医師事務作業補助者の活用を!

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コラム
「医師事務作業補助者」という言葉は、病院の職員でしたら分かる人が多いと思いますが、それ以外の人には分かりにくいのではと思います。字面からは病院の中で何か事務作業をする人というイメージを持たれるのでは無いかと思います。

病院の中でも働き方改革が求められています。特に医師の働き方改革が問題で、勤務医の医師個人の労働総時間に規制が掛けられるというものです。医師事務作業補助者はこの鍵となる職種です。医師が行っている業務のうち、事務作業だけを専門の事務員に肩代わりさせるものです。

医師事務作業補助者の仕事は医師の業務軽減が目的ですから、医師業務のサポート以外は出来ないことになっています。具体的には以下の業務が例示されています。ただし、医療法上の「医師の業務」の補助ですから、医師の指示の下に行うという前提が付いています。
1) 診断書等の文書作成補助
  いわゆる下書きです。医師は下書きを確認・修正し、診断書を完成させま
  す。
2) 診療記録への代行入力
  診察室等で医師と患者のやりとりを聞きながら、必要事項を入力します。
  ここでも、最終的には医師が確認・修正し、正式な記録となります。
3) 医療の向上に資する事務作業
   具体的には、診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、
  教育や研修・カンファレンスのための準備作業等、と記載されています。
4) 入院時の案内等の病棟における患者対応及び行政上の業務
   具体的には、救急医療システムヘ入力、感染症サーベイランス事業に係
   る入力等、と記載されています。

実際医師事務作業補助者を導入すると、その効果は絶大です。当初、「事務に診断書の下書きなんて出来ない」と否定的であった医師も、時間が経過すると利用するようになり、医師からも直接「助かる」とか「ありがとう」と言われることも出て来ます。病院の事務職で医師から業務のことでありがとうと言われるケースは殆ど無いので、スタッフからはこの職種になって良かったと言われます。

私は3つの病院で医師事務作業補助者の部署を立ち上げて来ました。どこでも医師の疑問や抵抗からはじまります。しかし、実際に運用が始まり、診断書の下書きなどが始まると、その利用価値を認識しだします。私の経験でも院内全体で発行する診断書等の8割までフォローしたことがありました。もう医師事務作業補助者無しでは仕事が出来ないという状況になります。こうなると医師事務作業補助者の人事異動まで、医師から注文が付いたりしました。

この非常に有難い医師事務作業補助者は、配置することで診療報酬の対象になります。しかしながら、すべての病院に共通して同じように適応されるのではなく、その病院の機能や取得している基準により診療報酬上の配置人数や診療報酬の点数が定められ、点数で言えば、16種類、算定点数も1050点~260点のランクがあります。この点数は入院初日だけに算定出来る点数なので、新入院が多いほど採算性が高くなります。逆に新入院が少ないと配置しても持ち出しになります。

こんな医師にとってメリットの多い職種ですが、配置出来る病院、配置出来ない病院があるということになります。実は、この医師事務作業補助者ですが、患者さまにとってもメリットがあります。上記の作業内容を見ていただくと分かると思いますが、診断書の作成期間が短くなるとか、代行入力ではカルテ入力に追われる医師は患者さまに集中し易くなります。また、医療の質向上のデータ整理はどの病院でも必要なことです。こう考えると開業医にも必要な職種と言えます。

医師事務作業者を有効に活用することが医師の業務軽減をさらに進めることが出来ます。また、医師の業務軽減が進むことで、病院職員全員がその恩恵を受けます。この取り組みを進めることを期待すると共に、この医師事務作業補助者の配置が病院の都合で無く、すべての医師や患者さまにとって有効に配置されるような制度設計を期待したいと思います。
(TOP画像はCanvaの画像を加工)
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