同棲時代パート4

記事
コラム
 鉄板焼きの店でバイトをしていたある日、店のカウンターに置いたラジオから、もの悲しく切ない歌が流れてきて耳を澄ませて聞いていました。かぐや姫の「神田川」という曲でした。

 その日お店は暇だったので、バイトの私はカウンターに立ったままこの曲をじっと聞いていました。そしたらレジのお姉さんが、「何かあったの?」と聞くのです。

 「実は昨日彼女と別れてきたのです。」

 この「神田川」は、かぐや姫の最初のアルバム「かぐや姫さあど」(LPレコード)の収録曲だったのですが、ボーカルの南こうせつがラジオの深夜番組でこれを流したところ、リクエストが殺到。レコード会社がシングル盤として発売するかどうかを決める際、あるプロデューサーが「この曲は歴史に残る名曲になる。」と強力に推し、シングル盤が発売されました。

 早大を中退したのち放送作家となった喜多條忠は、こうせつから作詞を依頼されました。ある日、19歳の時に早大生の女学生と三畳一間のアパートで同棲した日々を思い出し、一気に詩を書き上げました。

 さっそくこうせつに電話でその詩を伝えると、こうせつは即効で曲を作りました。昭和を代表するあの名曲は、この2人の上にまるで天から降りてきたかのようにして出来上がったのです。

あなたはもう忘れたかしら
赤い手ぬぐいマフラーにして
ふたりで行った横丁の風呂屋
一緒に出ようねって言ったのに
いつも私が待たされた
洗い髪が芯まで冷えて
小さな石鹸カタカタ鳴った
あなたは私のからだを抱いて
冷たいねって言ったのよ
若かったあの頃
何も怖くなかった
ただあなたのやさしさが怖かった
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す