それでも、まだ生きてる。~第6話~

記事
小説


倫也は、「話すにも順序がある」と言った。

まずは、注意事項というものがあるらしい。

私は、慌ててメモの準備をした。


一、『自分を信じる』
二、『家族の繋がりを信じる』
三、『昔からある言葉を雑に扱わない』
四、『見えない者への敬意の念を忘れない』
五、『純粋性を保て』



二十八、、、、




「ちょっと、待って!まだあるの?!」

私は、メモをテーブルに置き、倫也を見た。

倫也は、片手を口元に置き、
クスクス笑いながら、締めくくるように言った。

「まぁ、いっぺんに言っても仕方ないな、、
あと一つ、最後に大事なのは・・・」


『自分を愛する』



「絶対に、自分を犠牲にしてはいけない!」

と、倫也は真剣な表情でこれだけは
護ってほしいと言った。

私は「う、うん」と、頷いて、
それから続く、倫也の話しに耳を傾けた。



「オレの家は、曾じいさんが密教徒で、
その縁の寺がある、、今は兄がそれを
継いでいて、、、」






オレは産まれたときから、
音が光で見えていた。

それは、みんな見えるものだと
思っていた。


母親は、
聴覚が秀でていて、
神さまの言葉が聞こえるタイプだ。

所謂、
『神さまの声をおろします』的な・・・


だから、常識では『見えない世界』が、
極々、当たり前に存在する世界として育った。


この世界を否定されたのは、小学3年の頃。

寺の庭の大きな菩提樹の側で、
いつものように『浄化』をしていたら、
キラキラ光る金粉が舞ってきた。

よくよく見てみると、
ピョンピョン飛び跳ねてるやつとかいて、
ジーッと見ていると、消え、
また出てきては、消え、、、
姿が確認できるまで、
凝視すると、それは羽が生えていた。

「妖精?」

それまで、音が光の形状で
見えていただけだったから、
驚いて、誰かに教えたくなった。

ちょうど、従兄弟の兄さんが、
遊びに来てて、そのことを伝えたら、
慌てたように、こう言った。

「そういう嘘を言ってはいけない!」

小学3年の、オレのトラウマかもしれない。

慕っていた兄さんから、自分の世界を
否定され、嘘つき呼ばわりされたんだから、
そりゃ、傷つくな、、、

まあ、そんな幼少期もあり、
第1段階の『捻れ』ができた・・・


そして、その日から、
なんとなく、 家族と距離を
置くようになった。




それから、13年の年月が経ち、
オレは22歳になった。

相変わらず、音が光で見えるが、
あの時以来、『妖精』を見たことはない。

家族と疎遠にはなったが、
次男なので、そこまで干渉されることもない。

母は心配しているが、
自分自身が不安定で、躁鬱を繰り返している。


母の状態を見ていても、
この世界は安定性に欠ける。

特に、自分たちのような類いは、
生きにくいようだ。


オレは、
『今を生きていない』

そんな焦燥感に、苦しんでいた。






倫也は、そこまで話すと、
いったん黙り、私をジッと見つめた。

私は、倫也に見つめられると、
なぜか反らしてしまう。

思わず、通りがかった店員に、
声をかけ、コーヒーのおかわりを頼んだ。

倫也はこれから話すことは、
かなり、前の事になると言う。

それは、魂の教えで、
輪廻している魂が、今に繋がっているという、、、


私が、科学的に実証してきたことを、
根本から覆す話しのようだ・・・(汗)




序章終わり。

~第1章~ 第7話へ   つづく。








サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す