ことねこの徒然日記 2

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離婚届

 引越をするどれくらい前だったかは覚えていないが、これだけは、はっきり覚えている。
 珍しく母親がご機嫌と言うか、いつもより明るい雰囲気で夕飯の支度をしていた。
 (今日は珍しく家の雰囲気がと良いと言うか、なぜか家の中の空気が軽い気がする)
母親は気分よく、テーブルに夕飯のおかずを並べていく。
心なしかおかずもいつもより豪華なきがする。
 程なくして、父親が帰ってきた。
今日は皆で楽しい雰囲気でご飯が食べれそうな気がした。
 いつもの母親の重々しい空気が今日は無かった。この日は本当に清々しいほど家の中が正常だった。

 この時の私には母親があんな行動に出るとは、知る由も無かった。

 家族全員がテーブルを囲いさあー!ご飯を食べようと皆で
 「いただきまー」
と言い終わるか否かで母親が
 「ちょっと!待ったー!!!」
大きな声で言い放った。私は何が起きたのか理解ができず、母親が次に何を言い出すかを息を殺して見ていた。
 「はい!ご飯はお預け!どかすよー」
と言って、きれいに並んでいるおかずをどかし、テーブルにぽっかり空間ができた。すかさず母親が行動を起こした。
 「ご飯の前に、これ書いて!!」
と一枚の紙をテーブルに置いた!!
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皆は何が起きたかまだ状況を把握できずにいた。
置かれた紙を見ると緑色の縁取りがある。よくドラマで見る離婚届けだった。
 母親は寄りにもよって、家族団らんの象徴と言いても良い。ホンワカ雰囲気が代名詞であろう、夕食のタイミングで、あろう事か!!子どもに見せたくは無いであろう夫婦の戦いに私たちを巻き込んだのである。

 父親は言われるがまま、紙に記入していた。ところがまた母親が言った。

 「ここ違うよ!書き直し!」

 父親はわざと間違えたのだろうか?父親の記憶は全く残っていない。
母親の顔もどんな顔をしてこの一連の行動をしていたのだろか?誰一人この出来事の登場人物の顔は出てこない。ただ、はっきりしているは母親のセリフとこの時がある日の夕飯時!!と言うことだけだった。

そして母親は楽しそうにこう言った。
 「残念だったね!こんなこともあろうかと、もう一枚貰って来てるから!」

この後の記憶は全く何も無い。ご飯を食べたのか?父親がどんな行動をとったのか。
 TVのスイッチをブッツリ切られたように全く何もおもいだせない。

今回の話を大きくなってから母親に話したことがあった。

 母親はケロリっと一言
 「そんな事あったけ?」

 「………………………」

「あ!覚えてないんだね…」

しかたないよね。別れる事はとても大変なことだ。よく言われることだが
【結婚するのは簡単だが別れるのは–】である。母親も然りだろう。
離婚した理由は結局聞く事は出来なっかた。
(それが賢明な判断だったと思う)
なんにせよ、私が今こうして過去の自分と対話できるのは母親のお陰だろう。
やっぱり母親にも父親にも(ありがとう)とつたえたかったな!

私を産み育ててくれてありがとう!!
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