くるみ弾⑤

記事
コラム
権蔵をはじめ猟師達は急ぎ足で山を登っていた。
藤吉、おめーが化かされた所はどの辺りだと権蔵が訊いた。
山頂のちょっと下あたりだったと思う。
飯食って眠って起きたら化かされた。
あれは、やっぱり山頂のちょっと下あたりだった。

俺は爺様からタヌキの部落が山頂の辺りにあると昔聞いた事があると猟師の留吉が言った。
う~ん、其処がタヌキの部落ならば先ず山頂に向かって見ようとリーダー格の権蔵が言った。
ここは、山の八合目あたりだろう。
これからは警戒して余り声や音を出さないで静かに進もうと藤吉が言ったその眼は復習の炎が燃えていた。
なにしろ、肥溜めに風呂だと化かされて浸からされたのだから、その怨み晴らさないでか!
の勢いに燃えている。
猟師達はタヌキ達が見張っっている見張り台の下を通過する時に、その見張り台から密かに烽火(のろし)が上げられている事に気が付かなかった。
藤吉たち20人くらいの猟師は、どんどん山の山頂を目指して登って行った。

やがて山頂近くになった時に、目の前に一匹のタヌキがこっちを見ている。
その横にもタヌキが居る、また、その後ろにもタヌキが居る。そして棲家みたいな草で覆った穴も見える。
タヌキ達は陣地の上に立っている。
タヌキ達の横には、さる、しか、ウサギ、イノシシなど他の動物達の姿も見える。
いたぞー!見つけたぞー!ここがタヌキ達のアジトだー!。
留吉たちは右側に廻り込め!
藤吉たちは左側に廻り込め!
俺達はど真ん中から突っ込む!
と権蔵がみんなに号令と指示を出した。
藤吉たちは権蔵の指示の通りに左右に分かれてタヌキ達を挟撃して殲滅の作戦を執った。
猟師達は右と左と中央に分かれて一斉にタヌキ達に向けて発砲した。
ドギューン、ドギューン、ドギューン!
と発砲音が山全体に、こだまする。
陣地に居るモコ姐さんや、りょう君たちを狙って弾が飛んでくる。
危ない!
モコ姐さんや、りょう君たちは陣地の後ろに隠れた。
中央の陣地は長老のポン太が指揮を執っている。
右側の陣地は青年団長のスケ太が指揮を執っている。
左側の陣地は青年副団長のミノ吉が指揮を執っている。
それぞれの陣地には投石器が三基ある。
猟師達は三方からジョジョに陣地の方へ、草をかき分け発砲しながら近づいて来る。
ドギューン!ドカーン!キーン!カーン!
猟師達は総攻撃をかけている
陣地は草や木の枝で、まともに見えないようにしているが猟師達は大体の見当を付けて派手に撃ちまくって来る。
陣地の土台や柱に弾が当たる度に陣地が破壊されていく。
みんなー! 投石器に小石弾を詰めろー!
と長老のポン太が全ての陣地に指示をだした。
いのししが、投石器の竹に、ぶら下がり体重を掛けて大きく、しならせた。
すかさずサルさんが小石を皮袋に包んだ。
小石弾の装填終了。
今、竹は大きく、しなって、そのエネルギーを最大限までに高めていた。
いのししさん、手を放してと青年団長のスケ太が言った。
イノシシが竹から手を放した瞬間、竹はその強いエネルギーを一気に放出した。
小石弾はビューと勢い良く大きな弧を描いて飛んで行く。
三か所の陣地から次々に小石弾が放出される。
小石弾の装填は、あわただしい。
イノシシが体重を掛けて竹をしならせ、サルが小石弾を装填し狙いをつけて弾を飛ばす。
投石器の所にはウサギとシカが次々に小石弾を運び込む。
みんなが一丸となって応戦している。
ビシッ!ドカッ!バコッ!と猟師達に小石弾が次々に当たる。
痛い!なんだこれは、猟師達は突然の反撃に戸惑った。
タヌキ陣地に確実に歩を進めていた猟師達は、その場から進むことができなくなった。
石だー!
石が跳んでくるぞー!
みんな気を付けろー!と権蔵が叫んだ。
猟師達は深い叢(くさむら)にしゃがみこんで小石弾を避けていた。
くっそー!タヌキ達め、洒落た事をしやがってと猟師達は思ったが、一抹の不安感情が沸いて来た。
今の状況では圧倒的に猟師達にアドバンテージが有る。
なにも不安がる事は無い。
しかし、何とも言えない不安が頭をもたげていた。
この不安は何処から来るのだろう。
タヌキがこのような気が利いた攻撃を仕掛けて来る。
どことなく底知れない智慧を持っているのではないか。
しかし、今の優勢な状況を見て不安を、かき消した。
猟師達は分厚い頭巾のような帽子を被っているので小石が多少当たっても致命傷は受けない。
それが分かったので、また猟師達は進軍を始めた。
みんなー!
小石なんか何ともないぞー。
一気に進めー!
と権蔵が号令を掛けて気合を入れた。
勢いを取り戻した猟師達が又、派手に鉄砲を撃ちながら進軍して来た。
青年団長達スケ太とミノ吉は一所懸命に投石器で石弾を飛ばしていたが
かまわず猟師達は確実に距離を詰めてきている。
竹にぶら下がって、しならせていたイノシシが突然床に落ちて来た。
猟師達の弾が当たったのだ。
イノシシは、後を頼むと言いながら死んだ。
その直後ウサキやシカにも次々に猟師達の弾が当たって死んでいった。
陣地の中は手薄になって小石弾の充填も儘ならないようになった。
猟師達の攻撃はますます激しさを増し投石器で小石弾を撃っても猟師達は、ひるまずに迫って来ていた。
長老のポン太も肩を撃ち抜かれ左の腕が使えなくなっていた。
これは拙い、状況は圧倒的にわしらの不利じゃ、此の儘だと全員が猟師達に殺されるのは時間の問題だと長老のポン太が言った。
他の陣地の戦力も極端に下がっている。もう狸側の戦力は風前の燈火(ともしび)となっている。
陣地の後ろに隠れていた、幼い兄弟の、りょう君が陣地によじ登って来た。
トンビさんこの小石を掴んで猟師達の頭に飛んで行って爆弾攻撃してと頼んだ。
トンビさん達みんなで10羽くらいが、それぞれ小石を掴んで猟師達の頭の上空に飛んで行って石を落した。
しかし、それも猟師達に致命傷を与えるような事は無かった。
返り討ちに有ってトンビさん達は撃ち落とされた。
小石弾では猟師達に致命傷を与える事は出来ない。
万事休す万策尽きた。
これまでかと長老のポン太は、今にも陥落しそうな三基の陣地を見ながら思った。
その時ポン太の脳裏に一つのアイディアが閃いた。
そうだ!
あの手を使って見よう!。



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