KFシステムクリエイター取扱説明書(21)

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マネー・副業
8.システムの運用

(1)運用条件の設定

KFシステムクリエイターでは、作成したシステムを様々な条件で運用することが可能です。最初に運用条件を設定しておくことで、以後、システムを日々更新する都度、売買シグナルが発せられ、それに従って機械的にトレードを進めることが出来ます。

最初に決定すべき基本的な条件は、次の5つです。以下、順を追って説明いたします。なお、各項目の概要につきましては、「2.システムの概要(4)システムのインプット」をご参照ください。


①運用システムA

システムをドテン運用とするか、買いのみの運用とするか、売りのみの運用とするかを決定します。

システム運用銘柄が貸借銘柄ならばドテン運用が可能ですが、信用取引口座を開設していなければなりません。証券会社によっては、貸借銘柄以外でも一般信用取引による空売りが可能となっています。
ドテン運用は、システムトレードによる収益機会を最大限得ることが出来ますが、その分リスクも増大します。

現物取引の場合は、買いのみの運用となります。信用取引口座を開設していない場合や、空売りを行いたくない場合は、これに該当します。また、運用予定システムにおける売りの成績が芳しくない場合も、あえて買いのみで運用することがあるでしょう。
買い運用は、ドテン運用と比べると一般に収益機会が半減しますが、その分リスクも低減されます。

売りのみの運用はかなり特殊な運用方法になりますが、例えば現物株を長期保有していて、ヘッジ用として売りシステムを運用する場合が考えられます。
なお、現物株と同株数を運用した場合はヘッジ、現物株の2倍の株数を運用した場合は実質的にドテン運用となります。

サマリーページの運用システムA欄を変更すると、その反対システム(例えば買いに対して売り)の性能指標はクリアされ、各チャートもその運用システムのものに変更されます。ただし、ドテンシステムの項目には次図に示すように選択したシステムと同じ内容が表示されます。

運用条件a.png

また、各チャートの表記はドテンとなっているものもありますが、内容は選択したシステムと同じです。例えば次図は、表記上はドテン時価となっていますが、買いシステムの結果を示しています。 
気になる場合は、チャートシートをダブルクリックしてチャート設定メニューを開き、システムを「買い」に設定してみてください。システム名以外同じチャートが表示されます。

運用条件b.png

運用システムを決定する際、チャートを見て判断したい場合は、運用システムA欄を「ドテン」にした状態で、各チャート上をダブルクリックし、チャート設定メニューからシステムを設定して比較検討することができます。 
その結果、例えば売りシステムがうまく機能していないと判断した場合は、買いのみで運用を行うことも考えられます。

ただし、前章でも示しましたが、単独ではほとんど機能していないように見えるシステムでも、逆相関の関係にあるシステムと合成することにより、システム性能が大幅に向上する場合があります。
そのため、深く考えずに例えば売りシステムを除外することは、性能を低下させてしまうのみならず、リスクを増大させてしまう場合もあるので注意が必要です。


②運用形態

システムを単株運用するか、複利運用するか、単利運用するかを決定します。投資金額だけでなく、システム性能や運用方法等を総合的に判断して決定する必要があります。
なお、以下では信用取引を用いたドテン運用を前提に説明いたします。

複利運用は、実際の運用に当たって最も一般的な方法です。最初に設定した資金枠の範囲内で目一杯玉を建て、勝てばその分を増額し、負ければその分を減額しながら、目一杯のトレードを継続します。
複利運用の最大の特長は、勝ちが続けば資金の増加速度が大きいことですが、一方、負けが込むと資金が一気に減少してしまいます。

ただし、意外かもしれませんが、トレード頻度が比較的多ければ、破綻の危険性はそれほど高くありません。何故なら、負けが込んで資金が減少すればそれだけ建てられる玉数が減り、結果的に損失額も減少するからです。
複利運用の最大のデメリットは、資金が大きく減少した場合に、減少前の状態に戻すのにより多くの時間を要することです。

複利運用においては、特に撤退基準を設けない場合、資金が委託保証金額(通常は30万円)を割り込まない限りは、退場することはありません。ただし、その前に保証金維持率が許容値を割り込んでしまった場合は、システムを一旦停止して建玉を返済する必要があります。

単株運用は、一定株数を常に売買する運用方法です。この方法のメリットは、とにかくトレードが簡単なことです。複数の銘柄を並行して運用する場合、単純に各々決められた株数を売買すればよいだけです。
ただし、この方法を続けていくと、次第に各銘柄の運用資金にアンバランスが生じてくるため、定期的にリバランスを行う必要があります。

単一のシステムで考えた場合、単株運用には大きな問題があります。それは、運用資金が売買必要額を下回ってしまうと、システム運用を継続できなくなる、ということです。
たとえ運用資金が当初よりも増加していたとしても、株価の上昇がそれを上回れば、運用資金は不足してしまいます。

それを避けるためには、信用取引を利用するなどして、資金枠に余裕を持たせる必要があります。当然、資金枠を目一杯使うことは避けるべきで、運用開始時に保証金維持率100%以内で購入できる建玉数を設定すべきでしょう。
そうすれば、資金が半分以下になっても、あるいは株価が2倍以上になっても、運用を維持できる可能性が高まります。

単株運用のもう一つの問題は、株価水準が当初よりも低くなった場合に、運用効率が低下してしまうことです。そのため、通常は定期的にリバランスを行うことになりますが、そうなるともはや単株運用とは呼べなくなってしまうでしょう。

単利運用は、運用資金を一定額に保ちながら、その枠内で運用を継続する方法です。利益が出れば出金し、損失が出れば入金(補填)します。
ただし、これはあくまで仮想的な行為であり、現実には実運用資金が一定になるように売買をコントロールします。利益分は予め設定した余剰資金枠に移し、損失分は余剰資金枠から借り入れます。

そのため、システムとしては想定元本目一杯の売買として運用しますが、実際にはそれ以外に余剰資金枠を必要とします。
余剰資金枠は、信用取引を用いて確保してもよいですし、リアルマネーとして保有しても構いません。

単利運用の最大のメリットは、複利運用のように負けが込んでも、あるいは単株運用のように株価水準が低下しても、運用開始時と同じ効率で運用を継続できることです。
一方、損失分を余剰資金で穴埋めしていくわけですから、負けが込むと資金が急激に減少して、破綻してしまう可能性があります。どこかでストップをかけないと、元本を全て飛ばしてしまうかもしれません。

どの運用形態を採択するかについては、通常は運用システムによって判断します。運用するシステムが比較的低リスクである場合は、複利運用が適しています。一方、中程度以上のリスクである場合は、単利運用が適しています。それらは、システムの平均リターンと複利リターンの大きさを比較しても、ある程度の判断が可能です。

なお、KFシステムクリエイターでは、運用開始日を自由に設定して運用システムの評価を行うことが出来ます。そのため、運用開始日を充分程度以前に設定して、運用形態を「複利」や「単利」に変更し、各々の運用後元利計等を比較すれば、簡単に判定することが可能です。


③想定元本

想定元本は、運用開始時の建玉可能数の決定に反映されます。運用形態が「単株」の場合は、運用開始時に想定元本で最大限取得できる株数(建玉数)が、その後のシステム運用の期間中継続します。「単利」の場合は、想定元本に設定された金額が、システム運用の期間中ずっと反映されます。

想定元本はあくまで「想定」であり、実際の投資元本を設定しなければならない、というものではありません。これは、設定するこのシステムにのみ投じられる資金であり、投資元本の一部に過ぎません。
また、運用レバレッジを1よりも大きくすれば、想定元本で購入可能な株数(建玉数)はレバレッジの分だけ増加しますし、1よりも小さければ減少します。

想定元本は、通常、次項で説明する運用レバレッジとセットで考える必要があります。実際にシステムに投入される運用資金は、想定元本×運用レバレッジとなります。
例えば、想定元本が100万円の場合、実際の運用資金は、運用レバレッジが1倍で100万円、2倍で200万円となります。

また、運用資金は取引単位を考慮するかどうかでも違ってきます。取引単位を「未考慮」とした場合は、運用資金は目一杯トレードに利用されますが、「考慮」とした場合は、単元株単位で最大限購入できる建玉数分の資金しか利用されません。そのため、「考慮」においては運用資金枠が目一杯使われることはなく、その分運用成績は低下します。


④運用レバレッジ

運用レバレッジは、システムに想定元本の何倍の資金を投じるかを決定します。例えば、想定元本が100万円でも、運用レバレッジが2倍ならば、システムは200万円の資金で運用されることになります。
ここで注意が必要なのは、同じ運用資金200万円でも、想定元本100万円で運用レバレッジ2倍のシステムと、想定元本200万円で運用レバレッジ1倍のシステムとでは、資金の増減の仕方が異なる、ということです。

次図は、6770アルプスアルの回帰順張り正システムを、2010年1月4日から2020年7月17日まで、10年半ほど複利運用した場合の運用結果を示しています。なお、取引単位は「考慮」としています。
上段が想定元本200万円で運用レバレッジ1倍、下段が想定元本100万円で運用レバレッジ2倍です。

運用条件c.png

運用条件d.png

運用レバレッジ1倍の場合は、運用資金が1,910万円ほど増加しています。一方、運用レバレッジ2倍の場合の増加額は、3,800万円ほどとなっています。 
当初運用資金が同じでも、運用レバレッジが高い方が資金の増加量が大きいことが分かります。

なお、運用レバレッジは大きければ大きいほど良いというものではなく、それが最適レバレッジを超えると運用成績は逆に低下します。
このシステムの場合、最適レバレッジは2.70倍(全期間の場合)となっており、例えばそれを大きく上回るレバレッジ5倍(想定元本40万円)で運用すると、次図に示すように運用資金の増加量はわずか40万円ほどに激減します。

運用条件e.png

逆に、運用レバレッジは1よりも小さく設定することも出来ます。その場合は、期待効率は減少しますが、リスクを低減することが可能です。 
次図は、当初運用資金を200万円として、運用レバレッジを1倍とした場合と0.5倍とした場合との、ドローダウンを比較した結果です。

運用条件f.png

運用条件g.png

運用期間10年半ほどの運用資金の増加量は1330万円弱に低下していますが、全期間のドローダウンは大幅に低減していることが分かります。 
時価累積ドローダウンで比較しますと、例えばドテン運用時の最大ドローダウン率が、-58.66%から-35.39%に23.27%ポイントも改善していることが分かります。

一方、当然のことながら運用レバレッジを1よりも大きくすると、ドローダウンは悪化します。次図は当初運用資金を同じ200万円として、運用レバレッジを2倍とした場合のドローダウンを示していますが、大幅に増大していることが分かります。

運用条件h.png

結局、運用レバレッジを大きくすれば投資効率は上がりますが、その分ドローダウンすなわちリスクは増大します。逆に、リスクを下げたい場合は、運用レバレッジを1よりも小さくすればよいことが分かります。 

例えば、期待効率は大きいがドローダウンもまた大きいシステムを運用したい場合は、あえて運用レバレッジを下げた方が良いかもしれません。
他方、ドローダウンが小さいシステムの場合は、許容できるドローダウンになるまで運用レバレッジを上げて、期待効率を稼ぐ運用方法が考えられます。


⑤取引単位

KFシステムクリエイターでは、システム運用時の取引単位を考慮するかしないかを、設定することが出来ます。
取引単位を考慮する設定にした場合、運用後元利計等の値は単元株単位でトレードを重ねた結果となります。一方、未考慮に設定した場合は、単元株と無関係に運用必要資金額を目一杯使用した結果となります。

この設定により影響を受ける範囲は、システム運用に関わる領域のみであり、一般的な性能指標の値には影響を与えません。当然、売買シグナルにも影響しませんが、取引単位を考慮すると資金不足でトレードが成立しない場合があります。

以下は極端な例ですが、6770アルプスアルを2010年1月4日から2020年7月17日までの10年半ほど、想定元本5万円、運用レバレッジ1倍で複利運用した場合の運用後資産推移を示しています。
上段が取引単位未考慮、下段が取引単位考慮の場合です。

運用条件i.png

運用条件j.png

取引単位未考慮の場合は運用後元利計が558,609円まで増加していますが、取引単位考慮の場合は運用後元利計が65,000円で頭打ちとなっています。
トレードが可能になったのは、2012年後半に株価が500円を割り込んでからで、その後運用資金を増やすも株価上昇に追い付けずにエントリー不可となり、以降一度もトレード出来ていません。

当初運用資金が最低取引価格に対して十分に大きければ、上記のような極端な事例になることはほとんどありませんが、取引単位を考慮した場合、未考慮の場合に対して運用後元利計は低下します。
低下の度合いは、銘柄やシステム性能、運用期間、運用形態、想定元本、運用レバレッジ等によって異なります。

なお、実運用場面では取引単位考慮の設定とすることで、現時点における建玉数を確認することが出来ます。ただし、新規建てやドテンなどのエントリーの場合は、引け後のデータ更新時点では当日終値に基いた運用建玉数を表示しますが、翌日のデータ更新時点で始値に基いた運用建玉数に変更されます。

そのため、大きなギャップを開けて寄り付いた場合などは、両者の運用建玉数に大きな差異が生じることがあります。これは裁量トレードにおいても同様ですが、寄付きの気配情報を見ながら微調整する必要があります。
それでも多少の誤差が生じることは避けられないため、運用建玉数はあくまで参考に留めておくべきでしょう。

一方、システムそのものの性能を確認し、他のシステム等と比較する場合は、取引単位を未考慮とした方が良いでしょう。
システムの運用を開始するまでは取引単位を未考慮に設定し、運用開始以降は考慮に設定することで、より実態に即したシステム作成~運用が可能となります。


運用条件の基本的な設定項目は以上の通りです。

なお、手数料や金利を設定する項目がありますが、これらは通常、システム作成時に参考にします。手数料や金利の設定は各証券会社によって異なっており、しかも、運用資金等によって様々に条件分けされています。
そのため、これらを実際の運用場面でシステムに反映させることは事実上不可能です。

これらの項目は、システム作成時にそのシステムがどの程度の負荷に耐えられるかを検証するために利用します。実際に取引を行う証券会社の手数料や金利等の情報を元に、これらの項目を設定し、性能がどの程度低下するかを確認します。

もしも許容できないほどの低下が認められる場合は、運用資金の見直しや更には証券会社の変更等を考える必要があります。
一般には、運用資金が多いほど手数料率は低下し、システムに与える影響は緩和されます。なお、信用金利については、平均リターンや年率リターンをその金利分×運用レバレッジだけ低下させる作用があります。


(2)運用の開始

全ての運用条件の設定が完了したら、実際に運用を開始することが出来ます。

運用を開始するには、運用開始予定日の前立会日の大引け以降にデータ更新を行い、システムを最新の状態に更新します。
その上で、テスト終了日欄を前述の前立会日に設定すれば、運用開始日が自動的に設定されます。あるいは、運用開始日欄を手動で設定しても構いません。

後は、売買判定欄に表示される売買シグナル通りにトレードを進めます。実際に売買を行う建玉数は運用建玉数欄に表示されますが、前項で説明したように翌寄付きのギャップの大きさによっては、寄付き時点で運用資金内で建てられる建玉数が違ってくる場合があります。

運用資金に余裕を持たせている場合は、多少の差異には目をつぶってトレードを進めることも出来ますが、出来るだけ厳密にトレードを進めたい場合は、寄付きの気配情報等を参考に、手動で調整する必要があります。
なお、寄付き以降に株価データを更新し、更にシステムのデータ更新を行えば、寄付き時点での正式な運用建玉数が得られます。実際の建玉数と大きな開きがある場合は、場中に過不足分を売買して調整することも出来ます。

運用開始に当たって、そのタイミングをどうするかで悩む場合もありますが、基本的には開始準備が整ったらすぐにスタートして良いでしょう。

株式市場の状況やシステムの好不調を気にする場合があるかもしれませんが、システムトレードでは事前にエントリーの優劣をつけることは出来ません。
むしろ、システムには旬あるいは寿命があると考え、検証終了後出来るだけ早いタイミングで開始するべきではないかと思います。

売買判定欄の売買シグナルが、「買い新規」や「売り新規」、あるいは「買いドテン」や「売りドテン」の場合は悩むことはありませんが、「買いHOLD」や「売りHOLD」の場合はどうすべきでしょうか。
区切りの良いシグナルが出るまで待つこともなくはありませんが、通常はそのままシグナルに乗っかって玉を建てた方が、システムとの整合性は高まります。

また、売買シグナルが「買い手仕舞い」や「売り手仕舞い」、「キャッシュPos」だった場合は、当然エントリーは行わず、新たな売買シグナルが出るまで待つことになります。
「買い増し」や「売り乗せ」、「買い外し」や「売り外し」のシグナルの場合は、運用建玉数欄に表示される株数になるように売買を行います。

なお、運用開始後はシステムのパラメータや運用条件を変更してはいけません。どうしても変更の必要がある場合は、システム運用を停止し、改めて新たなシステムとして作成~運用するべきです。
また、知らない内にそれらの設定が変更されてしまわないよう、システム運用を開始したシステムについては、オペレーションページで「システム凍結」処理を行ってもよいでしょう。

それ以外にも、バックアップを取る、サマリーを保存する、パラメータを抽出する、などの方法で、それらの条件を保存しておくことが出来ます。
万が一に備えて、いずれかの対処を行っておくことを推奨します。

システム運用開始後は、次章で説明するようにデータやシステムを日々更新し、更にはシステムがきちんと機能しているかどうかを確認する必要があります。


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