ビジネスマンならフェルミ推定はできるべき

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ビジネス・マーケティング
みなさんはフェルミ推定というものをご存知でしょうか?
あまり馴染みのない方も多いかもしれません。
これは、「日本に郵便ポストがいくつあるか?」という一見しただけでは匙を投げたくなる問題を、持てる情報や知識のみで概算をするものです。
難しそうに聞こえて少し抵抗を感じるかもしれませんが、私はこれがビジネスにおいて非常に役に立つと確信しています。

なのでこの記事では、初めての方にフェルミ推定がどんなものなのかを紹介していきたいと思います。

① フェルミ推定とは

そもそもフェルミ推定とは、
一見正確な数値がすぐにわからない時などに、入手しやすい情報等をもとに論理的に推論し、概算値を求めること。イタリア出身の物理学者、エンリコ・フェルミがその名前の由来。(グロービス経営大学院MBA用語集「フェルミ推定」参照)
フェルミは原子爆弾の爆発力の実験で、爆風で吹き飛ばされた紙の距離から爆発力を瞬時に概算した(且つその概算精度が極めて高いものだった)というエピソードがあります。
どんな場面で使用するか:多くは、ケース面接という特殊な面接の対策の一環として触れたことのある方が多いと思います。新卒の就職活動や転職活動でコンサルティングファームを目指した方には馴染みがある一方で、それ以外の方にはほとんど馴染みのないものではないかと思います。

具体的にはどんなものかというと、例えば「日本にマンホールがいくつあるか?」といった知らなきゃ答えられないだろうというような数字に関する問題などがあります。

もう少し、フェルミ推定の有益性を理解しやすいように別の例を用いるために「水道から1日中水を流し続けたらどのくらいの水を無駄にするか?」という問題を扱いたいと思います。みなさんは、キッチンの水を1日中(24時間)流し続けたらどのくらいの量の水になるか想像できますでしょうか?大量の水であることはわかっても、数値として出すのは難しいと思うかもしれませんが、これはさほど難しくないです。
考え方としては、1秒に何mlくらいの水が出るかがわかればいいです。だいたい1秒でマグカップが一杯になるくらいだと思うので、250mlとしておきましょう。あとは1日が何秒かが計算できればいいわけです。
つまり
60(秒)×60(分)×24(時間)=86,400(秒)
250(ml)/秒×86,400(秒)=21,600,000(ml)=21,600(L)
という計算になります。
数値は出ましたが、さらにイメージしやすいようにしていきましょう。

そこで、25mプールで換算するとどのくらいなのかを計算してみるとします。
ただし、私は25mプールの体積を知っているわけではありません。なので、これも凡そで計算してみたいと思います。
縦は25m(2,500cm)ですが、横は25mの半分くらいの約10m(1,000cm)で、深さは170cmの大人なら胸元くらいまでの深さがあると想定すると約150cm。これを計算式に当てはめると
2,500(cm)×1,000(cm)×150(cm)=375,000,000(cm3)
 1L=1,000cm3なので、プールの水は375,000Lということになります。
つまり、キッチンの水を1日中流し続けても25mプールの水は半分にも満たないということになります。
こう考えると、「あれ、意外とそんなものなんだ」という気にもあるかもしれませんが、いずれにしても計算をする前よりもはるかに「無駄にした水の量」に対するイメージは具体的になったと思います。ここでもう一つ重要なのは、この計算結果が正確なものではなくあくまで「概算である」ということです。しかしながら、具体的なイメージを持つという目的であれば一の位まで正しいかどうかはあまり重要ではありません。だからこそ、自分がわかる情報の中でできる限り正解に近そうな数字を選びつつ、分からない数値は凡その概算に落とし込むことが重要です。

② フェルミ推定は実際のビジネスの役に立つ

漠然とした印象に具体的な基準を与えてくれる
上記のように、漠然とした物事をより具体的にイメージするのにフェルミ推定は非常に役に立ちます。それは「(値段が)高いor安い」もそうですし「儲かるor儲からない」「でかいビジネスor小さいビジネス」といったビジネスの現場でよく出てくるような形容詞に、基準や具体的なイメージを与えてくれます。「この商品お安いですよ」と一口に言っても、「安い」の基準は人によって違いますし、その違いを明らかにしないまま購入することにしてしまうと想定よりも断然高かったということにもなりかねません。そういった認識のズレによるトラブルなどを防ぐためにも、具体的な数字は欠かせないツールです。

数字を基準にすることで分析ができるようになる
最近では欧米の経営手法が非常に多く取り入れられ、KPIといったビジネス活動の色々な場面や目標を数値で設定している場合が多いです。これがなぜ有益なのかと言うと、理由は二つあると考えています。一つは、状況を数値で認識することで「良いor悪い」を感覚ではなく数値で理解ができること。もう一つは、仮に数値的に「悪く」なった時に、ではいつが良かったのか?良かった時にはどの数値が良かったのか、を遡って振り返ることそしてその原因究明ができることです。
別の例で言うと、私はこの歳でポケモンにハマりました。子供のころもポケモンは好きだったのですが、今とは少し楽しみ方が違うと思います。昔は自分なりに好きなポケモンやかっこいいポケモンを育ててストーリーを楽しんでいましたが、今はポケモンを数値(ステータス)で見ることでどのようなポケモンを育てれば強いパーティができるかを考えることにハマっています。子供の時も、強いポケモンと弱いポケモンの違いは漠然とは意識していましたが、その理由にまでは考えが及んでいませんでした。しかし今は、どのポケモンが強いのか?なぜ強いのか?何が強いのか?を数値で管理しています。完全に大人の楽しみ方だな…としみじみしました。しかしながら、「強いor弱い」という曖昧な形容詞を数値で具体的に理解しているという点ではフェルミ推定と一致しています。

知らないビジネスについても分析/理解が速くなる
フェルミ推定ができるようになるもう一つの効用として、ビジネスの分析がしやすくなります。例えば上記のポケモンのように「強い(ポケモン)or弱い(ポケモン」を数値で理解するのと同じように、「上手くいっているビジネスor苦しいビジネス」というものを数値(決算資料など)から具体的且つ基準を明確にして分析することもできます。そうでないと、CM広告をたくさん出しているからという理由で「この会社はうまくいっているんだな」といった間違った理解をしてしまうことにも繋がりかねません。また、自分が働いている業界のみならず他の業界の情報も具体的な数値(売上規模や利益率など)を比較したりすることで、その業界の特徴が見えてきます。そもそもなぜ、コンサル業界の採用面接でフェルミ推定及びケース面接が採用されているのか?それは、そもそもコンサル業界が馴染みのないビジネスのことでも日々プロフェッショナルの目線で分析・理解しなければいけない仕事だからだと考えています。その訓練のためにも、やはりフェルミ推定は有益なものだと言えると思います。

計算や判断が速くなる
これは「ビジネスを数値で分析する」に少し似ていますが、例えば自分の家の近くのパン屋さんの売上をフェルミ推定してみたとしましょう。その概算結果が「20万円/日」だったとします。この数字が「大きいor小さい」「良いor悪い」というのはもしかしたら飲食業に疎い人にはイメージがつきづらいかもしれません。しかし、その他色々な飲食店の売上をフェルミ推定していくと20万円という数字は「そんなに悪くない」ということがわかってくると思います。なぜならば、高単価でない飲食店(カフェなど)では10万円ちょっと~30万円ほどが平均的なレンジで、それと比較して20万円というのは売上規模だけで見れば悪くない(もちろん従業員の人数や立地、店舗の広さなどにもよりますが)という感覚を持つことができます。上場企業であれば、決算資料を公表しているのでフェルミ推定は必要ないかもしれませんが、町の飲食店ですと決算資料など公表することはせいぜい借り入れをしている銀行に対してくらいだと思うので、だからこそコンサルや時に経営に関わる人たちは目に見えるデータからそういった店の経営状況を日々見破っているのでしょう。

③ 具体的にどんな場面で使用するか

ビジネスにおいてはフェルミ推定が活用できる場面は数限りなく多いです。その中でも特に「見込み」を提示しなければいけない場面で役に立ちます。
「こんなビジネスを始めたい⇒見込みの売上は?」
「クラウドファンディングで目標金額を設定したい⇒かかる見込み費用は?」
「新しい材料・原料を購入したい⇒見込み購入数量は?」
「部の予算を策定してほしい⇒現段階での見込み売上は?」など
将来のことは誰にもわかりませんが、せめて「(最高/最低でも)このくらい」という数字が分かるだけで次の展開に進めたり、相手からの何かしらの反応を得られることがあります。逆にそれによって、「この見込み売上では融資できない」という反応が返ってきたとしたらビジネスプランを修正しないといけません。いずれにしても、何が良いかというと具体的な数的イメージを共有することで話が前進するのです。
逆に言えば、フェルミ推定ができないと「まだわからないです」という提示しかできず話が一向に進みません。
(私もそういった担当者を相手にしてイライラしたことが何度かあります…)

まとめ

今回はフェルミ推定がどのようなものなのか、そしてその効用について紹介していきました。多くのビジネス本や経営者が口をそろえて言うのは、「ビジネスは数字である」ということです。経営をしたことがない方にはいまいちピンとこないかもしれませんが、個人的には「状況判断や原因究明、目標設定、ビジネスのどんな場面においても数字で考えろ」と理解しています。しかしながら、時として数値化することが難しかったり情報不足だったりすることもあるかもしれませんが、そもそもデータが万全に揃っているというケースも少ないです。例えて言うなら、フロントガラスがめちゃくちゃ曇った状態で運転をするようなものです。だからこそ、「見えないから運転しない」の状態を脱し、少しでも見えやすくすることでより安全により楽しい運転をフェルミ推定は実現してくれるものだと私は考えています。
フェルミ推定を活用し、ビジネスマンの平均的な数字感覚が上がることによって世界のビジネス現場に建設的な議論がさらに増えることを願っています。



以上

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