システム運用とマネーマネジメント

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マネー・副業
システムトレードの実行に際し、重要な決定項目があります。それは、システムをどのように運用するか、ということです。 
これは、一般にはマネーマネジメントという言葉で表現されます。

マネーマネジメントと言うと、資金の分配やリスクの取り方、建て玉法や資産管理など、多岐多様に渡り、とても取っ付き難い印象を持たれるかと思います。 
しかし、その多くの部分は、トレーディングシステムと密接に関係し、それ故に、システマティックに考えていくことができます。

まず最初に、システムを運用するということについて考えてみましょう。

一口にシステムを運用すると言いましても、その方法には様々なものがあります。今、100万円の資金があるとして、1株500円で売買単位が100株の株式をトレードする事を考えます。 

手数料を考慮しなければ、当初資金で20単位、2,000株の株式を買い付けることができます。また、信用取引を用いれば、60単位、6,000株の買い付けも可能です。 

更には、100万円で20単位2,000株を買い、それを担保に信用取引で更に48単位4,800株の、計6,800株を買い付けることも不可能ではありません(保証金代用掛目80%の場合)。 

これらはいわゆるレバレッジを効かせた取引ということになります。もちろん、レバレッジは最大取引額の範囲内なら、何倍にでも設定できます。 

現金担保の信用取引なら、最大レバレッジは約3倍、証券担保の2階建てなら3.4倍です。ただし、これは運用資金が全額自己資金の場合です。 
もしも、自己資金が10万円しかなく、90万円をどこかから借りて計100万円を運用資金に充てたなら、レバレッジは上記の更に10倍になってしまいます。 

このことは意外と見落とされがちなのではないかと思います。厳しい見方をすると、その90万円が自分のお金だとしても、それが生活資金であるならば、それは借入金と同じです。 

すなわち、近い将来必要になる資金を、投資という長期的な資金に充当するわけですから、その資金はいずれどこかから調達しなければなりません。 
そのために借金をしてしまうとすれば、それは投資資金を借金したことと何ら変わりはありません。1ヶ月先のクレジット返済にツケを回しても、同じ事です。 

そのように考えると、私たちは意識しない内に高レバレッジの取引を行なってしまっているのかもしれません。

さて、レバレッジは何も自己資金を超えた場合だけに適用されるのではありません。運用資金が自己資金を下回る場合、それは例えばレバレッジ0.5倍などと表現する事ができます。 
リスク低減のため、運用資金を自己資金の1/10に制限する場合などは、0.1倍のレバレッジで運用すると考えるわけです。

このような考え方は、システムトレードにとって極めて有効です。すなわち、レバレッジという指標を取り入れる事によって、マネーマネジメントという機能をトレーディングシステムに統合する事が可能となるからです。 

レバレッジを変更すると、当然のことながら資産推移は大きく異なってきます。1倍を上回るレバレッジを掛けた場合は、資産推移が増幅され、1倍を下回るレバレッジを掛けた場合は、資産推移が圧縮されます。

運用株数を一定に保った場合(単株運用)は、その度合いはレバレッジに比例しますが、複利運用などの場合は、レバレッジによる資産増減度合いもレバレッジによって異なってくる事になります。 

あるトレーディングシステムを運用するに当たって、どのような運用方法を採れば、そのシステムにおけるリスクを押さえリターンを高めることができるのかは、重大な関心事です。 

単にレバレッジを高めて複利運用を行っただけでは、リターンと共にリスクも増大してしまい、安定した運用は困難です。

個々のシステムには、最適なパラメータが存在すると共に、最適な運用方法が存在します。資産カーブのロバスト性が低いシステムにおいて、高レバレッジ運用を行えば、それは破産への最短距離となりますし、ロバスト性が十分に大きいシステムにおいて、低レバレッジ運用を行えば、非常に効率の悪い運用となります。 

このように、マネーマネジメント(運用方法)とは本来、一律に決定するものではなく、システムの特性に合わせて決定すべきものだと考えます。 
そのような場合に、様々なシステム運用のパターンを実際にシミュレートできたなら、どんなにか有用でしょう。

過去に遡って、様々な方法でシステム運用を開始した場合の直近資産残高を知ることができれば、そのシステムではどんな運用方法が適しているかを知ることができます。 
また、システムに運用方法を設定しておけば、その後のシステム運用において、売買タイミングとその時の建て玉数を知ることができます。 

さて、システム運用方法には、運用形態やレバレッジ設定の他に、どのような基準(複利か単利か単株か)で資金を投入するかという項目があります。 
運用形態は、そのシステムを買い建てのみで運用するのか、売り建てのみで運用するのか、あるいはドテン運用するのか、ということです。 

例えば、そのシステムにおいて、売り建て時の成績が芳しくなかったら、買いシステムのみで運用した方が良いかもしれません。その場合、システム上の売り持ち期間は、実際の運用ではキャッシュポジションということになります。 

また、レバレッジについては前述した通りですが、ここで一つ注意すべき点があります。それは、資金分割と1倍未満のレバレッジ設定とは、本質的には異なるということです。 
上の説明では、簡単のため、資金を10分割する代わりにレバレッジを0.1倍に設定するかのような説明をしましたが、厳密にはこれは誤りです。 

資金を分割せずにレバレッジを0.1倍に設定した場合と、資金を10分割してそれに対してレバレッジを1倍に設定した場合とでは、その後の運用による総資金に対する損益は異なってきます。 

例えば、500円の株を200株買い建てて、その後600円で売却した場合、それを複利運用すると、最初の例では次の運用資金は (12+90)/10=10.2万円となりますが、2番目の例では、次の運用資金は12万円となります。トレードを積み重ねていくに従って、両者の差が開いていくことは明らかです。 

このように、資金分割とレバレッジを組み合わせる事によって、様々な運用パターンを演出する事ができます。更には、投資資金を複利運用するのか、単利運用するのか、単株運用するのかで、その後の資産推移は大きく異なってきます。 

念のためにそれらを確認しておきますと、複利運用とは、運用資金を次回の運用に全額再投入するということです。
単利運用とは、運用資金を常に定額に保って運用を続けるということです。すなわち、運用毎に利益が出たら回収し、損失が出たら補填することになります。 
また、単株運用とは、常に一定株数を売買することです。したがって、運用資金は株価水準によって大きく異なってきます。 

資金を管理して運用の度に出し入れするのは結構大変であり、通常は複利運用に近い運用パターンが多いように思います。
ただし、株式の売買金額はどうしても離散的になりますので、よほど大きな資金を投入しない限り、単株運用と複利運用の複合パターンになるでしょう。 

しかし、例えば売買単位は不変ではなく時代と共に変わる場合があったりすることなどから、システム的にそれらを厳密に使い分ける事は不可能です。
そこで通常は、複利および単利運用においては、売買単位を考慮せずに資産推移を求める事になります。それは理想値には違いないのですが、現実とそう大きな違いは生じないものと考えます。 

また、運用パターンなどの違いによって売買シグナルが異なる事のないよう、売買シグナルの算出では資産推移を参照するべきではありません。 
これは、手数料や金利についても言えることです。それらもまた証券会社や取引価格、時代などによって異なるものであり、それをシステムに組み込んだ場合、シグナルが影響を受けないように注意する必要があります。

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