ツイノベ 131-135

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彼女と出会った地へ、五年ぶりに訪れる。電車から降りると、秋だというのに夏のような熱気が僕を包んだ。視界には高層マンションやビルが並ぶ。昔はもっと自然の多い場所だと思っていたのに。変わったのはこの街の景色なのか、それとも、大人なんかになってしまった僕の思い出なのか/№131 未来都市①
遊具もベンチもないただ広いだけの公園で、手押し機械を動かしている男性がいた。「なにをしてるんですか?」と訊ねると、「この機械で地質調査ができるんです。街の発展のためですよ」だそうだ。去っていく男性と機械を眺める。街の発展と引き換えに、草花が車輪に轢かれては散った/№132 未来都市②
流れない噴水を眺めていると、彼女とデートしたことを思い出す。「どうして今まで忘れていたのよ」と、彼女の亡霊に責められているようで目を背けてしまう。落ち葉が噴水の底で静かにたたずんでいる。僕も落ち葉も思い出も、流れることのできないまま、風に揺れてはさまよっていた/№133 未来都市③
君についてまだなにも知らなかったころ、僕達は目的地もなくこの街を歩き回った。猫の銅像やいくつもの公園。役割を果たさない噴水。ロケットを模した巨大なオブジェがある宇宙施設など、僕達の興味は尽きなかった。「私達の未来は、もしかしたらここにあるのかもね」と彼女が笑った/№134 未来都市④
ロケット発射場に行くと、大勢の人で溢れ返っていた。この街から、宇宙へ。未来を届けるのだ。人々の思いや希望が、灰色の煙を吐き散らしながら上昇していく。大気圏の外に、まだ君はいるのだろうか。『グッドバイ グッドバイ バイバイーー』。昔、大切な人と聴いた歌を思い出した/№135 未来都市⑤



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