製造分野での電子工作のIoT活用について

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IT・テクノロジー
私がIoTという言葉を耳にするようになったのは、2016年頃からだったような気がします。
私が普段対応している製造業の分野でもIoT導入に注力するユーザーが増えてきました。
しかし、同時に製造業の方々からはIoT導入方法がわからないという相談もその頃から増加してきました。
IoTはIT技術の知見を必要とするところがあるため、「ITに関する知見が無く、何をどう導入すれば良いのかわからない」といった意見をよく聞いていました。
一方で、製造業側からIT技術者へ相談を持ち掛けた際には「PCにデータさえあれば対応可能」という回答がほとんどだったそうです。
製造、ITの分野で技術の溝が存在していたのではと感じていました。

そんな中、徐々に製造業への活用も目立ってきたのが電子工作でよく使用されるRaspberryPiやArduinoといった存在でした。
GPIOを使用してON・OFFあるいはアナログ信号の入出力が可能、またコンパクトという2点が魅力だと感じています。
RaspberryPiやArduinoは製造業とIT分野を結びつける橋渡しとして一役買っていたのかもしれません。
そんなマイコンについて、GPIOとコンパクトという面も含めていくつか紹介させて頂きます。

<GPIO(General-purpose input/output)>
基板上に実装されている汎用の入出力ピンです。
これによって、モーターやセンサー等のハードウェアからの電気信号を取得できたり、逆に出力してハードウェアを制御できます。
製造業側からすればIT領域への信号受け渡しが容易になりますし、IT業界から見れば信号取得のハードルが低くなります。

<コンパクト>
製造業で使用される設備は駆動部分が多くあります。
外付けで何かを取り付ける際には、その機器の設置場所に大変苦労する場合があります。
その点、RaspberryPiやArduinoはコンパクトな上に省電力であるため、設備の制御盤内に置いてバッテリーで駆動させるといったことが可能になります。

<マイコンについて>
■RaspberryPiシリーズ
電子工作といえばRaspberryPiと言われるほど、定番だと思います。
マイコンと言われることがありますが、これはもうパソコンです。
OSはLinuxやWindows等、初期設定時にユーザーで選択可能になります。
USBポートやEtherNET接続はもちろん、Wi-fiやBluetoothを使用可能です。
GPIOも装備しているため、モーターやセンサーといった外部デバイスの信号を取得可能です。
ただし、通常のパソコンと同様、電源のON・OFFは手順を踏んであげる必要があります。
設備側で異常があった際、または設備側の電源を停止したと同時にRaspberryPiもいきなりOFFされてしまうと、傷んでしまう可能性があります。

■Arduinoシリーズ
RaspberryPiと同じく、GPIOピンを装備したマイコンになります。
RaspberryPiと異なりOSを搭載していないため、Arduino単体でエディタでプログラムを作ったり、インターネットブラウザでネットを楽しむといったことはできません。
しかし、電源のON・OFFは簡易的に行えます。
拡張ボードによってはRS-232Cのシリアル通信や、TCP/IP通信を可能とするEtherNETボードがあります。
設備と連携して情報取得を行うには向いていると考えています。

■M5Stack
ESP32というマイコンで動作します。
モニターやボタンが最初から一体型になっており、バッテリーも搭載されています。
また、BluetoothやWi-fiも装備されているため、その通信を利用したアプリケーション開発も可能です。
(種類により装備されていない物もあるようです)
扱い方がArduinoと似たところがありまして、パソコンでArduino IDEを使用してプログラムを構築後、M5Stackへ転送して動作させます。
GPIOピンも装備されていますが、標準ではピン数が少ない状態です。

安価に手に入ることから、これ等のマイコンを使用してIoTツールや卓上ロボットを制作して販売する企業もあります。
また、自社工場のIoT導入をこれ等のマイコンで実現しようとするところもあります。
しかし、安価で手に入る分、プログラム構築や配線等の環境構築を自分達で実装しなければなりません。
さらに、周辺環境(熱、振動、電気的ノイズ)に対する対策もされていないことが多く、産業用機器と対応電圧も異なることから場合によってはトラブル発生の原因になる可能性もあります。
(種類により製造業向けに対策されたRaspberryPi等もあります)
「安価だ!」という理由だけで取り組んだ結果、環境構築に手間・コストが発生し、結果的に「専用の機器を導入した方が良かった」、「どこかの業者へ制作依頼した方がよかった」等の結論に至るのも珍しくありません。

そこで、私が普段から対応しているユーザー様へは、「IoT・IT導入に向けた勉強用の取り組み」として提案を行っています。
必要に応じてサンプルプログラム・配線方法等を提供し、実験として取り組みながら知見を得て方向性を確定→それに基づいた既製品導入を支援します。
状況によっては、マイコンで実装したプログラムをそのまま使用するといった方向もアリだと思います。
そのように研究として知見を高めながら、徐々に確実なものへと発展させていく方が近道な場合もあります。
既製品は品質も保証されており、性能も申し分ないと思います。
ただし、それはあくまでも現場改善の手段であり、その製品自身が改善してくれるわけではありません。
IoTという仕組みから取得したデータをどう活かすか、それを模索するためRaspberryPiやArduinoで実験してみるというのも一つの手だと思います。
これは製造業に限った話ではなく、自宅もしくは事務所等のIoT化でも言えることだと考えています。
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