間取りビフォーアフター|中古マンションリノベ

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はじめまして。
東京都内の建設会社で建築設計をしている一級建築士のしかたです。

昨年妻が妊娠したことを機に、中古マンションを購入し、リノベーションをして暮らし始めました。
私も妻も関西出身の一級建築士なのですが、そんな夫婦が、なぜ都内の中古マンションをリノベして暮らすことにしたのか。
どんなことを考えて空間をつくり上げていったのか。

中古マンションリノベを選んだ理由や、自宅購入を決意してから物件探し、設計、施工、暮らし方に至るまで、具体的なエピソードを交えながら、施主と設計者の両方の視点から記録していきたいと思います。

初回は「間取り」に焦点を当て、我が家のリノベーションのビフォーアフターをご紹介します。


1. リノベ前の間取り


購入したのは東京都内、城東エリアに建つ、築40年RC造マンションの2階角部屋。
面積は約70㎡でリノベ前の間取りはごく一般的な3LDKでした。

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こちらはリノベ前にキッチンからリビング側を見た写真です。
リフォーム済みで販売されており、水回りの設備含めてきれいにされておりました。

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リビング側から玄関を見た写真です。
廊下とLDKに面して6畳程度の個室が3つ。
このままでも問題なく住めるので、少々もったいないなと思いましたが、リノベーションすることで、思い描いているイメージに近いものが実現できそうだと確信したので、購入を決意しました。
購入に至る詳しい経緯は、また改めて「物件購入編」でご紹介しようと思います。


2. ビフォー&アフター


リノベーションで活かしたいと考えたこの物件の個性は大きく3つです。

①角部屋3面採光で日当たり抜群(玄関扉横にも採光窓があります)
②3面バルコニー
③南西側にある神社境内の木々が借景となる

どれも外部空間への広がりを生み出す要素ですが、リノベ前の間取りでは、間仕切りによりそれが細切れになってしまっており、個性が活かし切れていないと感じました。
そこで、間仕切り壁を取り払い、広がりのあるワンルーム空間とすることにしました。

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家の中のどこにいても日光に溢れ、外部の緑へと視線が抜ける、広がりのある空間を目指しました。

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間仕切りを取り払うだけで、隣地の緑を借景とした、自然光いっぱいのゆとりある空間となりました。

間取りを考える際には、建物の中だけでなく外部環境にも目を向け、いかにそれを活かせる間取りとするかが大切です

購入した区分面積は70㎡でも、外部環境を活かすことで、その何倍もの環境を手に入れることが可能です。


3. リノベ後の間取り|70㎡ワンルーム

豊かさには、「ゆとり」や「余白」が必要だと思います。
住空間においても、機能的に必要な空間よりいくらか大きな空間であることで、気持ちにゆとりを与え、それが人生の豊かさにつながると考えています。
しかし、都内で手の届く物件となると、どうしても面積が限られてしまいます。

そこで、機能ごとに空間を分けるのではなく、共有することで、暮らしの中に「余白」をつくろうと考え、それを最大化したところ、全ての空間を共有する「ワンルーム」という間取りにたどり着きました。

我が家は現在、夫婦+子供2人(3歳、1歳)の4人暮らしです。
以前は夫婦2人で1LDKの賃貸マンションに住んでおりましたが、LDKと寝室の間の引き戸は来客時以外常に開けっぱなしにして生活していました。
また、お互い同じ空間で別々のことをしていても気にならない夫婦関係でもあったため、ワンルームとすることには全く抵抗はありませんでした。
子供部屋についても、必要となった場合に分けられれば良いと考えています。

間取りは大きなワンルームですが、奥に進むにつれてパブリックからプライベートへと緩やかにゾーニングしたプランとしています。

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4. 空間を緩やかに分ける


プライベート性の高い「奥」の空間は家具や中間壁により緩やかに空間を隔てています。
壁と建具により完全に仕切るのではなく、視線の抜けを残すことで、空間の広がりが感じられ、「ゆとり」が生まれます。

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リビングとベッドスペースは無印のスタッキングシェルフで仕切っています。収納量を上段ほど疎にしていくことで、視線の抜け具合をコントロールしています。



5. 土間


最もパブリックな玄関側は、間口いっぱいの土間としています。

マンションの限られた面積の中で敢えて土間を広く設けることで、玄関がただの靴脱ぎ場ではなく、様々な行動の場となります。ここでも「空間の共有」により「ゆとり」をつくっています。
土間を広くとることで、ベビーカーもたたまずに置いておくことができます。

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土間にワークスペースを設けています。
在宅ワークで、一日中家にいる機会も増えましたが、「下足に履き替える」という動作を一つ入れることで、仕事とプライベートの気持ちの切り替えが少しだけしやすくなります

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また、洗面所も土間に設けているので、帰宅すると下足のまま手を洗うことができます。
コートはワークスペースのコート掛けに掛けておけば、居間にウイルスや花粉を持ち込むリスクも抑えることができます。

風呂も土間経由で入る必要があるので、サンダルに履き替える必要がありますが、旅館で離れの温泉に行くような感覚で、ちょっとした不便も楽しめば風情に変わります

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土間は吐き出し窓まで繋がっているので、土足のまま直接ベランダに出ることもできます。
3面バルコニーの個性を活かす工夫の一つです。



6. みんなが集まるダイニングエリアを部屋の中心に

料理が好きで、人を招いておもてなしをすることも好きなので、部屋の中心はダイニングエリアとしました。

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空間を広く使うため、キッチンは壁付けとし、中央にカウンターテーブルを兼ねた造作の作業台を設置しました。作業台では盛り付けをしたり、パンやピザの生地をこねたりすることを想定しています。
家族は3人ですが、8人くらいまでであれば食卓を囲むことができます。
友人を招いてホームパーティーなんかもしていけたらなと思っています。



7. 多用途なフリースペースと将来可変性


フリースペースは、様々な使い方を想定しています。

・仕事で疲れた時にストレッチをする
・こどもの遊び場
・来客時の宿泊スペース
・将来的に間仕切り壁等を設置して個室とする
etc.

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天井にイケアのカーテンワイヤーを取り付けてあるので(上図オレンジ色破線部)、カーテンを掛ければ、簡易的に間仕切ることが可能です。
仕事で集中したいときやWeb会議時にカーテンを閉めて個室的な使い方をしたり、来客時に布団を敷いてカーテンを閉めれば客間として使えます。

また、将来的に子供部屋等の個室が必要となった場合には、この位置に間仕切り壁を設置することも想定しています。
このように、「家族の変化に合わせて住まいも変化していく」という考え方は、限られた面積を有効に活用して「ゆとり」ある生活をしていく上では大事なポイントだと思います。



8. まとめ


今回は「間取り」に焦点を当ててご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
私たちは、
ワンルームにして外部環境を最大限に取り込みつつ、空間を共有化することで生活に「ゆとり」を持たせる
という選択をしましたが、もちろんこれが唯一の答えではありません。

大切なのは、100の家族があれば100通りの暮らし方があり、その100通りの暮らし方に合わせた100通り住まいのあり方があるということです。
必ずしも一般的なnLDKの間取りがぴったり当てはまるわけではないということです。

今回の記事が暮らしを考える誰かの参考に少しでもなれば嬉しく思います。
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