おはようございます。こんにちは。こんばんは。ブログを閲覧いただきありがとうございます。
youtubeにて「語り部朗読BAR」というチャンネルを運営しております。
自身で小説を書き、声優さんに朗読していただいたものに動画編集をして公開しております。
たまに作者自身の北条むつき朗読もございます。
今回ご紹介の朗読動画は、夜中に戻った旦那の由雄に襲い掛かられる美玲のお話です。
良かったら聴いていただけると嬉しいです。
・朗読動画もご用意しております。
・文字をお読みになりたい方は、動画の下に小説(文字)がございます。
◉連続小説ドラマ
欲に満ちた世界
作者 北条むつき
朗読 いかおぼろ
第14話 酔い覚めと声かけ
ガラッと開いた襖から見えたのは由雄さんが無造作に部屋の入り口で立っている姿だった。
半目を開けたが、恐怖を感じた私は一瞬目を閉じた。どうしよう……。どう接したらいいかわからない。私どうなるんだろう……。と、不安に感じていると、由雄さんの小さな声が部屋に響いた。
「寝てるか……」
と言った後、足を擦りながらこちらに近づこうとしているのがわかった。どうしよう。ここでびっくりして起きるのも変だ。どうしよう……。と思っていたら、私の肩に手か何かが当たった。
まずい……。このまま私、変なことされたら嫌だ!
そう思った瞬間、ムクっと起きて、私は小さな和室の部屋の隅に体を捩った。
「何するんですか!? 由雄さん?」
私は身を捩り、胸元を隠しながら、恐怖な顔つきになり由雄さんをみた。すると由雄さんは、酔っているのか、赤ら顔で躊躇することなく、「どうしたの? 何もしないよ?」と私に近づいてきた。
私は、由雄さんの目つきの危うさに膝下の、枕を握りしめ目を瞑った。
「大丈夫……。姉には黙ってて……」
あまりの違和感とその言葉に恐怖を感じ、身を捩った。
赤い由雄さんの顔が私に近づく。由雄さんの目付きのおかしさに、私は立ち上がり、枕を由雄さんに投げつけ、何も持たずに玄関に走りだした。
「何もしないよ! 大丈夫だから……」
そう言われて、大丈夫なはずがないと思い、私は玄関のノブを回し、慌てて外に飛び出てマンションを後にした。
あのまま部屋にいたら襲われる。そう思った私は必死にマンションを出て走り出した。まだ知らない街をどこに向かっているのかわからずに走っていた。
姉というものがありながら、その妹に手を出そうする男の気持ちなどわかるはずもなく、私はイライラと恐怖を感じながら、大阪2日目の夜の街を疾走していた。
どこに行くかも宛てもなく彷徨っていると、煌々としたコンビニの灯りを見つけた。
思わずコンビニに駆け寄り、警察でも呼ぼうかと思って入ったが、まだ事件にもなっていないのに、事情聴取されるのも困ると思って思いとどまった。
コンビニで軽く買い物でもしようと思い直したが、財布を持っていないことに今頃気づいた。
やってしまった。慌てて出てきたものだから、何も持たずに時間を潰そうと店内を少し彷徨き、コンビニ前の駐車場スペースの灰皿付近でマンションに帰ろうかどうしようか戸惑っていた。
今マンションに戻っても、変な目付きの由雄さんに、また変なことされる可能性もあると考え、コンビニ前のポールに座り、時間だけが流れていった。
ボケェーっと夜空を見上げ、物思いに耽る。財布がないので、買い物すらできずに呆然と時間だけが経った。
しばらくすると、灰皿付近で男性たちが屯ってタバコを蒸している。その少し横で私は呆然と空を見ていたら、タバコを持ちながら近づき声をかけてくる男性に出くわした。
「お姉さん? こんな夜更けに一人で何してんのん? 暇してるなら、俺たちとどっかいかない?」
まだ見知らぬ街で、私を大学生かと間違えたのか、その男性は私にナンパをする感じで声をかけてくる。
「さっきからずっといるけど、夜更けに彼氏と喧嘩でもした? それとも暇してるのかな?」
「……いえ……」
私は端的な口調で迷惑っぽく返事を返すと、男性はしつこく私に声をかけてくる。
「ねえ、ねえ、近所? それとも、家出じゃないのよね? 大学生でしょ?」
まだ幼顔の私だからか、私を大学生に見間違えて声をかけてくる男性に私は迷惑がるように首をよそに向けた。
「おいおい、ちょっとぐらい質問に答えてくれてもバチ当たらへんで?」
大阪弁で話す男性は由雄さんしか知らず、さっきの光景が脳裏に蘇って、私は目を見開きびっくりした顔つきになった。
「ごめんなさい。やめてもらえませんか?」
そう返したはずが、男性はしつこい感じで家を聞いてくる。
「近所? もしかしてお金ないのとか? まさかぁ? ハハハッ!」
素無視を決め込んでいようと思ったら、男性が声を張り上げてきた。
「おい! 姉ちゃんさ? 無視せんでもええやんけ! ワレ!」
その口調に恐怖にを感じその場を動こうとした。すると腕が伸びて、私の二の腕を掴んだ。
その行為に私は思わず悲鳴ならぬ声が出た。
「いやっ!」
その声に前方から男性の声が聞こえてきた。
「おいおい! その辺でやめてやり!」
一瞬その声色に懐かしを覚えて、顔を前方に向けると、そこには、なぜか神崎さんが異様な顔つきで立っていた。
「かっ、神崎さん……なんで?」
私は、救世主に感じた。