プロが教えるCGアニメーション【第5回】 〜はじめてのキャラクター練習編〜

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IT・テクノロジー
今回からキャラクターアニメーションの練習に入っていきます。練習に使用するモデルは今回こちらを使用します。

YouTubeなどでアニメーションのチュートリアルを検索すると「歩き」がたくさん出てきます。歩きはアニメーションの基礎と言われていて、確かにその通りなのですが、CGアニメーションの歩きは実はとても難しい部類になります。なのでこのブログで歩きを取り扱うのはかなり先になります。初めての方にオススメの練習は「しゃがむ・立つ」モーションです。
今回は体幹の動きに重きを置いたお話なので腕は隠しています。
立っている状態からしゃがむ
しゃがんでいる状態から立つ

たったこれだけですが、このシンプルな動きの中に驚くほどCGアニメーションの大切な要素が詰まっています。今回の内容はアニメーションの極意と言っても過言ではありません。一つ一つ解説していきますね。

さてこのしゃがみモーションを実際に作っていきましょう。基本的な流れはボールのバウンドと同じです。リグという体の周りにある四角いコントローラーでキャラクターの各部位を動かし、キーボードのSでキーを打っていきます。

0フレーム目に立ちポーズを作りキーフレーム(キーボードのS)を打つ
1秒かけてしゃがむ(30F目にしゃがみポーズを作りキーフレームを打つ)
しばらくしゃがませておきたいのでポーズは変えず50F目にキーフレームを打つ
また1秒かけて立ち上がる(80F目に最初の立ちポーズをコピーする)
という流れになります。
実際の作業の流れを動画でご覧ください。
さてここからがキャラクターアニメーションの基礎にして極意となるポイントです。そのポイントとはヒップファーストという原則です。アニメーションをつける上で最も重要な部位とはどこでしょうか?それはです!ヒップというのはお尻も含めた腰全体のことです。

腰が重要な理由は
①人間の筋肉の中で最も大きな筋肉であり、人間のほとんどの動きの原動力(パワー)は腰から生み出される
普段気づきにくいですが、スポーツだけではなく日常動作でも腰が大いに活躍しています。
②ほとんどの動きは腰からスタートする。
この2つです。

アニメーションはまず腰の動きから付けていくのが基本になります。腰の位置や回転、そしてタイミングをまず決めます。それに合わせて他の部位(胸であったり首や手足であったり)をつけていきます。全ての基準になる存在、それが腰でありヒップファーストの原則です。ほとんどのアニメーションをこの原則に沿って作るとクオリティの高い動きになります

さて今回のしゃがむ立つモーションでヒップファースト、つまり
①腰でパワーを生み出す
②腰からスタートする
この2つを再現してみましょう。

まず①腰でパワーを生み出す
これは立ち上がるときに表現しやすいです。立ち上がる動きは重力に逆らう動きのためしゃがむ動作よりもパワーが必要になります。そのパワーを腰で生み出します。その表現として立ち上がる瞬間に腰を前に倒してみましょう
いかがでしょうか?腰をいったん前に倒すと「よっこいしょ」という力を込めた感じが出て動きの説得力が上がります

次に②腰からスタートする
こちらも再現してみましょう。

ヒップファーストとというくらいなのでセカンド、サード、という順番があります。なんの順番かというと動き始めと動き終わりのタイミングのことです。

腰→お腹→胸→首→頭

という順番です。
腰が最初に動き、末端ほど遅れます。ちょうどムチがしなるような感じです。初心者がやってしまいがちなミスとして全ての部位を同じタイミングで動かしてしまいがちです。これを正しくズラしていくとどうなるでしょうか?グラフエディタを使ってタイミングのズレを作ってみましょう

COG腰
Spine1お腹
Spine2胸
Neck首
Head頭

という順番で4Fずつキーフレームを遅らせていきましょう。
各部位にズラしを入れるととても柔らかい、しなやかなモーションになります。腰が最初、末端ほど遅れるという動きは様々なところで見られます。例えばパンチ。パンチは足腰の回転胸の回転という順番に力が伝わり、その遠心力でさらに遅れて腕を出すという原理です。この原理を再現することで体幹の力を手に伝える威力あるパンチになります。ぜひこの原則を活用してみてください。

今回ははじめてのアニメーションとしてしゃがむ・立つのチュートリアルをご紹介しました。
前回ボールのバウンドでもお伝えしましたが、CGアニメーションは技術として難しいことではなく知識として知っているかどうか、それがとても大切だといえます。ちょっとした知識や原則を覚えることでCGアニメーションのクオリティはグッとレベルの高いものになります。このコツを知る瞬間がとても楽しいですね。観察したり自分で動いてみたりして発見してみてください。もちろんこのブログでもどんどん新しい知識や原則をお伝えしていきます

【余談】
ヒップファーストという原則をご紹介しましたが、もちろん例外も存在します。顔から動き出す場合もありますし、手から先に動くということもあります。どれが正解ということはなくケースバイケースでふさわしい動きを作りましょう。いずれ例外のご紹介もしたいと思います。

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