私を変えた結婚 vol.1

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小説
ざわざわと心が騒ぎ出す世の中です。
今宵も眠れていますか?
見えない何か、大きな壁や不安はつきまとうけれど
どうかその壁に背を向けないで。
いつか叩き壊して、そしてその先の明るみへ。

幸せだと信じていたの、わたし


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職場で出会った旦那は亭主関白で
配偶者軽視、妻は家に置いておきたい、
そんなモラルハラスメントを平気でできる男性だった。

「おまえは何もできない」
「俺が働いている間に家でのんびりできていいな」
「掃除と洗濯と料理、誰でもできる」
「要領が悪いな、本当に」

正常な思考であれば、ぐさりと突き刺さる言葉たちも
もう慣れてしまったのかさらりと耳の中を通り抜けていく。
だけど頭なのか、心なのか、よくわからないけど
"ちくり"と棘のようなものが傷をつけていく。

そんな小さな傷も十数年とついていけば
大きな傷になっていることを気づいているのに
まるで私は人形のよう。
娘が幼いころに顔に落書きをして、不細工になってしまった
リカちゃん人形の方が、まだ幸せそうな顔をしている。

かなり初めの方で分かっていたのに。
薄々と気づいていたのに。
まるで自分を抑え込むかのように、
これでいいのよ、これしかないの、と
言い聞かせるように続けてきた結婚生活だった。

私さえ我慢すれば、少し笑顔を作ってしまえば
受け流しさえすれば。
それで「幸せ」だと思っていた。

彼に言われるまでは・・・

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本当の君はどれなんだ?

めまいがしそうになった。いや、もうしていた。
くらくらと世界が回るから、そのまま倒れてしまえたら
なんて楽なんだろうと思えた。

彼はいつも笑顔で楽しそうだった。
くだらない話、くだらない感情、くだらない意見。

あぁ、これが「たわいもない会話」ってものなのね。
次から次に自然と、何も考えずにすーっと
口から出てくる会話。感情。

あれ?私が普段していた会話ってどんなものだった?
そう、旦那としか会話しないから・・

そうね、最初はすっと出ていた気がするの。
ニコニコ笑えてた気もする。

「このお肉ね、今日は安かったの」
「雨が降りそうだと感じたから早めに洗濯物を入れたら正解だった」
「駐車場で猫が飛び出してびっくりしちゃった」
「手のひび割れがひどくて・・痛いのよ」
「今日はなんだか調子が悪くて・・簡単なものでごめんね」

・・・・「ふ~ん」・・・・

ごめんなさい、くだらないこと話して。
まあ見落とすほどの小さなサインしか出せない
小心者の私も少し狡いわね。

でも私はそれから"意味のない会話"はしないことにしたわ。

なのにあなたはくだらないこと、一方的に話すのね。
だから「ふ~ん」と返しておくの。
寂しそうな顔に見えた。それを見て心は痛まなかった。
あなたも同じだった?

いつからだろう、この虚無感と共に過ごすことになったのは。
いつまでだろう、この計り知れない寂しさと承認されたい欲求は。

そして私はどれが私で本当の私はどんな性格で
どんなことをしゃべりたくて
何をしたいのか、わからなくなってしまった。

もうだめなんだと、そう気づいている。




つづく
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