技術士・第二次試験 (21)

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【R5上下水道部門:上水道及び工業用水道】Ⅲ-2
[添削論文]/技術士第二次試験

【1】 問題文

 日本の水道は、人口減少に伴う給水収益の減少や水道事業者の技術者不足に加え、高度経済成長期において集中的に整備してきた水道施設の老朽化の増大が顕著となっている。また、耐震化の遅れや多数の水道事業者が小規模であり経営基盤が脆弱である。 これらの課題を解決し、 将来にわたり、安全な水の安定供給を維持していくためには、水道事業の基盤強化を図ることが急務となっている。
 上記の状況と改正水道法による国の基盤強化の基本的な方針を踏まえ、水道分野の技術
者として、以下の問いに答えよ。
(1)水道事業の持続性を確保するために、技術者としての立場で多面的な観点から検討すべき課題を3つ抽出し、 それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題から最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する
複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクと解決策につ
いて、専門技術を踏まえた考えを示せ。

【2】 評価事項(by 小泉)

(受講生さんの了解を得て、ここに掲載します。)
 この再現論文の受講生さんの試験結果A評価ではなかったそうです。(BかCは仰られません)。
 本記事の投稿当初、私の評価はAと考えていましたが、フォロワーさんのご指摘の受け、C評価へ変更します。その根拠を以下に示します。
・設問(1)では観点を抽出し、その観点に対する課題を挙げて評価できるが、次問(2)で問われる解決策を先走って記載しているのはマイナスポイント。
・設問(2)では、題意にそって解決策を記載しているものの、ここで記載している懸念事項が次問(3)で問われる新たなリスクに相当しており、設問にそった解答になっていない。
 さらに、ここまで解答用紙に当てはめると、字数がもの足りないのがややマイナスポイント。
・設問(3)は設問に沿った解答であることを評価できる。
・設問(1)~(3)すべて、題意に沿って解答しているため、A評価としてよいと考えます。
 ただし、本論文を解答用紙に本論文を当てはめると、3枚目の半分に満たない字数でした。
 以前、解答用紙3枚の問題に対し、解答用紙2枚目まで書けなくてA評価だった話を聞いたことがあるので、私はA評価はありえると思っていたのですが、この点については正直どう判断してよいかわからなくなりました。
 したがいまして、あえて修正するなら、もっと説明を付け加えることくらいかな、と考えています。

【3】 再現論文(by 受講生)

(1)水道事業の持続性を確保する観点及びその課題
 我が国の水道事業の持続性を確保するために1)財政面、2)技術面、3)施設面の各観点に対する課題を以下に述べる。
●観点1:財政面の課題
 我が国の水道事業は財政基盤を強化する必要がある。具体的には、水道料金の値上げ及び水道事業の民営化などが挙げられる。
●観点2:技術面の課題
 技術面の課題に対して、水道事業者の技術者不足を解消する必要がある。具体的には、技術者の育成及び技術者の定着を促す施策が必要である
●観点3:施設面の課題
 施設面の課題に対して、水道施設の老朽化を解消する必要がある。具体的には、水道管の更新及び耐震化の推進が必要である
(2)最重要課題及びその解決策
 前問で挙げた3つの課題のうち、最も重要な課題は「財政面の課題」である。以下に、その課題に対する複数の解決策を述べる。
1)水道料金の値上げ
 水道料金を値上げすることで、水道事業の財政基盤を強化することができる。ただし、料金値上げには、低所得者層への影響が懸念される。
2)水道事業の民営化
 水道事業を民営化することで、水道事業の財政基盤を強化することができる。ただし、民営化には、水道事業の公共性が失われることが懸念される。
3)水道事業の統廃合
 水道事業を統廃合することで、水道事業の財政基盤を強化することができる。ただし、統廃合には地域住民の反発が懸念される。
(3)新たに生じうるリスクと解決策
ⅰ)新たに生じうるリスク
・「水道料金の値上げ」によって、料金負担が重くなり、水道使用量の減少、水道料金の滞納、水道の不正使用などが生じる可能性がある。
・「水道事業の民営化」によって、民間企業が水道事業を運営することになるため、水道料金の値上げ、水道サービスの低下、水道事業の地域格差の拡大などが生じる可能性がある。
・「水道事業の統廃合」によって、水道サービスの低下、水道事業の地域格差の拡大、水道事業の運営効率の低下などが生じる可能性がある。
2)新たに生じうるリスクに対する解決策
 これらのリスクに対する解決策を以下に述べる。
・「水道料金の値上げによって生じるリスク」に対しては、水道料金の適正化による料金負担の軽減、水道使用量の減少に対する節水啓発活動の実施、水道料金の滞納に対する徹底した取り締まりを行う。
・「水道事業の民営化によって生じるリスク」に対しては、民間企業との契約において、水道サービスの質の維持、水道料金の適正化、水道事業の地域格差の是正などを明確に規定する。
・「水道事業の統廃合によって生じるリスク」に対しては、水道事業の運営効率の向上、水道サービスの質の維持、水道事業の地域格差の是正を行う。
以上

【4】 解答論文(添削後:By 小泉)

(1)水道事業の持続性を確保する観点及びその課題
 我が国の水道事業の持続性を確保するために1)財政面、2)技術面、3)施設面の各観点に対する課題を以下に述べる。
●観点1:財政面の課題
 我が国の水道事業は財政基盤を強化する必要がある。
●観点2:技術面の課題
 技術面の課題に対して、水道事業者の技術者不足を解消する必要がある。
●観点3:施設面の課題
 施設面の課題に対して、水道施設の老朽化を解消したうえに災害対策を実施する必要がある。
(2)最重要課題及びその解決策
 前問で挙げた3つの課題のうち、最も重要な課題は「財政面の課題」と考える。以下に、この課題に対する解決策を述べる。
1)水道料金の値上げ
 水道料金を値上げすることで、事業体の収入が増加するため水道事業の財政基盤を強化することができる。
2)水道事業の民営化
 民間企業による水道事業の運営により、経営効率が向上し、コスト削減が期待できる。また、民間企業は事業の拡大及び新規事業の開発により、収益を増やすことができる。これらにより、自治体の財政基盤が強化され、公共サービスの維持・向上につながる。
3)水道事業の統廃合
 水道事業を統廃合することで、事業の効率化が図られ、コスト削減が期待できる。また、統廃合により、水道事業の規模が拡大し、収益が増加することが期待されます。これらにより、自治体の財政基盤が強化され、公共サービスの維持・向上につながる。
(3)新たに生じうるリスクと解決策
ⅰ)新たに生じうるリスク
・「水道料金の値上げ」によって、料金負担が重くなり、水道使用量の減少、低所得者層への影響、水道料金の滞納、水道の不正使用などが生じる可能性がある。
・「水道事業の民営化」によって、民間企業が水道事業を運営することになるため、水道料金の値上げ、水道サービスの低下、水道事業の地域格差の拡大、水道事業の公共性の喪失などが生じる可能性がある。
・「水道事業の統廃合」によって、水道サービスの低下、水道事業の地域格差の拡大、水道事業の運営効率の低下などが生じる可能性があるため、適切な規制、監督、及び慎重な検討が必要である。
2)新たに生じうるリスクに対する解決策
・「水道料金の値上げによって生じるリスク」に対しては、水道料金の適正化による料金負担の軽減、水道使用量の減少に対する節水啓発活動の実施、水道料金の滞納に対する徹底した取り締まりを行う。
・「水道事業の民営化によって生じるリスク」に対しては、民間企業との契約において、水道サービスの質の維持、水道料金の適正化、水道事業の地域格差の是正などを明確に規定する。
・「水道事業の統廃合によって生じるリスク」に対しては、水道事業の運営効率の向上、水道サービスの質の維持、水道事業の地域格差の是正を行う。
以上

【5】 おわりに

 疑問点、さらなる改善事項等ありましたら、コメントをいただけますとありがたいです。
 よろしくお願いいたします。
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