雑記・日本食の海外進出について

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機会があって、日本の寿司が海外にどう思われているか、海外の多くの人と会って話をしました。その結果、様々な課題が浮かび上がったので、ブログにしてシェアさせていただこうと思いました。
日本文化の世界進出を考えていらっしゃる方などになんらかの参考になればと思います。

日本ではカルフォルニアロール、海外ではカルフォルニアマキ


最近、寿司について海外の人とかなり話をする。その中で、いろいろ気づかされる面白い話も多く、そのひとつがカリフォルニアロールです。

カリフォルニアロールは、アメリカで親しまれている巻き寿司の一種。日本では、カルフォルニアロールという。しかし、フィリンピンや、マレーシアでは、このカリフォルニアロールを、カリフォルニアマキと呼ぶ。
面白い現象だなと思った。言葉からどの文化に影響を受けているかがわかる。

東南アジアでは、日本文化に憧れがあり、日本では、アメリカに憧れがある、というような構図がある。日本では、英語がクールに感じられるが、東南アジアでは、日本語がクールに感じられる。
近年、海外では日本語はクールと感じられている現象が加速している。

これは音楽業界でも言える。日本人が英語で歌うよりも、日本人が日本語で歌った方が世界でヒットするケースがある。(宇多田ヒカルやべビーメタルなど)、日本語自体が欧米諸国、アジア諸国からみて、格好いい、クールと感じられてきている現象が起きている。これはとても面白い現象だなと思った。
今、日本文化に追い風は吹いてきている。世界進出するには、とてもいいタイミングだと感じる。

日本人がいいものと思っても、海外の人に響かないわけ

アジアの人たちと魚の話をして感じるのは、彼らは魚のボキャブラリーが異様に少ないということ。たとえばフィリピン人と会話すると、現地の大衆魚であるミルクフィッシュやティラピアは彼らはよく食べる。場所にもよるが、ティラピアは、安いところで1キロ100ペソ(200円)、高いところで180ペソ(360円)くらい。ミルクフィッシュの方が、若干高い。

サーモンやtuna、マッカランなどは言葉自体を知っている人は多いが、食べる頻度はかなり少なくなる。tunaは、フィリピンでは有名で認知度は非常に高い。tunaは、高級魚に分類されるらしい。彼らは、生では食べない。煮たり焼いたりして食べる。少し高いイメージがあるようだ。全く食べたことがない人もかなりいる。

しかし、よくよくフィリピン人と話してみると、違和感に気づく。こっちは、マグロと思って、tunaという言葉を使っているが、彼らは、どうやらカツオをさしているような感じだ。もっと話すと彼らはマグロを分類することをしらない。「tunaはtunaです」と彼らは言う。tunaを分類していない。どうやら、話をしていくと、ツナはマグロをさすのではなく、カツオなどを含めた青くてでかい魚全般を指しているような印象を受けた。

違和感に気づきながらも、お互いツナって美味しいよね、という会話をしながら全く別物をそれぞれイメージしているという現象が起きていた。カツオはbonitoというが、通じない。Bonitoという単語をほとんどのフィリピン人は知らない。漁師の家庭であっても、分類されていなさそうだ。

そんなフィリピン人に対して、大トロの説明は困難を極める。ツナの中でも、クロマグロという種類があり、その頭に近いお腹付近の部分ですよ。希少部位です。脂肪があって美味しいんです。カツオとは違うんですよ。といったところ、もはやポカーンだ。

さて、もう少し分かりやすい説明はないものか、と考えて最近ではこのように外国人には大トロの説明をしている。

「海外では、ツナというと、でっかくて青い魚をまとめてひとくくりにされるけど、私たち日本人は、もっと細かく分類しています。私たち日本人は、魚に対してクレージーなんですよ。ツナの種類をもっと細かく分類してさらに、部位によっても名称をつけています。魚というものにこだわりがあるわけです。日本人は魚に対してクレージーなんですよ、それだけ愛してるってことです。ツナの中でも、最高級のマグロという種類のさらに一番いい部分を大トロと呼んでいるんですよ。これがめちゃくちゃ高価で美味しいんですよ」と話をすると、聞いてくれる。

フランス人が色にこだわりがあり、色の名称をたくさん持っているように、こだわりがある分野に関しては、語彙が豊富になり、細分化されていく。こだわりがない分野は、語彙が貧弱になる。こだわりがない部分にいくらいいものだと強調しても価値を感じない。

日本のいいものが、世界に通用しないことがあるのはこういったことも原因の一つだと感じる。相手が価値を感じないものを、猛PRしたところで、やはり価値は感じない。

日本で高いものが海外では激安

ウニと言えば、非常に高級な食材だと思いがちだが、フィリピン人と話していて、根底から180度ひっくり返った。場所にもよるが、ウニの価値は非常に低い。フィリピンでは、新鮮な生ウニの価値は、非常に低い。数十円で新鮮なウニを大量に買ってきて、酢をかけて、スプーンで食べる。

250gの新鮮なウニを数十円で買えるらしく、もちろん、都市部や海から遠い地域では、値段は跳ね上がるが、ウニは、基本的にものすごい安い。どんな種類のウニを食べているのかはまだよくわからないが、我々日本人が食べているものと、そこまで大きく変わらないだろうと思う。

日本の最高級のウニを是非食べてみてくださいといってもおそらくフィリピン人などには響かない。彼らにとってウニはそこまで価値の高い食べ物ではない。

海外で豊富にあるものを、日本人が猛PRしても、響かない。彼らが何を欲しがっているかを把握しなければ、効果的なPRは難しい。

効果的な伝え方

鉄火巻きを海外の人に説明する際に考えたのは、美味しさをPRしてもなかなか響かないと感じたので、バックグランドを中心に説明しようとした。

例えば、このように説明する。
「鉄火巻きは、寿司ロールのことです。tunaを中に入れてます。鉄火巻きの語源はとても面白いです。鉄火場というのは、昔、ギャンブルする場所だったんですよ。熱した鉄と日本では書きます。そして、鉄火は、燃え盛る時に散る火花という意味もあります。勝負の激しさや、気性の激しさを表す意味もあります。ギャンブルする場所を鉄火場と呼んでました。そこで食べられていたから、鉄火巻きと呼ばれてるようになったんですよ。トロが赤い鉄のようでしょう。 真相は分かりませんが、そういった説があります。あのトランプ好きのサンドイッチ伯爵みたいな由来ですよね。」
サンドイッチの由来を知っている人は、「おおー」となる。サンドイッチの日本バージョンじゃないか、と盛り上がることができる。
鉄火まきのバックグラウンド、背景を説明することによって、興味を惹きつけようとしている。こうすることで興味をもってもらったりする。
同じ食材でも伝え方次第で、印象や反応がかなり変わってくるのだと感じる。

まとめ

 いろいろ調べてみて、世界中で、日本ほど、魚に対して深い知識がある国はなかなかないのではないだろうか。日本を超すような知識をもっている国はあるのだろうか。ここまで魚を細かく分類し、部位も分類しているのは、おそらく世界で見ても日本だけだろうと感じる。
その為、日本レストランが海外に進出すると、この文化の違い、自分たちがいいものと思っていたことが伝わらなくて、苦戦を強いられる。彼らの食生活を理解することがなかなか大変なのだ。
まずは、欧米、アジアの国の食生活を理解しなくてはいけない。彼らは何を求めているのか。

これは、日本食だけではなく、日本から海外進出しようとする全ての品物、サービス、コンテンツに言えることだろうと思う。相手のニーズがあることが前提で、相手に受け入れられるよう、商品やPRをカスタマイズする必要があると感じる。

率直にいうと、いきなり海外進出に取り組んで、一発で成功するのは難しい。日本と海外ではライフスタイルや常識が違う。失敗を繰り返しながら攻略するしかない。しかし、失敗から多くのことを学べるとしたら、それは失敗ではないかもしれません。










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