ほらここ、この杉の木に巫女さんがいて…と振り返ると旦那がいません。
え?勝手にどこ行ったのよ、と想っていると後ろに巫女さんがいます。
すると巫女さんは優しく言いました。
『あなたは霊能者さんですよね?』
『はい、仕事として霊視で占いをしています』
『そうなんですね、少しお話をしましょう』
そういうと巫女さんはここに勤める事になった経緯や杉の由来を話してくれ、私はその話に引き込まれていきます。
そろそろ帰らないとと思い礼を言うと巫女さんは急に恐ろしい顔つきで
『ダメですよ、まだここにいなさい』
とすごい迫力で引き留めます。
でも旦那に連絡しないとと思った私はスマホを手にすると電源が切れたままで入りません。
あれ?充電切れた?とおもい巫女さんの話が終わるのを待ちます。
やがて巫女さんは穏やかな顔になり今日も来てくれてありがとう、と別れを告げました。
駐車場では旦那がまた不安そうに待っていましたが霊能者である彼は昨日このこともあり何かあるとじっと待つことにしたそうです。
巫女さんと話したのは30分ぐらいでしたら時間はやはり2時間経っていました。
帰り道、旦那が予定があったのにと不機嫌になりながら運転していると事故現場に差し掛かります。
バスが暴走横転し数台の車を押しつぶした状態でパトカーた救急車で大変な状態でした。
周りの方に聞くと今から1時間に急にバスが止まらなくなって横転したと。
私はハッとします。
あのとき、巫女さんとの話を振り切って帰っていたら…巫女さんが引き留めてくれなかったら…
翌日神社の宮司さんに巫女さんの話をすると、
『うちにはそういった巫女さんはいませんよ、あなた、鳥居杉さんに会ったんじゃろう、昔はよく現れてくれたんですがの』
私は鳥居杉に深々と頭を下げ、礼を言って君子方神社を後にしたのでした。