ツイノベ 141-145

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ホームの向かい側に若い夫婦が見えた。少し眺めていると赤ちゃんが人形だと気づく。子どもに恵まれない人や亡くした人が、人形を赤ちゃんの代わりにする話を聞いたことがある。それは救いであり光だ。なのにどうしてだろう。私はその風景が、とても気味の悪いものに思えてしまうのだ/№141 ひかりのまち②
今日はハロウィンだ。妖怪や怪物の仮装をして、夜な夜な街に繰り出す。無駄に騒ぎ立て、ゴミを散らかして、交通の邪魔になる。関係のない人には迷惑な行事だろう。でも、私にとっては大切な日だ。今日だけは仮装する人に紛れて、私は人間に化けることなく、堂々と街を歩けるのだから/№142 妖の街
その不良は指の骨を鳴らすと、不思議なことに音階を生み出します。パキ、ポキと鳴らすと、今日は気分が良いのか、ラシ、シドと高音が鳴ります。調子が良いときにはカエルの合唱を鳴らします。敵の不良もそのメロディーを聞くと戦意喪失します。街は今日も、不良のおかげで平和でした/№143 不良和音
新しい自分を探すために、今日も部屋の扉を開ける。扉をくぐるたびに世界は変わった。海の底に沈んだ街。ヒヨコが空から降る国。何度目かの扉を開けると見慣れた部屋に行き着く。いくつもの光景が私の見識を広げてくれたけれど、やはり私の居場所はここにしかないのだ。「ただいま」/№144 どこでもドア
「また一つ、空から星が消滅しました。依然、原因究明には至らずーー」星借り屋さんに頼んで、星の光を貸してもらう。そうして私の部屋は、借り物の光で満たされている。空から奪った光だ。偽物の光だ。この左手で届く程度の星に触れる。それでも私は、希望にも似た光をそこに見た/№145 星借り屋さん



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