創造性と道徳性ってどんな関係があるの?を調べてくれたお話

記事
コラム
創造性と道徳性ってどんな関係があるのか調べていたら、なかなかおもしろそうなレビュー論文(1)を見つけたのでメモ

▼こんなことを知りたい人向け
・創造性ってどう定義されるか
・道徳性ってどう定義されるか
・創造性と道徳性の関係性についてどんな風に考えられているのか






▼創造性ってなに?
ここでいう『創造性』とは、
それに対応する分野の専門家によって認められた新しく有用なアイディア、洞察、行動、または製品を生み出す人の能力をいいます。

創造性というのは、創造的な認識にあるのか、それとも創造的な資質にあるのかによって様々な観点から概念化されてきました。

つまり
創造性が認知的な側面のものなのか、それとも遺伝的な側面のものなのかを考えたわけですね。

サイモントン(2003)が論じるには、
創造的産物が創造性の最終産物であり、その人が創造的であるかどうかを社会が評価するための基本的な基準を表している。
つまり
創造性の要因を認知的なものか遺伝的なものか分離するのムリだから、創られたものを評価して創造性があるかどうかを考えましょうということですね。


▼道徳性ってなに?
ここでいう『道徳性』とは、
社会生活を可能にするために利己主義を抑制したり、管理したりすることができる価値観、習慣、制度、心理的メカニズムが連動したものをいいます。

一言で道徳性といっても様々な構成要素があります。
・道徳的認知
・道徳的感情
・道徳的意志
・道徳的行動
・道徳的人格性
などです。

たとえば困っている人がいたときに、
あの人困ってそうだなと気づく(道徳的認知)
可哀想だな。助けが必要かなと思う(道徳的感情)
よし。声をかけてみようと思う(道徳的意志)
「大丈夫ですか?困ってませんか?」と声をかける(道徳的行動)

困っている人に手を差し伸べるという道徳的な行為もこのような道徳的要因が積み重なっているんですね。


▼創造性と道徳性って関連あるの?

この論文では169件の研究の中から最終的に28件の研究をレビューして

①創造性と道徳性の間に相関関係はない。
②創造性と道徳性の間に負の相関関係がある
(一方が高いともう一方が低くなる)
③創造性と道徳性の間に正の相関関係がある
(一方が高いともう一方も高くなる)

だいたいこの3つの主張を考察しています

①創造性と道徳性の間に相関関係はない。主張について

善意ある創造性と悪意ある創造性を区別する研究では、創造性って重要じゃない?と示唆されていたり、学生の創造性と倫理的意思決定の間に有意な相関が観察される研究があったりと相関関係がないというには説得力が欠けそうな様子。
どうやら最近の実証実験では、創造性と道徳性の間に負の相関があるか、正の相関があるかを主張する見解が増えてきているらしいです。

②創造性と道徳性の間に負の相関関係がある。主張について

道徳性はあらかじめ決められた規範や規則のシステムに従うことを前提として正しいことをします。創造性は伝統やルールを壊して斬新で有用なものを創造します。つまり創造性の高い人は、創造性の低い人よりもルールを曲げたり、法律を破ったりする可能性が高いんじゃない?という考えがこちらの主張です。

この考えの裏付けになっているのが、悪意ある創造性に焦点を当てた研究や、創造性と不正や嘘を関連付ける研究です。

悪意ある創造性の研究では、創造的な人たちにはネガティブな特徴があることを明らかにしています。
・攻撃的
・疑心暗鬼
・多彩な嘘をつく
・欺瞞的になる
・敵対的な性格を示す
・誠実さを示すことが少ない

また別の研究では、高度に創造的な人は実験の各試行でどれだけうまく行ったかについて嘘をつくことで、創造性の低い人よりもテストの結果を操作する可能性が高いことを発見しました。この研究で創造性が不正行為を正当化する能力を媒介にすることが明らかになりました。

他にもいろいろ研究からの知見を総合すると、状況的な嘘が認知的柔軟性などの創造性を高める特定の要素と関連している可能性があると示唆されるそうです。

ただし、このレビュー論文では負の相関があるという結論には懐疑的です。

第一に、創造性は必ずしもルールや慣習を破ることを示唆するものじゃなくない?
第二に、道徳的な制限があるから創造性が発揮されるんじゃない?
第三に、データとして不十分なところあるんじゃない?

というところ。
研究によっては創造性と道徳性の間の相関関係が極端に低いものもあったので、まだまだ断言するには早そうな感じです。

③創造性と道徳性の間に正の相関関係がある。主張について

こちらは道徳性が高いほど創造性が高まるという見解。善悪を判断する十分な知識や理解を持っていれば正しく行動し悪を避けるために最善を尽くそうとするんじゃない?という考え方です。

創造性と道徳性の間に正の相関があると主張する研究もいくつかあります。

たとえば、
大学院生258名を対象に行われた実験では創造的な問題解決におけるパフォーマンスが論理的な意思決定におけるパフォーマンスと正の相関を示していることがわかったり、117名の大学生を対象にした創造的課題と道徳性テストの結果から高い道徳性を持つ人は悪意ある創造性と負の相関があることがわかったりしてます。

おもしろいなと思ったのは、個人の創造性が道徳教育のような道徳的介入によって向上することができるという研究。
道徳的な知見が増えることによって創造的な解決方法が見つかるというのはなんとなく腑に落ちそうな感じであります。

創造性の高い人ほど比較的優れた道徳的推論能力を持っている傾向があるようで、これが創造的な説得を助け、より合理的な道徳的決定や行動をするのに役立つようなんですね。


▼まとめ

まとめると
この論文では創造性と道徳性の間には正の相関関係があるという考えを支持する傾向がありました。

しかし、創造性と道徳性の関係には多くの要因が関係している可能性があってまだまだ研究が必要そうな感じです。
道徳性というのが概念的に広くて位置付けるのが難しそうな感じですね。文化モデルによっても道徳的認知のプロセスに影響があるのでやっぱり一括りにするのは難しそう。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す