質問するということ

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質問はコーチングがその機能を果たすために大きな役割を担っています。正しい答えは正しい質問によって導かれる。天才アインシュタインは「正しい質問は?」と質問の重要性を理解していました。昔会社の人材開発部にいた頃、コミュニケーション研修やリーダー研修では質問の重要性が必ずと言って良いほど話題になり、「オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン」の使い方を参加者に教える場面も多くありました

最近、その質問について改めて考える機会がありました。正しい質問とは何?正しい答えがある前提での正しい質問、間違った答えを導く正しい質問???天才アインシュタインの考える正しい質問とは正しい答えを導くためのものではなく問題や課題を解決するための新しい答えを創造する質問という意味ではなかったのかと私は考えています。禅の教えにある「問の中に答えがある」と同じ意味だと。

質問するというのは相手に考えることを促すことになります。認知の歪みがあっても新たな問いを投げかけることで古い認知では対応できない新しい答えがクライアントから出てくることもあります。質問とは想像を促し、答えを創造することを可能にするプロセスではないでしょうか?創造するために「正しい質問」をすることは大事です。でも創造に正しい、間違っているという概念があるかという疑問も湧きます。そんなことを考えている時にある本*に「質問とは内容質問とプロセス質問がある」という記述を発見しました。

その本はあるプロジェクトを完遂させることを例にしながら「内容質問」と「プロセス質問」の違いを解説していました。

「内容質問」
・建造コストが●●円にするにはどうすればよいのか?
・修復コストにどのくらいかかるか?
・イベントはどうするか?

「プロセス質問」
・その決定の目的は何だったのか?
・代替案は何を考慮したのか?
・そのプロジェクトによって生じるリスクは何か?

冒頭にオープンクエスチョン・クローズドクエスチョンのことを書きましたが上記の例はすべてオープンクエスチョンです。答えは一つではなくYes・Noでは答えられません。しかしながら本には「内容質問」は選択肢を狭め、誘導の可能性を含むと記載されており、Yes・Noを突き付けるクローズドクエスチョンと同じ結果を生みます。正しい両者の使い方は「プロセス質問」→「内容質問」の順に行うと書いてありました。

プロセスを問うということはクライアントにストーリーを語らせることです。これは認知の修正や未来に対するビジュアル化も促進できそうです。

「問の中に答えがある」

禅の教えはコーチングの質問に対する新しい定義とも言えそうです。マインドフルネスが禅の教えを土台にしているようにコーチングという外来手法もよくよく考えると仏教の教えにつながっているのではないかという気さえしてきます。プロセスの中で変化が生まれ、新しいものが創造される。創造されたものは良い、悪いではなく変化の結果であり、その変化がさらに結果の変化を促して問題を解決する。コーチングはオンゴーイングのプロセスを重視しますので正しい質問とは「プロセスを促進する」ことではないかと。

いままでは結果を追い求めて道理を外れたり、無茶な行動をしたりすれば答えのある世界で結果が出せたかもしれませんが、コロナの発生や今の社会情勢が答えのない世界の扉を開けました。これから我々の進むべき道に答えはなく、答えを創造する時代に入ります。

「問の中に答えがある」

これがこれからのコーチングのキーになってくるのではないでしょうか。

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