気楽に読んでください、呼吸のおはなし ~その64~

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今日もお読みくださっている皆さん、ありがとうございます。
昨日素っ気なく説明した A の母音は、日本語の50音では先頭で、阿吽の「あ」でもありますが、体との繋がりや音の明るさからすると、5つの母音の中では真ん中の音です。
鳩尾とお臍のちょうど中間辺りを中心に、全方向へと広がる太陽の光のような音。
なので、O 寄りの A は若干暗い A となり、これから体験する E よりの A は明るめの A となります。
それで今日はその " E " の音を出してみたいと思います。
A と繋がる体のエリア、鳩尾とお臍の中間を起点として、その位置から両手で胴体を帯状にぐるりと撫で回します。
これは大体横隔膜の縁を撫でていることにもなりますが、A の音を出しながらこのように体を触り続けると、段々と " E " (無理矢理ルビを振るとなると「え」か「エ」となります)に変化します。
この音からは本当の意味で、顎関節のリラックスが必要となって来ます。
骨盤の緩みが自然に実現出来た時には同時にこの顎の緩みも実現出来ている筈で、これまでの三種類の母音では、その自然な緩みのままで特に問題無く音を表現出来ていたかと思います。
顎関節の緩み具合、分かり易く言い換えると、奥歯を噛み締めたり、噛み締めるまでは行かなくとも、上の奥歯と下の奥歯の距離が近づき過ぎていないかどうかという話です。
それでこの、 " E " の音ですが、ここから更にその真価が問われることになります。
A から体との繋がりによって E に変化する時、外見上、口の形は全く変わっていない状態で発音出来てしまいます。
よく発音表に不気味な唇のイラストが添えてありますが、正式に自分の深いメッセージ性と共に湧き出す母音にとって、あのような口の外見的な形状は、食べ物のトッピング、オプショナルサービスのようなものです。
例えば、親子丼の中央に三つ葉は乗っている方が親子丼らしいかも知れませんが、でも、三つ葉が無くても親子丼がしっかり美味しいことの方が重要です。
カレーに福神漬けも、福神漬けが無い位ならカレーなんか食べない方が増しだとはならないようなもんで、唇を器用に変化させることは、しっかりとした母音の発音をするのにどうしても必要という訳では無いのです。
先程説明し掛けた通り、横隔膜の縁辺りを帯状にぐるりと触りながら音を発していると、口の中では口蓋という部分、上顎・口の中の天井部分、ちょうどポテトチップスを食べ過ぎると粘膜がただれてベロンベロンになるあの部分が、A の時よりも更に左右に全開の広さを感じるようになります。
解剖生理学では喉の奥、所謂ノドチンコ辺りの柔らかい部分、軟口蓋と言いますが、そこは変形し、前側の硬口蓋は変形しないということになっていますが、このような体の使い方や感じ方をしていると、変形してるように感じられて仕方ありません。
どちらにしても、外見的には A の口の形のままで確実に音は E に変化します。この時に観察力のある人がよく見ていれば、頬骨が若干リフトアップする様子に気が付くかも知れません。
よく自然な笑顔の条件として、この頬骨の挙上が出て来ますが、まさに今やっている E の発音は、そのような自然な明るい表情にも通じるものです。
A の音が日輪のような放射状なのに対し、この E は水平方向への遠く遥かな響きです。
顎は緩んでぶら下がっているだけ、舌も同じくだら~んと下の歯の内側で横たわり休んでいるようです。
「あ い う え お」 の 「え」 に惑わされないで、触れている体からフィードバックされる感覚、メッセージに任せてみてください。必ず誰にでも出来ますから。
横隔膜の過度な緊張・硬さは、コミュニケーション能力にも制限をかけてしまいます。
それで、このように柔らかな E の音を出すことには、他者、人間だけでは無くて、他の生き物、動物も植物も、鉱物も、その他何もかもとの関係性を見直し豊かに改善する意味が含まれています。
今、頬骨のことが出て来ましたように、この E の音からは、顔や頭部の共鳴がいよいよ明確に、そして必須となって来ます。
実際に今後、顔面や頭部の共鳴に付いても詳述する予定です。
元々持って生まれた声域にもよりますが、高音の声域へのアプローチとしても関係無くは無い内容となって来ます。

つづく
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