KFシステムクリエイター取扱説明書(18)

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マネー・副業
(3)合成システム

KFシステムクリエイターでは、2つもしくは3つのシステムを合成して、新しいシステムを作成する機能が備わっています。これを合成システムと呼びます。
前項でも触れましたが、システムを合成することにより、リスク低減や性能向上の効果を期待することが出来ます。

合成システムは、合成元となるシステムの売買シグナルを参照し、それら同士を演算することで新たなシグナルを生み出します。
2つの元システムのシグナルを同比率で単純に足し合わせると、元システムの資産カーブを平均した資産カーブを有するシステムが得られます。

その場合、期待効率は両者の平均にしかなりませんが、資産カーブの直線性を表すEER等の指標は、向上が期待できます。その分、よりリスクを取ることが可能となり、結果的に期待収益の増大が見込めることになります。
これは、システムポートフォリオを形成することと同義であると考えることが出来ます。

また、元システムのシグナルを単純に足し合わせるのではなく、合成比率を変えてやることにより、より良好なシステムを得られる可能性があります。
ただし、売買シグナルは単純な売り買いではなく、小数単位の売買や場合によっては買い増し、売り増し等と言ったシグナルが発生します。そのため、少なくとも50単位程度以上の売買、およびそれを可能とする資金量が必要になります。

これは、3システム以上の合成システムについても言えることです。それらを均等に1/3ずつ足し合わせた場合、得られるシグナルは、(1,1/3,-1/3,-1)の4通りとなります。
ただし、これは元システムにキャッシュポジションが含まれない場合であり、それが含まれる場合は、(1,2/3,1/3,0,-1/3,-2/3,-1)の7通りとなります。これは、資金を3分割してうねり取りトレードを行うことと同じです。

2システムの合成の場合と同様、3つのシステムの合成比率を変えてやると、システム運用はより複雑なものになります。
ただし、KFシステムクリエイターでは、買い新規や買い手仕舞い、買いHOLDや買いドテン、買い増しや買い外し、売り新規や売り手仕舞い、売りHOLDや売りドテン、売り乗せや売り外し、そしてキャッシュPositionと言ったシグナルが、売買単位と共に表示されますので、実運用において迷うことはありません。

これらの合成システムを更に合成することで、より複雑で滑らかなうねり取りシステムを作成し、運用することも可能となります。
ただし、その場合、より大きな資金量が必要になることに注意する必要があります。また、単純に合成数を増やせば性能が向上するとは限りません。

合成システムが安定的に機能する条件は、基本的には追加システムの場合と同様です。ただし、合成システムでは元システムが基準システムである場合、2つの最適パラメータ×合成数分のパラメータが変化しないことが求められます。

また、合成比率を最適化した場合には、その最適パラメータが、2システム合成で1つ、3システム合成で2つ加算されます。
3システム合成で合成比率を最適化した場合には、8つものパラメータが無変化であるという厳しい条件が課されることになります。

その安定性が維持できている間は、合成システムは低リスク、高収益のシステムとして、大いに期待できますが、安定性の維持管理には大きな負荷が掛かります。
結局のところ、システム性能と安定性、そして運用コストとを秤に架け、判断するしかありません。

なお、合成システムには、上記のように元システムの全期間のシグナルを合成してシグナルを得るタイプの他に、ある条件毎に期間を分け、それぞれの期間に適したシステムを合成してシグナルを得るタイプがあります。
これを、レジームスイッチングシステムと呼びます。本来、レジームとは本質的な状態や状況を指し示す言葉ですが、ここでは単に何らかの条件の階層がシフトする様、程度の意味合いで捉えています。

合成システムは、2020年7月10日時点で5つのロジックがあります。以下に、各ロジックについて、説明いたします。
なお、合成システムはその意味合いから、正システム設定でのみ作成する必要があります。これは、元システムの正逆ということではなく、あくまで合成システムそのものの設定ということです。


①合成S1S2:2システムの合成システム

元システムS1と同S2を合成します。得られるシステムは、最適化を行わない単純合成ならば、両者の中間の資産カーブを有するものとなります。

以下に、システム事例を示します。上段が元システム1、中段が元システム2、そして下段が単純合成システムです。
システム銘柄は6770アルプスアルで、元システム1がVWAP正システム、元システム2がVWAP逆システムであり、それらの合成システムはVWAP正逆合成システムとなります。

合成システムa.png
合成システムb.png
合成システムc.png

これらを見ますと、合成システムの管理限界(回帰±2δライン)の間隔が、元システムのそれらよりも狭まっていることが分かります。 
これは、合成システムのリスクが低減したことを示しています。

具体的な性能指標で比較しますと、期待効率が(0.61&0.97)⇒0.79、EERが(0.42&0.45)⇒0.59、損益累計が(\5,787&\8,696)⇒\7,230、プロフィットファクターが(1.26&1.22)⇒1.40、勝率が(44.63%&61.57%)⇒59.68%、損益レシオが(1.57&0.76)⇒0.95、平均損益率が(0.65%&0.30%)⇒0.53%、平均リターンが(23.81%&19.74%)⇒21.43%、年率リターンが(15.09%&10.86%)⇒19.74%、となっています。

線形的な指標である期待効率や損益累計、平均リターンは、元システムのほぼ中間の結果となっていますが、それ以外では単純な平均とはなっていません。
特に、EERは元システムの平均の1.36倍、年率リターンに至っては1.52倍にもなっています。これは、システムポートフォリオによるリスク低減効果が際立った結果であると言えます。

この合成システムの最適パラメータは、次図に示すように元システム1が51%、元システム2が49%となっています。

合成システムd.png

なお、時系列分析に当たっては元システム2のパラメータを固定し、元システム1のパラメータのみ走査しています。これは、システム側で元システム2の合成比率が、100%から元システム1の合成比率を差し引いたものに設定されているためです。

最適化対象指標は年率リターンを採択しました。これは、長期に渡って比較的安定していることと、合成システムにおいて最も効果的だった性能指標の一つが、年率リターンであるためです。

また、資産カーブは次図のようになっています。

合成システムe.png

単純合成システムと見た目の大きな違いはありませんが、第2数値軸の資産vs株価の値が大きく向上しています。これは、次図に示すように累積損益率の推移が大きく異なるためです。
ここで、上段が単純合成システム、下段が合成比率最適化システムの場合を示しています。

合成システムf.png
合成システムg.png

具体的な性能指標で比較しますと、期待効率が0.79⇒0.78、EERが0.59⇒0.59、損益累計が\7,230⇒\7,191、プロフィットファクターが1.40⇒1.74、勝率が59.68%⇒46.82%、損益レシオが0.95⇒1.97、平均損益率が0.53%⇒0.65%、平均リターンが21.43%⇒23.77%、年率リターンが19.74%⇒20.64%、となっています。

わずか1%ポイントの合成比率の違いですが、随分と大きな違いとなっていることが分かります。特に、プロフィットファクターや勝率、損益レシオでは、わずか1%の違いとは思えないほど、大きく異なっています。
その理由は、このわずかな合成比率の違いにより、わずか0.02単位というトレードが発生するためです。

次図に示すように、このわずか1%ポイントの合成比率の違いで、売買シグナルは大きく異なってきます。例えば、単純合成システムでは買い手仕舞いでキャッシュポジションとなっている場面でも、0.02単位の売りポジションを持っていたり、0.98単位を買い外して0.02単位の買いポジションを保持したりしています。

合成システムh.png

合成システムi.png

このように、売買シグナルが大きく異なってくるために、特に売買タイミングやその回数に依存する指標に関しては、大きな違いとなって表れることになります。 

なお、合成比率を最適化した場合、その性能向上効果にあやかるためには、大きな投資資金が必要になります。
上の事例では、最小売買単位が0.02であることから、少なくともそこで100株の株式を売買できるだけの資金量が必要です。

すなわち、100株を売買できる金額の少なくとも50倍(1/0.02)の資金が必要になるわけです。アルプスアルの場合ですと、上場来最高値は4,205円ですから、とりあえず5千円の5,000倍(100株×50倍)で、必要資金は2,500万円以上になります。
信用取引を目一杯利用しても、最低1,000万円は必要になるでしょう。

それだけの資金を投入して、年率リターンで1%ポイント弱の期待収益増でしかないわけですから、あえて合成比率を最適化する理由はないのかもしれません。
ただし、これはあくまで上の事例の結果に過ぎません。他の銘柄やシステム、合成対象等によっては、大きな効果が得られる可能性がないとは言えません。


長くなりましたので、今回はここで一区切りとさせていただきます。次回は、「②合成S1S2S3:3システムの合成システム」から再開いたします。


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