ツイノベ 136-140

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電車に揺られながら、住んでいる街へと戻る。ふと窓の外を眺めると、ヒコーキ雲が空を縦に割いていた。バッグから彼女のネックレスを取り出す。窓を開けると秋の気配が漂ってきた。二基目のロケットが飛び立つ。投げたネックレスが夕陽に反射して、轟音のうねりと共に過去へと流れた/№136 未来都市⑥
古い建物が残る街の風鈴屋を二人で覗いていると、店主から「彼女かい。綺麗な子だね」と声をかけられる。僕が「はい」と答えると、不機嫌そうに女の子が先を歩く。「なんで彼女なんて答えたの?」と怒る。大きなお腹を、優しくさすった。「もう彼女じゃないでしょ」と、優しく笑った/№137 ひかりのまち①
大嫌いな場所から逃げ出すため、私は家を飛び出した。財布。カメラ。携帯。持ってきたのはそれだけだ。制服のまま遠い遠い海岸へ行き着く。この海のようになれたのならば、母親は私を愛してくれただろうか。ザザン、ザザンと寄せては引いていく波のように、私はどこにも動けずにいた/№138 海辺の彼女①
閑静な商店街の路地裏に、古ぼけた文字で「じどうはんばいき」と書かれた機械がありました。ディスプレイには商品が置かれていなく、代わりに「うで」や「あし」とだけ書かれています。一番値段の高い商品は「からだ」です。今日も夜の帳に、ガタンという鈍い音だけが響き渡りました/№139 夕闇が丘①
おかーさんとはぐれてひとりぼっちです。わたしのあとをくろいひとが、びしゃ、びしゃとついてきます。おとなたちもみてきます。そのとき、とらっくがわたしにむかってきました。いつのまにかくろいひとはいません。おとなたちもみてきません。おかーさんはまだ、みつからないのです/№140 夕闇が丘②



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