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ココナラブログ
ツイノベ 226-230
記事
小説
秋助(あきすけ)
2020/09/29 12:39
三年に一度、この国は海の底に沈んでしまうほどの満ち潮に見舞われる。1人に1台が当たり前になった舟で国の上を渡る。海が引くまでの十日間は隣の国に避難するのだ。あなたに会えなくなるわずか十日間が苦しかった。遠くの海を眺めると、まっしろな雲に包まれた隣の国が姿を現した/№226 水槽都市(百景76番)
不要不急の恋が解除されてから一週間が経った。街には前と同じく恋人同士が溢れている。けれど、その幸せの裏にどれだけの恋が失われていったのだろう。私と彼の間にも透明な幕が下りて、日常の、人生の流れが変わってしまった。それでも、いつか、きっともう一度、彼と再会できる日を信じた/№227 不要不急の恋③(百景77番)
灯台守の元に一羽の千鳥がやって来る。足に括り付けられた文書には名前が書かれていた。灯台守が鐘を三度鳴らして黙祷を捧げると、島民も手を合わせる。この島の風習として亡くなった人を島全体で偲ぶのだ。五十年以上も鐘を鳴らしてきた灯台守は、その日、息子の死を知って静かに泣いていた/№228 祈りの鐘(百景78番)
文化祭の演し物で僕のクラスは創作ダンスをすることになった。誰も主役をやりたくない中、根暗で、内気で、前髪が伸びきって表情がわからない女の子が手を上げた。みんなからは馬鹿にされていたけど、放課後、一人でかろやかに踊る女の子の前髪の間から、澄みきった瞳が覗く瞬間が好きだった/№229 ネクライトーキー(百景79番)
大雨に降られて髪をぐちゃぐちゃにしたまま帰ると、美容師である彼が髪を整えてくれた。ふと「私の髪が綺麗じゃなくなったら別れる?」なんて聞くと彼は俯く。心が乱れた。彼の気持ちがこのまま変わらないのは難しいだろう。彼は返事の代わりに、病気で抜け落ちつつある私の髪を優しく撫でた/№230 揺れる(百景80番)
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秋助(あきすけ)
文字書き(小説、脚本、短歌、コピーなど) / 30代後半 / 男性
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