プロが教えるCGアニメーション【第6回】 〜刃牙の溜め編〜

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前回はじめてのキャラクターアニメーションの練習として「しゃがむ・立つ」動きの作り方とヒップファーストの原則をご紹介しました。

次のステップ、2番目の練習としておススメなのはジャンプです。その場で上に跳び上がる垂直跳びです。
このブログでは技術というより知識の積み重ねがアニメーションでは大事と繰り返しお伝えしてきました。今回は身につけていただきたい知識は予備動作(溜め)です。溜めはジャンプに限らずパンチやキックなど予備動作でパワーを蓄え一気に爆発させる動きを作るときに必ずといっていいほど発生する重要な要素です。今回は攻撃モーションスポーツの動きを作るときにも役立つリアリティのある溜めにをご紹介します。

それでは実際に作っていきましょう。リグを動かしてはSの繰り返しでポーズを作っていきます。作業の最初は全部のリグにキーを打ち全リグを選んでタイミング調整するのがオススメです。
まずはボールのバウンドで学んだ重力表現を正しく作りましょう。腰と足のリグの移動Yです。ほとんどのアニメーションは地球もしくは地球に良く似た惑星での動きになるのでこの重力表現は常について回る問題です。正しい自由落下のカーブ(グラフ)を作れるようになりましょう。
さて今回のポイントは予備動作(溜め)です。ジャンプする前に一度沈み込む動きですね。今回はオススメの溜めのやり方を解説します。

みなさんは刃牙という漫画(またはアニメ)をご覧になったことがあるでしょうか?少年、範馬刃牙(はんま ばき)が史上最強の生物である父親、範馬勇次郎を倒すために数々のライバルと戦い成長していく格闘漫画です。私の大好きな漫画です。格闘のポージングも素晴らしく読んでいてモーションの勉強にもなりますね。

この漫画、主人公と父親以外にも数々の魅力的なキャラクターが登場します。
その中の1人で郭海皇(かくかいおう)という中国武術の達人がいます。
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この人なんと120歳のおじいちゃんです。しかしヨボヨボなのにコンクリート壁に巨大な穴をあけるパンチ力を持っています。その力の源、このおじいちゃんが使う技「消力(シャオリー)」こそ今回お話する溜めの極意です。

・シャオリーとは?
消力と書いてシャオリーと読みます。力を消す、つまりリラックス状態を作り出す技です。実はこのリラックス状態がパワーを生み出す秘訣です。リラックス状態と力み状態の差大きければ大きいほど生み出されるパワーが大きくなります。例えばボクシングのパンチは拳が相手に当たるまでは力まないでリラックス当たる瞬間に拳を握ることで衝撃が増します。この緩みと力みの差が大きいほど衝撃が大きくなります。120歳のおじいちゃんはシャオリーによりリラックスを究極ともいえるレベルで極めているため、とんでもない緩みと力みの差を生み出すことができるのです。
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また野球にもこのシャオリー理論が実践されています。元巨人のピッチャー杉内投手がキレのある球を投げる理論をこう語っています。それは、「水をイメージして、リリースの瞬間まではひたすら脱力。脱力につぐ脱力。力むのはリリースのその瞬間のみ。」というもので、弛緩と緊張の振れ幅が打力の要という刃牙における消力(シャオリー)理論そのものでした。シャオリー理論は漫画によって誇張された大袈裟な部分はあるしても、現実的に存在する理論のようです。この理論は一言でいえば緩急です。
ピッチャーのピッチングは緩急が分かりやすいですよね。投げる直前までゆったりリラックス投げる瞬間に力を込めてスピードアップしますよね。さて今回のジャンプでその弛緩(リラックス)と緊張(力み)の表現を実践してみましょう。

ジャンプの場合は予備動作(溜め部分)に緩急を作ることで空中に跳び上がるパワーを生み出します。腰の沈み込み(移動Y)に緩急をつけた場合と緩急をつけない場合とを比較してみましょう。
29Fではまだ腰をそこまで落とさず、まだリラックスしています。そこから急降下することで緩急の差を大きくしています
いかがでしょうか。緩急の差が大きい方が力を蓄える表現に説得力が出ますね。

着地してから戻りまでの体幹のズレも忘れずにつけましょう。しゃがむ・立つの復習ヒップファーストの法則です。着地の衝撃を末端ほど遅れて伝わらせ、腰から頭にかけてムチのようにやわらかくしてみましょう。
今回は予備動作(溜め)について解説しました。
溜めにもいろいろな種類があり、正解は一つではないのですが、その一例として今回の溜めの作り方をアニメーション作りにお役に立てていただければと思います。
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