公平な比較

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トレーディングシステムの性能を示す場合に、チャート上で同期間のトレード元の株価推移を併載することがあります。それによって、システムの性能がベンチマーク(トレード対象銘柄の株価推移)と比較してどの程度であるかを判断することができます。

例えば、ある株式をトレード対象としたシステムがあったとして、そのシステムは株価の推移に合わせてタイミングよく売買を繰り返すものであるとします。
簡単のため、それは買いのみのシステムであるとすると、株価の下落局面ではトレードを休止し、上昇局面でのみトレードを行なうことが理想です。

その場合、トレードを休止している間は資産残高に変化はなく、株価上昇局面に入ってトレードを再開した時に、資産が増加していくことになります。
もしも、株価が上昇と下降とを繰り返して、システムがタイミングよく上昇局面のみを拾うとしたら、資産残高の推移(資産カーブ)は株価推移を上回る可能性が高いということになります。

実際には、株価上昇の確認のためにトレード開始に若干の遅れが生じ、株価下落の確認のためにトレード手仕舞いに若干の遅れが生じます。
いわゆる、「頭と尻尾はくれてやれ」というやつです。

それでも、株価推移に大きな下落期間が存在する場合は、資産カーブの推移が株価推移を上回ることは難しいことではありません。
すなわち、これは「ベンチマークに勝つ」ということに他なりません。

それに加えて、そのシステムで絶対的な収益が得られるとすれば、それはトレーディングシステムに求められる要件を満たすことになります。
もちろん、全ての上場銘柄や、先物、為替、商品などに対して、必ず上記の2つの条件が満たされれば言うことはありませんが、単一のシステムだけではそうはいかないでしょう。

そこで、1銘柄当たり複数のシステムを設計すれば、その銘柄を対象としたいずれかのシステムでベンチマークに勝ち、かつ絶対収益を上げる可能性が高くなります。
そのようなシステム群から、様々な銘柄に対応したシステムを選択し、運用することで、期待値の高いトレードが可能になります。

さて、そのようなシステムを選択するに当たり、ベンチマークに勝つためには、資産カーブの推移が株価推移を上回っている必要があります。
また、株価推移がマイナスであっても、絶対収益がプラスになっている必要があります。

ここで、株価推移との比較という条件を適用したとき、株価推移と資産推移の計算方法をきっちりと揃えてやる必要が生じてきます。
これまでに、何度か株価推移と資産推移とを併載したことがあったかもしれませんが、実は両者の計算方法は異なっていたのです。

資産推移はトレード毎の損益を単純に積み足したものであり、これは単株運用に相当します。すなわち、トレード開始時の株価水準がいくらであろうと、単純に1株当たりの変動幅のみで損益を計算しているわけです。

ところが、株価が4,000円の時の100円と、8,000円の時の100円とでは、損益は同じでも損益率は倍も違ってしまいます。そこで、損益率を積み重ねる単利運用という方法が有効となります。
ここで、株価推移も同じく単利運用であれば問題はありません。両者を同じ土俵で比較することができます。

しかし、株価推移は、実は複利運用であることが分かっています。日々の株価推移を、毎日大引けに手数料無料で売買していると考えれば、容易に理解できます。
すなわち、株価の増減に合わせて一旦現金化した時の資金残高が変化し、その資金と同額を使って株式を買戻すわけです。

ようするに、これは日々複利運用していることと同じことになります。株価が毎日1%ずつ増加した場合、5日後には株価は5日前の5%増ではなく、5.1%増(=1.01^5-1)になります。
株価推移というのは、トレード開始日以降、毎日大引けで売ると同時に大引けで買戻すというトレードを繰り返していることと等価です。そして、そのトレードは複利運用なのです。

さて、株価推移は複利運用ですが、資産カーブは単株運用もしくは単利運用です。これでは両者を同列に扱い、比較することはできません。
そこで、資産カーブの推移を複利運用の結果として表してみます。それには、累積損益率を用います。

累積損益率は、トレード毎の損益率を積算して行ったもので、n回目のトレードの損益率をxn(小数表記)とした時に、

 (1+x1)(1+x2)・・・・・・(1+xn)=Π(1+xn) 

となります。
株価推移の場合は、nが毎日1ずつ増え、積算項の数もまた1つずつ増えていくわけです。

このようにして、両者を複利計算して比較することにより、システムとベンチマークとの公平な比較が実現します。
それは多くの場合、システムにとって単利運用の時よりも資産残高が上昇することになります。

なぜなら、株価下落時にトレードを休止し、上昇時にトレードを再開するのであれば、トレード再開時にはトレード停止時の資金額で、より多くの株式を購入することができるからです。
もちろん、その時のトレードが勝ちトレードになる必要がありますが、もし勝ち続けることができたならば、資産の増加が加速されることになります。

複利運用の前提は、運用資金額を調整しないということです。あるだけの資金を使ってトレードするわけですから、言い方を変えれば、マネーマネジメントを行なわない方法である、とも言えます。
これは、非常に危険な考え方でもあります。複利運用を行う場合は、そのことを十分理解した上で実行する必要があるでしょう。

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