトされるかなぁ、3年で卒業したいけどそれまでに間に合うかなぁするかなぁという不安と戦いながら3本書きました。1本アクセプトされると2本目以降は、結構スルスルとアクセプトされます。お作法もわかってくるのでレビュアーへの回答パターンも分かってきます。とは言うものの、別のブログでも書いていますが結構ストレスでしたね。

取得過程で良かったこと

・研究費が使える。
 研究費が割り当てられたため、研究活動で必要なもの(パソコン、プリンターとかレーザーポインタ)を家にあるものを新調できました。論文の校閲や論文誌へ出版する際の費用、学位論文の製本費用なども当然ここから出します。会社と同じように年度毎に割り当てられるため、余りそうだったら教授の研究に使用していただいていました。この研究費は非常に助かりました。

・査読付き論文に関する書き方を学ぶことができる。
 文章の論理について学ぶことができました。文章のつながり、論理展開,一続きの長文は嫌われる。。。これは和文、英文関係なく、仕事にも役になっています。論文使う英文はある程度形式が決まっていることに気づき、それを知ると書くのも楽になりました。

・学割が使える(笑)  
 ラーメン大盛り、半ライス無料です。店主に学生証出したら,「え」みたいな顔されましたよ(笑)。まあ,そういう顔になるわな。

取得してよかったこと

・過去の論文から学び、参考にすることで取り組みに出戻りがなくなった
 エンジニアリングをする方は卒論のときなどに論文を調査することをしたかと思いますが、この重要性を再認識しました。いろんな事象について論文があるため、これをやるとどういう現象になるんだろう?という疑問を実験で検証することなく、論文から学び、モデルの予想がしやすくなりました。

・お客さんからの技術的な会話の信頼度は上がった(と思う)
 話をよく聞いてくださるようになった気がします。

・指導教員との関係を築き、いろいろな情報交換ができること
 卒業後も連絡を取り合っており、優秀な学生さんを紹介いただけたりしています。自分の会社のことも教授に知っていただけるので、学生を紹介いただく機会が増え、非常にありがたいです。先生のお墨付きで優秀な学生が多いです。

・エンジニアとしての自信が持てる
 技術士取得のときもそうでしたが、モチベーションがあがります。社会人をやりながら取得した達成感と自信をもち、仕事にも更に力が入ります。

 取得することで自分の実力も上がるし、新たな人材も引き寄せられるし、いいことづくめです。

きつかったこと

・プライベートの時間が削られる
 子供の習い事の横で論文書いていました。論文の謝辞には家族への感謝を述べさせていただきました。

・仕事の両立と期限内までに卒業できるかという焦りからストレスあり。
 学費を払ってますからね。卒業できないとその分お金かかります。教授と相談して休学してその間に論文を書くという手もあります。僕自身は特性上,それをやるとずるずる怠けてしまいそうな気がしたので,やりませんでした。

 正直取得するまでは大変でしたが,取得して学位記をいただいたときは嬉しさ一潮でございます。

 Octaibの考えとしては必要と思います。エンジニアとして仕事をする上では上で書いたようなメリットが多く、個人だけでなく会社にもメリットがあります。

博士課程に行くことを考えている方の参考になれば幸いです。

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