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◉連続小説ドラマ
欲に満ちた世界
作者 北条むつき
朗読 いかおぼろ
第25話 最終話 その後のふたり
「修さーん、待って!」
「大丈夫? あんまり無理はダメだよ!? まだ完治してないんだから」
「大丈夫……。でもこんなに山の上だと思わなかったから……」
私は神崎さん、もとい、修《おさむ》さんの幼馴染で、修さんの高校時代に亡くなったサエさんのお墓参りに一緒に来ていた。
これは私が修さんに懇願したことだった。
と言うのも、修さんに私の自殺を救ってくれてからと言うもの、立て続けにいろんなことが起こった。そして最悪、死にかけそうになった先日の由雄さんに刺された事件に於いても私は死なずにすんだのだ。
医者の先生曰く「少しでも刺さった刃物がずれていたら死に至っていた。致命傷を負わずに済んだのも奇跡だよ」と言われたことで、これは何かしら助けてもらった修さんの幼馴染のサエさんとの繋がりを感じたからだ。
実際、治療の入院中の夜、私はある夢を見た。それは笑顔で「良かったね」と囁《ささや》かれ、空の上に上がっていく女性の姿だ。
そのことが気に掛かり、私は修さんに昔のサエさんの写真を見せてもらえるように懇願した。
するとやはりだと言うべきか、高校生の時の写真を見た時に思った。夢で見たのはサエさんが私を呼ぶ夢だったと言うこと。
退院した暁には、お礼を言いにお墓参りに来なくちゃと思っていたのだ。
そして今日ようやく念願が叶った。しかしこんな山奥にあるお墓だとは思ってみんなかった。ようやくサエさんが眠るお墓に着いた時だった。
「ハァ! ちょっと修さん!」
「何? やっぱり手を貸した方がいい?」
「違う! 見て! 空ぁ!」
私はある種祝福を受けたようにも感じた。お墓のある場所から見える海と山のグラデーション。そして海の方へと伸びるのは、さっきまでの雨が上がった後の大きな大きな虹だった。
「ねえ、修さん、私たちサエさんから祝福されてるね?」
「ああ! かもなぁ! 綺麗だな!」
「キレイ!」
地平線に伸びる海沿いへと続く道へ山間から伸びる大きな虹。その虹に向けて鳥の大群が大空へと向かって飛んでいった。
その時だった。私は頭の上から声が聞こえたように感じた。まるで夢と同じ情景のように、鳥が大空の天国へと上がる景色を見ている時だった。
【良かったね! おしあわせに!】
小さく聞こえた声は、わたしたちを祝福しているようだった。
「あっ!? 今……。聞こえた!?」
私は修さんに尋ねると修さんは小さく頷いた。
「ああ! 聞こえたよ! 祝福されてるね。俺たち……」
そう……。祝福だ。そして二人の恋の物語が始まるんだ。……そう感じる瞬間だった……。
◆了◆
長い間ご愛読ありがとうございました。これにて完結です。
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