1.なんのために働くのか
「働く」の語源は「傍を楽にする」といわれています。
【傍】とは、身近な人を指します。
そのため、自分の身近な人が楽になるように行動することを【働】くといいます。
自分の身近な人を楽にするから、相手から喜ばれ感謝される。
ただ、現在はリモートワークなど仕事が複雑になっており、この【傍を楽にする】という感覚が、以前ほど持てなくなっているかもしれません。
この傍を楽にするという感覚。
私は、とても大切にしています。
それを裏付けるエピソードをご紹介します。
2.勝ち負けにこだわる人
職場には、自身の出世だけを目的に働いている人がいます。
あなたの周りにもいらっしゃるのではないでしょうか。
この出世や昇進にこだわり過ぎると、物事の判断基準がすべて【勝ち】【負け】や【損】【得】になってしまいます。
つまり、同期やライバルに対して、勝ったか負けたか。
任されている仕事が出世に有利か否か。
これが基準になってしまい、仕事本来の傍を楽にするとか、お客様への価値の提供を忘れてしまいます。
特に販売や営業の仕事の場合、自社をご利用してくださるお客様が、自分の出世のための道具になってしまう。
たとえば「売れる」「売れた」という言い方をしますが、本当は「買って頂く」「利用して頂く」というべきではないでしょうか。
3.以前の上司
私は以前、花王販売株式会社(現 花王カスタマーマーケティング株式会社)に勤務していました。
ここに在職中、非常に勝ち負けにこだわる上司がいました。
関東圏から異動して来られた方で、支店長をされていました。
この方は非常に勝ち負けにこだわる方で常に、
「先月は○○○支店に勝った」
「今月は○○○(支店)に負けた」と言っていました。
私もこの支店長から直々に指導を受けたことがあります。
「お前も、もっと勝ち負けにこだわらなきゃだめだ、ここ(職場)は戦場なんだ」
「だから戦いに勝たなきゃだめだ」
「負けることは死ぬのと一緒だ」
と、言われたことがあります。
このような方が支店のトップに着任されれば、そのあと支店内がどうなったかは想像できるでしょう。
この方が着任されたために、それまで働きやすい職場が、本当に戦場になってしまいました。
みんな勝ち負けにこだわるようになり、疲弊していきました。
4.お客様は賢い
「とくかく売上を上げてこい」「○○○に負けるか」と言われ続けると、現場の営業は、数字を作ることしか考えなくなります。
そのため、強引な販売をする社員も出てきました。
結果として、一時的に売上は上がるのですが、お客様も馬鹿ではないので、同じ方法は2度と通じません。
だから2年、3年という長い目で見ると、以前よりも売上は低下していきます。
でも、その頃には当の支店長は異動してここにはいない。
他の支店へ異動して、また同じ事を繰り返している。
残念ですが経営サイドから、この支店長は「有能な方」と評価され「数字を作る男」といわれていました。
でも現場は疲弊して、離職者も続出。
今思い返すと「数字だけを作る男」だったのかもしれません。
このような現象は、当時の花王販売だけではなく、おそらく他者でも起こっていたと思います。
この経験も踏まえて、私は常に仕事の原点である「傍を楽にする」ことを忘れないように戒めています。