クルミ弾➃

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コラム
村から細い道を登って、これから山の中腹になる頃に藪が深くなるその辺り草薮に隠して見張り台を作った。
人間たちが鉄砲を担いで、ここを通過したら見張りのタヌキ達が長老たちに、烽火で伝えるためだ。
タヌキ部落の西側と東側と頂上付近に陣地を張った。
陣地には投石器を設置した。
竹の強靭な、しなりの復元力を使った投石器をそれぞれの陣地に三基ずつ配置した。
竹の根本を装置に固定して竹の先を持って力いっぱいに曲げる。
竹の先端に広い皮が紐で取り付けてある。
その皮に小石を挟んで竹の復元力を使って遠くまで飛ばす投石器の構造だ。
弾になる小石も大量に陣地に運び込まれた。
各、陣地にはタヌキの戦士や、しか、いのしし、ウサギ、狐、トンビ、カラス達もそれぞれ配置に就いている。
トンビさん、ちょっと里の人間たちの様子を偵察に行って呉れないかと長老のポン太が言った。
お安い御用と言ってトンビはタヌキ部落を飛び立って里の上空の方に飛び去った。

陣地を張って徹底抗戦の構えを取って投石器の武器を配置しているとは言え、みんな動物達も恐怖を感じていた。
出来ればこの場を去って他の地域に逃げて行きたい。
人間たちに自分の命も奪われるかもしれないと言う恐怖だ。
しかし、自分の子供や大事な存在を殺された怨みを晴らしたい。
それに、タヌキの長老のポン太たちが陣頭指揮を執って人間たちに立ち向かおうとしている。
自分だけ逃げて良いものだろうか
それにみんな動物達はこのタヌキ部落が大好きだ。
みんな仲良く暮らしている。
この桃源郷を捨てたくない失いたくないと言う思いが強く湧き上って来た。
自分たちのこの楽園を自分たちで守るのだ。
タヌキの戦士達も動物達も絶対に後に引かない覚悟を決め肝をその時に据えた。
やがて、偵察から戻って来たトンビさんが報告した。
人間たちは今、里を出ました。
みんな鉄砲を担いでいます。
それに頭には分厚い帽子を被っていて地下足袋姿で腰には水筒を下げて、このタヌキ部落を目指して20人位で登って来ています。
みんな殺気立っています。
私を見つけた猟師の一人が、上空の私に照準を合わせて撃とうとしましたがリーダー格の権蔵が弾はタヌキにとっておけと言ったので撃たれずに済みました。
と長老のポン太に言った。
いよいよねとモコ姐さんが言った。
幼い兄弟の、りょう君がモコ姐さん、人間たちが登ってきたら藤吉を化かしたように、化かしてしまえばいいんじゃないのと言った。
化かすには人間が油断してのんびりしている時しか妖術は効かないの、あんなに殺気立っている人間に無理なのとモコ姐さんが言った。
その時に頂上の陣地に居るタヌキ戦士が下の見張り台から烽火が上がったぞー!と長老ポン太達に叫んだ。
下の見張り台の所を人間たちが通過したようだ。
イヨイヨだ!
みんな陣地配置に就けー!と長老ポン太が叫んだ。



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