そんなカルが壁を伝って伝えてくるのです。
「人間は嫌い。病院に連れていかれる時はいつも車酔いをして辛い目に合うし、強引にポンプを口の中に突っ込まれ薬を飲まされる。
そして良かれと私を抱いて温めるの」
「決して病気になってはいけない。
ケガもしてはいけない。
病院というところもとにかく恐ろしいところだ」と。
体調を崩せば、あの人間が寄ってくる。
病院も私たちの嫌いな「白いひらひら」をまとった人間が寄ってくるらしいのです。
そう、私たちを不安に陥れ、恐怖さえも引き起こす、あの「白いひらひら」です。
女はよく、雑巾、ペットシーツだの言っています。
私にとっては恐ろしくたまらないもの。
病院に行けばさらに大きな「ひらひら」が現れるらしい。
しかも、それは人間を覆うように合体しているって言うのです。
私はカルの教えを守るべく、病気や怪我には気を使っています。
そしてフクロウの威厳にかけて、存在感を消し、誰にも気づかれないように
常に意識して過ごしています。
そのような思い出したくもないようなことを私のために話をしてくれる姉。
そんな姉のカル……
私を見ると大きく翼を広げ、くちばしを鳴らし威嚇してくるのです。
大きな私に直接は関わりたくないようなのです。
カルは不思議な存在です。
私と彼女の関係は複雑で、彼女のことも衝動で襲ってしまうのは嫌だから、
普段はお互い壁を挟んで静かに意思疎通をしています。
しかし、その距離が私たちを結ぶ糸ともなっています。
時には、壁を越えてもう少し近づいてみたいのですが叶いそうにありません。
そう、私たち姉妹は日ごろから奇妙な日常を送っているのです。