ラプソディー・イン・ロンドン ~慣習~

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コラム
ロンドンと言えば「ダブルデッカー」と呼ばれる赤い2階建てバスが有名だ。
最初の頃は物珍しさで行き先関係なく乗っていた。
いざ乗ってみれば、あまり乗り心地が良い乗り物ではなく、張り出した街路樹の枝をバキバキ蹴散らしながら走っていくことに驚かされた。
2階の先頭に座れば、分かってはいても迫ってくる枝にのけぞったことも何度かあった。

ロンドンのバスも、別にダブルデッカーだけでなく普通に路線バスもある。
今の日本と同じバスなのだけれど、当時はまだ古いバスが残っていて、これもまたスリリングで便利だった。
バスの最後尾がぽっかり空いていて、そこから乗り降りするのだが、キチッと止まってくれるわけじゃない。小走りに飛び乗る感じだ。(ご年配の方が居ればきちんと止まってくれるのだが。)
そこに車掌がいて料金を払う。降りるときは車掌に降りたい旨伝えると、運転席まで張ってある紐を引っ張って、運転席の上についているベルを鳴らして止まる地点を叫ぶ。そうするとその付近でスピードが落ちてサッと降りる。
慣れると心地よい便利さを感じた。

鉄道も古いものが残っていて、こちらも一興だ。
乗降口がすべての座席についている。乗るときは自分で取っ手を引いて開けて
直接座席に座る。驚きは降りるとき。外にあった取っ手が内側にはない。訳が分からず近くの乗客を観察すると、やおら窓を開け、外に手を出して外の取っ手でガチっと開けて颯爽と降りていく。
何これ?と思ったが、そもそも鉄道は富裕層が使う乗り物で、扉の開け閉めは執事の仕事なので内側には取っ手は要らなかったという習慣が、庶民の足になっっても変わらず残った。
そういえばバスも、元々は2階建てではなく普通の車両だったものの、乗車需要に輸送キャパが追い付かず、屋根の上に乗客を乗せたことの名残と聞いた。

駅名もそうだが、この頑なまでに慣習を引っ張るところにイギリス人の特徴、
プライドを感じた。
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