受け取ったのは百合からの手紙……。そこには感謝の言葉と……なお話:助けた相手はご令嬢ep26➕【朗読動画】

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今回ご紹介の朗読動画は、「助け相手はご令嬢ep1」2018年エブリスタ大賞優秀賞受賞作品のエピソード26、受け取ったのは百合からの手紙……。そこには感謝の言葉と……なお話です。
良かったら聴いていただけると嬉しいです。

・朗読動画もご用意しております。
・文字をお読みになりたい方は、動画の下に小説(文字)がございます。
◉連続小説ドラマ
 助けた相手は御令嬢

作者 北条むつき
朗読 悠奈ゆかり

第26話 手紙

 総合案内に行くと、名前を確認されてある封筒を渡された。宛名には俺の名前鶴見恭吾とあった。裏面には、yuriとだけ書かれてあった。おもむろに封を開けて手紙を読む。


 今、この手紙を読んでいる時、私はもう空の上なんだね。なぁーんちゃって。ちょっと黄昏モードかな? 鶴見さん……。いえっ、恭吾と出会えて本当に良かったと思ってます。あの日覚えてますか? 私を助けてくれた時のこと。果敢に向かう恭吾の姿は眩しくて、一瞬で虜になりました。
 でも私を助けたことで、恭吾に苦しい思いをこれ以上させられないって思った。先日のあなたの連れ去られ事件だって、本当は私が目的だったんでしょう? それはあなたは絶対にそう言わないことはわかっていました。これ以上、あなたに迷惑をかけたくない。だから私はあなたのそばから離れる決意をします。

「なっ何やねんこれ……」

 これから、父と真剣に話して来ます。
最後に顔を見ると、辛くなるのでこれを渡します。今まで短い間だったけど本当に支えてくれてありがとう。本当に本当にありがとう。

 最後のありがとうの言葉が何か滲んで見えた。俺は空港ロビーから見える窓越しのどの飛行機かわからないまま空を見上げた。

「何で、何でもっと早く言うてくれへんねん! いつもそうや。一人で抱え込んで、俺も連れて行けや。俺はお前のことホンマに好きやねんから。力にならせろや……」

 冷静に考えれば、俺は単なるその場限りの男やったんかもしれん。今、百合のご家族に合えば余計に混乱させるだろうと思った。だから百合は自分自身で決着をつけに行ったのだと思った。



 俺は、店に戻った。店長はそこにはいなかった。ただ置き手紙だけがおいてあった。

(彼女、来月には復帰するから、それまで大人しくしときなよ!?)

来月? 俺がもらったのは別れの手紙のはずが、店長にはそう伝えていない。どう言うことだと思った俺は店長に電話した。

「私用? それとも仕事の話?」

 店長はお見通しだった。

「イエッ何でもありません」
「来月さー? 盛大に復帰祝いしてあげようか?」

 店長は私用だと踏み、その優しい言葉をかけてくれた。

「戻ってくるんですか?」
「僕にはそう言ってたけどな。違ったの? ってか会ってないの?」
「はい……」
「あぁ、そうなんだ彼女から、今さっきの便に乗ったって言ってたよ」
「はあい?」
「お前サァ? ちゃんと探したかい?」
「彼女こうも言ってたよ。一人黄昏モードで空見て泣いてたって。私戻ろうかと思ったけど、この決意逃したら本当にダメだからって言って東京に向かったんだよ。鶴見さぁ? 彼女の心意気わかってる? 男なのにそんなにメソメソでいい訳ないよね?」
「………」
「返事がないと言う事は、彼女の気持ちを受け入れてあげる器量を持つってことでいいよね。絶対にくじけるなよ。みんな応援してんだからさ!」
「はい!」

 俺は、百合自身の考えを尊重するように彼女が戻ってくるまで、店でちゃんと仕事をする事にした。いい返事が聞けることを信じて。


◆◇◆◇

 あれから、一ヶ月以上経った。しかし、LINEは愚か、電話も繋がらない状態がずっと続いていた。そんなある日。店宛に一通の手紙が届いた。

 宛名には、鶴見恭吾様と言う文字と裏面には三隅と書かれてあった。
俺は、百合から久しぶりの手紙だと思い封を開けた。店長も隣で気になっている様子だった。

「なんて書いてある?」
「いえ。百合からじゃなくて、三隅泰三と書いてあります。多分百合のお父さん……」

 俺が店長に言うと店長は驚きを隠せない様子で続きを読めと言う。
 それを見て俺もびっくりした。

 鶴見様。京都では百合がお世話になったそうで、ありがとうございます。
 この度お手紙を出した訳には事情があり、詳しくは申せないのですが、百合はあなたの元へ戻っていませんでしょうか。先日百合と話をしました。その時、京都に素敵な男性がいると聞きました。最初は驚き、反対をしたのですが、その後、百合の姿がどこにも見当たらず、探しておる次第です。お手紙で失礼でありますが、消息がわかった場合、この連絡先までご連絡くださいませ。

「クソッ、何やってんだ俺!」

 店長室で俺は大声で叫んだ。
 店長は腕組みをしてその姿を眺めていただけだった。
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