プロが教えるCGアニメーション【第4回】 〜夢に出るアイツ、その名はグラフエディタ編〜

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CGアニメーションを作る上で欠かせない機能があります。使わなくてもアニメーションを作ることはできますが質の高い動きを作るために必須な機能、その名はグラフエディタ!日本語で言うと関数表です。関数って数学でやりましたね。比例するとか反比例するとかどうとか。
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見た目からしてなんだか難しそうですね。関数とか聞くと文系の人は拒絶反応を起こすかもしれません。でもご安心ください。私は学生時代、物理0点取ったことあります。数学は3点とか当たり前でした。そんな私でも使えるグラフエディタは怖くありません!これから丁寧にご説明していきます。

このグラフエディタ、CGアニメーションを作る者にとって最高の相棒であり最大の宿敵でもあります。作業の大半はとにかくこのグラフとの格闘です。仕事を始めた最初のうちはこのグラフエディタ、夢に出ます。それくらい常に触れる機能なんですね。

さてこのグラフエディタどういう時に使うのか。例えばエアコンの調子が悪いとき、業者を呼びますよね。来てくれた業者は「それじゃ中を開けて見てみますね」って点検しますよね。
そうです、中身なんです。
なんかアニメーションの動きがおかしい、
良い感じにならない、
そういう場合すぐにグラフエディタを開いて中を見ます
前回、ボールのバウンドを作成しましたが、フワフワ変なアニメーションでしたね。0:45あたりをご覧ください。

何かおかしい??どこを直せばいい??
こういうとき業者がエアコンの中身を開けて点検するようにアニメーターはグラフエディタを開きます。前回作ったボールをグラフエディタで見てみましょう。(Mayaの場合ウインドウ→アニメーション エディタ→グラフ エディタで開きます。)
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さてグラフエディタを開きボールを選択したら、左側にある移動Yという文字を選択してみてください。黄緑色のカーブの上でキーボードのAを押すと拡大されます。このグラフエディタはカメラ操作は他と同じでAltを押しながら中ボタン(コロコロ)、右ボタンで拡大縮小、平行移動できます

この移動Yはボールの上下動を表しています。これを見るとボールがバウンドするごとに、つまり時間の経過とともに、だんだん跳ねる高さが低くなっていってるというボールの軌道が一目で分かるのです。これがグラフエディタです。グラフエディタは時間と距離の変化をすぐに把握でき、どういうアニメーションなのかパッと見ただけですぐ理解できる優れものなんです!

バウンドがフワフワしてるのは、このグラフが物理的に間違っていることが原因です。これを正しい形に直すことでこのボールのバウンドは一気に自然な形になります。正しいグラフはどんな形でしょうか?正解はこちら↓!
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最初のグラフとどこが変わっているでしょうか?山部分は全く変えていません。修正した部分は谷部分が滑らかな形から急激な谷になったところです。このグラフの形を直したことでアニメーションはどう変化するでしょうか?再生して確認してみましょう。

見違えるほど自然なバウンドになりましたね。
物理的に間違っていたのは地面に衝突する直前の不自然な減速でした。
ボールは地面にぶつかることで強制的にスピードが0になります。そして作用反作用の法則によりぶつかった時と同じ力で跳ね返ります。その一連の現象を正しく表現したのがこの鋭い谷なんです。

こうして作ってみるとアニメーションはスキルや技術というよりも、知識をいかに再現するかという作業であることが分かります。ボールのバウンドでいえば重力、自由落下、作用反作用の法則といった物理現象を知っていることが重要です。といっても物理や数学を勉強しろいうわけではありません。私は物理0点です。大事なのは①資料を用意し観察すること②軽くでいいので原理を調べることです。プロのアニメーターであってもこの世の中の物、全ての動きが完全に頭に入っている人はほとんどいませんからね。

というわけで今回はグラフエディタの重要性についてご説明しました。みなさん是非このグラフエディタと仲良くなって楽しくアニメーションを作ってみてくださいね!

【余談】
ゆっくり減速しゆっくり加速することを専門用語でイーズイン・イーズアウトと呼びます。分かりやすい例でいえば車の動きです。車は急に止まれないというやつですね。ゆっくり加速しブレーキもゆっくり減速するというスピード変化です。
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