「ジョブ型」について思うこと

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ビジネス・マーケティング
最近、雇用の仕組みを「メンバーシップ型」から「ジョブ型」に変える云々という話題をよく見かけるようになりました。

「メンバーシップ型」「ジョブ型」という言葉は、専門誌などでは割と前から(5,6年前?もう少し前かな?)よく出ていたと記憶しています。

これは私だけかもしれませんが、企業で制度設計やってきた側からすれば「ジョブ型に変える・導入する(by 積極派)」「ジョブ型は危険。雇用が守れなくなる(by 消極派)」と、双方しゃちほこばるのはどうかな…と思います。

例えば「開発系、工場系、管理系、営業系…それぞれで必要な知識・スキルをレベル別に定義しよう。そして社内能力開発の仕組みを整えて、戦略的かつコンスタントな人材育成をしようじゃないか」という話は、よくあることです。
各分野で、どういう仕事があるから、そのためにどういうスキル・知識が必要か?を整理する訳ですが、これは「ジョブ型」のアプローチに近いですね。

また、「市場の給与水準に負けない給与レベルにしたい…」となると、コンサルが行う報酬調査に参加して情報を入手したりします。これは欧米発の流儀なので以前は外資系企業が中心でしたが、最近は日系企業も多く参加するようになりました。
報酬調査は、複数の会社を横グシで見る必要あるので、「経理スタッフ」「電子回路設計エンジニア」「製造チームリーダー」など職種ごとに自社データを入れ、また市場データを見るのです。
これもまさに「ジョブ型」的なアプローチです。

あと、上司から「こういうスキルを身につければ、もっと良い仕事ができる。その仕事のプロとして認められる」という話をされたり、会社によっては「今年を振り返って、来年どんなスキル・知識を身につけるかを宣言してください」とか言われるところも最近ありますね。
これも「どんな仕事ができる人になりたいか?」を定義しているのですから「ジョブ型」の要素がありますね。

つまり、上にあげた3つの話は、「人を育てたい」「良い人材を集めたい」という思いから「ジョブ型」のアプローチが活かされているケースといえます。

「ジョブ型はこれだ!」という定型的・絶対的な形がある訳でありません。

ジョブ型の度合いが強い欧米の会社でも、その仕組みと運用・活用のしかたにはバラツキあるように経験上感じます。
「このポジションは、どこでどんな仕事をして、どんな経験・スキル・知識が必要で…上司はどういう役職の人で…」等をまとめた、”Job Description”つまり「職務記述書」を書くのが共通しているくらいでしょうか。(別にこれ自体は悪いことではないですし、ジョブ型を導入しなくても「守備範囲や必要能力を明確にしよう」という考えでやっている会社があっても不思議ではないですね)

なので「ジョブ型」とか声高に言わずとも、 個々の事情に合わせてジョブ型の要素を自然に取り入れていけば良いのでは?…と思います。

要は”使いよう”です。

ただ、ジョブ型には、一つ大事な前提条件があると私は考えます。
それは、各社員や各組織に”期待値”、つまり「どういう役割・活躍を期待しているか」が伝わっていることです。
なので、ジョブ型を入れるということは、経営者や管理職にとって結構大変なことなのではないかと思います。

もちろんジョブ型でよく言われる「”就社”でなく”就職”」という働く人の意識変革も大事です.
ですが、ジョブ型の要素を良い形で取り込むためには、マネージャー・リーダーの教育が何より大事だと私は考えます。

「ジョブ型」という言葉にとらわれず、その意味をじっくりかみしめて、これからの会社組織のありよう、雇用のありようをこの機に考えてほしいなと思います。
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