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答案の出来は、設問の読み方で6割方決まる


司法試験の公法系第二問(行政法)では、多くの方が「時間制限」に悩みます。

その原因は、どこにあるのでしょうか。

1つは知識不足。

もう1つは、演習不足。

書くのが遅いというのは、あまり大きな要因でないと思います。

筆力というよりも記憶喚起や思考整理に時間がかかっていることがほとんどだからです。


ところで、「時間制限」の壁をクリアできるかどうかは、「『ある一部分』を読んで何を考えるか」を見ればだいたいわかります。

今回のテーマである「5分でわかるあなたの合格基礎力」とは、このことです。


設問を読んで何を考えるか?


設問を読んで何を考えるか、がここでの問題です。

当たり前すぎるのですが、ここで考えるべきポイントを絞り切れていないから、長い問題文や複雑な議事録、参考条文に振り回されてしまうのです。


例えば、平成30年の公法系第二問の設問を見てみましょう。

この設問を読んで最初に整理しないといけないのは、当該事例の主たる事実関係です。

〔設問1〕

 B市長が本件申請に対して本件許可処分を行い、D及びEが本件許可処分の取消しを求めて取消訴訟を提起した場合について、以下の点を検討しなさい。


①「B市長が本件申請に対して本件許可処分を行った」、②「D及びEが本件許可処分の取消しを求める取消訴訟した」ことから登場人物や大まかな法律関係がわかります。

また、①から「本件申請や本件許可処分とはどういうものなのか?」「その法的根拠(おそらく資料)は何か?」が気になるはずです。とすれば、自ずと次に探すべき情報は、わかります。

「本件申請等の内容(→問題文)」

「その法的根拠(→関係法令の中に紛れている条文)」

を見つければいいのです。

また、②からは、取消訴訟がからんでいることから「その訴訟要件」「本案要件」が問われるのかな?と推測できます。なお、取消訴訟の訴訟要件は行訴法を見ますね。そして、本案要件は、主に資料中の条文で与えられるでしょう。


設問中の柱書を読んだだけで、かなり書くべきことの枠組みは明らかになったと思います。

具体的に設問を読みましょう。


(1) D及びEは、上記取消訴訟の原告適格があるとして、それぞれどのような主張を行うと考えられるか。また、これらの主張は認められるか。B市が行う反論を踏まえて、検討しなさい。


まずは(1)。

「D・Eの取消訴訟上の原告適格」がテーマです。言われなくても、問題になり得ることはわかっていなければいけませんね。この設問は、検討対象を限定してくれているだけです。

そして、書くことは「D・Eそれぞれについて」「その主張」と「その成否」です。

ここで意識すべきなのは、「主張」と「成否」の区別です。

前者は検討すべきDないしEの具体的主張です。後者はそれに対する法的評価ですから、条文から導ける規範に照らして検討する必要があります。

前者は、DないしEの言い分を聞く必要があるので問題文や議事録を読まないといけません。闇雲に読まず、必要な情報を探します。後者は、無論、行訴法9条1項2項です。条文を引くまでもなく書けるでしょう。

ここまでの話で設問1(1) でやるべきことは、固まりました。


ここでB市の反論です。

反論を苦手とする人が意外と多いのですが、そういう人は、なぜB市が反論するのか考えてみましょう。

それは、D・Eの原告適格を否定するためです。

では、どうしたら原告適格を否定されるのでしょうか。

そうです。要件を満たさないときです。

1つでも要件を満たさなければB市の目標は達成ですから、ポイントを絞って要件不充足を主張しましょう、となるわけです。


続いて、(2)。


(2) 仮に、Eが上記取消訴訟を適法に提起できるとした場合、Eは、本件許可処分が違法であるとして、どのような主張を行うと考えられるか。また、これに対してB市はどのような反論をすべきか、検討しなさい。


少し受験テクニック的な話をすると、「Eが・・・適法に提起できる」という前提で問題が続く場合、(1)のEの原告適格も認められるとして結論的には問題ないと思われます。あり得ない結論を前提として設問が作られることは考えにくいからです。


さて、(2)は、本件許可処分が違法であるとするEの主張を書くように言われています。

「本件許可処分の法的根拠は資料に挙げられる条文だろう」という予測は既にしています。

そして、本件許可処分が違法であるという主張なので、数ある条文の中からそれを基礎づける「要件」を探し出そうと考えればいいのです。この程度まで整理していないと、問題文や議事録の誘導に振り回されてしまうかもしれません。


B市の反論は、上記同様、要件を基準に考えます。

Eが違法を主張するなら、B市は適法を根拠づける要件主張をするべきだと考えられるでしょう。


続いて設問2。


〔設問2〕

 B市長が本件申請に対して本件不許可処分を行い、Aが本件不許可処分の取り消しを求めて取消訴訟を提起した場合、Aは、本件不許可処分が違法であるとして、どのような主張を行うと考えられるか。また、これに対してB市は、どのような反論をすべきか、検討しなさい。


まずは、設問1と同様に事実関係等を把握します。

「B市長が本件申請に対して本件不許可処分を行った」

「Aが本件不許可処分に対して取消訴訟を提起した」

というところが問題です。

頭に思い描く道筋は、設問1と同じです。処分の内容・根拠条文を整理した上、問いの内容に進みましょう。


〔設問2〕

 B市長が本件申請に対して本件不許可処分を行い、Aが本件不許可処分の取り消しを求めて取消訴訟を提起した場合、Aは、本件不許可処分が違法であるとして、どのような主張を行うと考えられるか。また、これに対してB市は、どのような反論をすべきか、検討しなさい。


設問1(2)と問いの構造は同じですね。

本件不許可処分の根拠条文に照らし、「要件を基準にして」、本件不許可処分の適法違法の主張を戦わせましょう。

このとき、問題文や議事録は「何を書けばいいのか?」を一から教えるものではありません。
条文・判例だけでは埋められない論述の隙間を埋めてくれるものであり、答案構造の細部を詰めるヒントを与えてくれるものに過ぎないのです。


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