「賞味期限10分間」の至極の味 中井春風堂

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「吉野葛」といえば、谷崎潤一郎の代表的な作品のタイトルにもなっています。小説は旅を続ける作家の「私」と、同行した友人の「津村」が吉野の神秘的な風景に惹きつけられるように、互いに亡き母への思いを募らせていくといった内容で、吉野に伝わる伝説や伝統的な食事が登場して吉野が育んできた歴史と文化の奥深さを感じることができます。

 「吉野葛」は厳冬の時期に吉野地方の山野に自生する葛の根を砕いて、吉野川の清流を使った「吉野晒(よしのさらし)」という吉野地方独自の水晒し製法で精製された滋養分に富む純良で潔白のデンプンで吉野の伝統的な食材です。吉野の葛には2種類あって葛の根のデンプンだけを使ったものを「吉野本葛」、葛の根のデンプンが50%以上で、残りはサツマイモなどのデンプンを混ぜたものを「吉野葛」と呼んでいます。

 「吉野本葛」を使った「葛餅」と「葛切り」を楽しめるのが中井春風堂。ここでは店主の中井さんが目の前で作り方を実演してくれます。メニューは「本葛餅」と「本葛切り」も2種類のみ。「吉野本葛」の美味しさを味わってもらうために、香りの強い他のメニューは提供していないというこだわりです。
 まず「葛」という植物について、そして「吉野本葛」と「吉野葛」の違いについて写真付きのパネルを使った説明の後に実演を披露してくれます。「本葛餅」と「本葛切り」の材料は葛の粉と水だけです。「本葛餅」は一晩、水になじませて水を吸いやすくなった葛の粉を鍋に入れて、火を通すと、白い葛の粉が透明になっていきます。弾力が出てきたら鍋から出して切り分けます。「本葛切り」は水で溶いた葛の粉を湯煎で固めて、最後にバットごとお湯に漬けると、葛の粉が白から透明になります。冷えると白く濁ってしまうとのことで、お湯の中でパットから外して、切り分けます。鍋から出すタイミング、パットから外すタイミングはまさに一瞬の神業で、培われた
職人の技を実感することができます。


 出来上がった「本葛餅」と「本葛切り」は店内に併設しているイートインのコーナーで食べることができます。好みで黒蜜ときな粉をつけて食べることができます。「本葛餅」と「本葛切り」のもちもち感と黒蜜、きな粉が絶妙にマッチして至極の味わいを楽しめます


中井春風堂の「本葛餅」と「本葛切り」はなんと「賞味期限10分間」。持ち帰り不可でその場でないと食べることができません。「本葛餅」と「本葛切り」の味はもちろん、店主の明快でわかりやすい説明を交えた実演は食べ応え、聞き応え抜群で吉野では外すことができない立ち寄りスポットです。お店の場所は世界遺産に登録されている修験道の総本山、金峯山寺から徒歩でわずか2分。吉野でないと食べることができない、吉野の自然が育んだ味覚をぜひ味わってみてださい。


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