使用許諾(ライセンス)契約とは?概要、メリット・デメリット、形態、注意点を解説

記事
法律・税務・士業全般
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 使用許諾契約は、産業財産権の保有者が第三者にその権利の使用を許可する契約です。この契約における権利保有者を「ライセンサー」と称し、使用の許可を受ける者を「ライセンシー」と言います。

 産業財産権に基づく複製やその他の行為を実行する場合、ライセンサーの許可が一般に求められます。この契約を通じて、ライセンサーはライセンシーにその権利を行使する許可を与え、対価として使用許諾料を得ることができます。

 一般的には、アニメーション制作会社の著作物である作品を他社が製品化したい場合や、ソフトウェア制作会社が開発したツールを他社が使用したい場合に本契約が用いられます。

メリット

ライセンサーの立場

 ライセンサーからすると、①使用許諾料(ライセンス料)を得ることができる②自社ブランドを広く宣伝できるというメリットがあります。

①使用許諾料(ライセンス料)を得られる
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 使用許諾料とは、ライセンシーが産業財産権が付与されている目的物を使用するために支払う料金のことで、これはライセンサーの収入源となります。

 例えば、音楽や映画、ソフトウェアなどのコンテンツを提供する場合、使用許諾を通じてそのコンテンツを多くの人々や企業に配布・販売することができ、その都度収益を得ることが可能です。

 このように、使用許諾契約は、産業財産権が付与されている目的物を持っているライセンサーがその価値を経済的に最大化する手段として非常に重要です。

②自社ブランドを広く宣伝できる
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 ライセンシーがライセンサーのブランドやキャラクターを製品やサービスに使用することで、そのブランドやキャラクターはさらに多くの消費者や市場に露出することとなります。

 例えば、あるキャラクターの使用許諾を受けたアパレル会社がTシャツやバッグにそのキャラクターをデザインとして取り入れた場合、その製品を購入・使用する消費者がそのキャラクターに触れる機会が増えることになります。
 このように、ライセンシーのマーケティングや販売活動を通じて、ライセンサーのブランドやキャラクターの認知度は大きく向上します。その結果、ライセンサーのブランド価値や知名度が上がり、他のビジネスチャンスや収益の向上に繋がる可能性が高まります。

 使用許諾契約は、単なる収益源としてだけでなく、ブランドの普及・成長戦略の一環としても非常に効果的です。

ライセンシーの立場

 ライセンシーの立場からすると、①1から作るよりも短時間でコンテンツを作成できる②他社の技術・ブランドの人気を利用することができるというメリットがあります。

①1から作るよりも短時間でコンテンツを作成できる
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 使用許諾契約は、既存の産業財産(例:著作物、ブランド、技術)の利用権を取得する契約です。

 この契約によって、新たにコンテンツや製品を1から作成するのではなく、既存のものを基にして、新しいコンテンツや製品を迅速に展開・製造することができるというメリットが生まれます。

 例えば、あるキャラクターやストーリーが盛り込まれた小説の使用許諾を受けた場合、そのキャラクターやストーリーを元にしたゲームや映画を、ゼロからキャラクターやストーリーを考えることなく制作できます。

 このように、使用許諾を受けたコンテンツの背景、人気、認知度などの既存の価値をベースにして、新しいコンテンツの開発時間やコストを大幅に削減することが可能です。

②他社の技術・ブランドの人気を利用することができる
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 技術の場合、最先端の技術や特許を持つ企業から使用許諾を受けることで、新しい製品やサービスの開発を、自社で技術をゼロから開発することなく、迅速に進めることが可能になります。これは、競争優位性の獲得などのメリットをもたらします。

 ブランドの場合、既に市場で高い知名度や人気を持つブランドの使用許諾を得ることで、新しい商品やサービスにそのブランドの価値や信頼性を迅速に結びつけることができます。

 これにより、市場導入の際のリスクが低減し、消費者からの信頼や注目を速やかに獲得することが期待されます。

 使用許諾契約を通じて他社の技術やブランドを活用することは、自社の資源や能力を超えて、迅速かつ効果的にビジネスを展開・拡大する強力な手段となります。

デメリット

ライセンサーの立場

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ライセンシーの監督にリソースを割く場合がある
 ライセンシーが提供する商品やサービスの品質が十分でない場合、ライセンサーのブランド価値や評価が低下する恐れが出てきます。

 また、ライセンシーが契約内容を適切に遵守しない場合、知的財産の無断使用や違反のリスクが高まります。

 さらに契約が終了した後でも、ライセンサーの技術やビジネスノウハウが第三者に漏れるリスクが常に潜んでいます。

 これらのリスクを適切に管理するため、契約の内容を慎重に検討することが求められます。

ライセンシーの立場

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使用許諾料を支払う必要がある
 ライセンシーは使用許諾料として金銭やその他の対価を支払うことが一般的です。

 この使用許諾料は、権利を享受するための対価として必要であり、ライセンシーにとってはコストとなります。

 このため、ライセンシーは予算を確保し、契約の条件に基づいて適切に料金を支払う必要があるというデメリットが生じます。

使用許諾(ライセンス)契約の対象

特許権の使用許諾

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 特許権が対象となる使用許諾契約は、特許権者(ライセンサー)が持つ特定の特許に関する権利を、相手方(ライセンシー)に使用させることを許可する契約です。

 これにより、ライセンシーは特許を侵害することなく、該当の技術や発明を商業的に利用することが可能となります。

 一方、ライセンサーは特許の価値を実現し、使用許諾料として収益を得ることができます。

 この契約は、新技術の普及やビジネスの拡大を促進する一方で、特許の保有者がその価値を適切に保護・収益化する手段としても機能します。

実用新案権の使用許諾

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 実用新案権が対象となる使用許諾契約は、実用新案権者(ライセンサー)が持つ特定の実用新案に関する権利を、相手方(ライセンシー)に使用させることを許可する契約です。

 実用新案は、新規性と実用性を有する形状、構造、または組合せに関する発明を対象とする知的財産権です。

 この契約により、ライセンシーは実用新案を侵害することなく、該当の技術やデザインを商業的に利用することが可能となります。

 一方で、ライセンサーは実用新案の価値を実現し、使用許諾料として収益を得ることができます。

 この契約は、技術やデザインの普及を促進し、実用新案の保有者がその価値を適切に保護・収益化する手段として機能します。


意匠権の使用許諾

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 意匠権使用許諾契約は、意匠権者(ライセンサー)が持つ意匠権を、相手方(ライセンシー)に一定の条件下で使用させるための契約です。

 意匠権は、製品の形状、模様、色などの外観を保護する知的財産権であり、この契約により、ライセンシーは許可された範囲内でその意匠を利用することができます。

 例えば、ある会社が独自にデザインした家具の形状を、他の会社が製造・販売する際にこの契約が締結されることが考えられます。契約には使用の範囲、期間、対価などの詳細条件が定められます。

 この契約は、意匠の独自性と価値を守りながら、その利用範囲を拡大させる手段として利用され、また、ライセンサーにはライセンス料としての収益をもたらす可能性があります。

商標権の使用許諾

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 商標権が対象となる使用許諾契約は、商標権者(ライセンサー)が保有する特定の商標に関する権利を、もう一方の当事者(ライセンシー)に使用させることを許可する契約です。

 商標は、製品やサービスを識別する記号や名前であり、そのブランドの評価や信頼性を表す重要な資産です。

 この契約により、ライセンシーは該当の商標を使用し、製品やサービスの販売・提供を行うことができるようになります。

 一方、ライセンサーは使用許諾料として収益を得たり、ブランドの認知度を拡大することが期待されます。

 この契約は、ブランドの価値を広げる手段として、また、適切に商標の使用を管理・保護する方法として機能します。

著作権の使用許諾

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 著作権が対象となる使用許諾契約は、著作権者(ライセンサー)が保有する特定の著作物に関する権利を、もう一方の当事者(ライセンシー)に使用させることを許可する契約です。

 著作物は、文学、音楽、芸術、映像などのクリエイティブな作品を指し、著作権はこれらの作品の創作者が自動的に取得する知的財産権です。

 この契約により、ライセンシーは許可された範囲で著作物を複製、配布、公演、放送などの方法で利用することができます。

 一方、ライセンサーは使用許諾料として収益を得ることができ、また、自身の作品の利用方法や範囲をコントロールすることができます。

 この契約は、著作物の適切な利用と、創作者の権利を保護する重要な手段として機能します。

使用許諾(ライセンス)方法

1.通常実施権の付与

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 通常実施権とは、産業財産権保有者(ライセンサー)が、他者(ライセンシー)に対して産業財産権を実施する許諾を与える権利を指します。

 具体的に言うと、ライセンサーが他者に対して非排他的な実施許諾権を与える場合、その他者は産業財産権を実施する権利を得るが、排他的な権利ではないので、ライセンサーは他のライセンシーに対して同様の許諾を与えることができる状態となります。

 このような非排他的な許諾を受けた者は、通常実施権を有することとされます。

2.専用実施権の付与

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 専用実施権は、産業財産権保有者が第三者(ライセンシー)に対して、その産業財産権を実施するための排他的な権利を許諾することを指します。
 具体的には、専用実施権を持つライセンシーは、他の第三者とは異なり、その産業財産権を独占的に実施することができます。

 さらに、産業財産権保有者自身も、その特許を実施することが禁止される場合があります。

 このような排他的な許諾を受けた者を専用実施権者と呼びます。

3.クロスライセンス

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 クロスライセンスは、2つ以上の企業がそれぞれの持つ特許権や知的財産権の行使を互いに許諾すること、またはその契約を指します。別名、相互ライセンスとも称されます。

 現代の技術産業においては、一つの製品を製造するのに必要な技術が複数の企業によって特許化されていることが多いため、クロスライセンスの取り決めが一般的になっています。

 このような取り決めにより、各企業は互いの技術を利用して製品を効率的に製造することが可能となり、その結果、より大きな利益を追求することができます。

 さらに、クロスライセンスは特許侵害訴訟のリスクを低減する役割も果たします。互いに許諾された特許を利用することで、企業間の法的紛争を避け、ビジネスを円滑に進めることが期待されるのです。

4.サブライセンス

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 サブライセンスとは、もともとの権利を保有していたライセンサーからライセンシーに対して使用許諾されたライセンス権利を、ライセンシーがさらに第三者に対して権利を供与することを指します。

 この制度は、ライセンスの利用範囲や商業的な活用の柔軟性を高めるために存在します。

ライセンス提携開始までの流れ

1.技術提携によって達成するべき目的を明確化する

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 この段階は、双方のパートナーが技術提携を通じて何を求め、どのような成果や効果を目指すのかを具体的に定義するフェーズを指します。

 例えば、ある企業が別の企業の特定の技術を利用して新しい製品を開発する場合、その技術の具体的な使用方法、開発の範囲、期待される成果、そしてその技術がもたらす商業的価値などを明確にすることが求められます。

2.技術やノウハウの強みを確認する

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 この段階は、技術提携の目的を達成するために提供される技術やノウハウが持つ独自性、競争力、またはその他の付加価値を特定し理解するフェーズを指します。

 ライセンシーとなる企業や個人は、ライセンスを取得する前に、その技術やノウハウが自らのビジネスやプロジェクトにどのように貢献するか、また他の技術やソリューションと比較してどのような優位性や差別化を持っているのかを確認する必要があります。

3.技術提携の相手を選定する

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 この段階は、技術やノウハウを最も適切に活用し、共同でビジネスの価値を最大化できるパートナーを探し出し、決定するフェーズを指します。

 この選定過程は非常に重要で、相手方の技術力、市場での地位、信頼性、ビジネスの方向性など多岐にわたる要因を基に評価が行われます。

 正しい選定により、双方の技術や資源を効果的に組み合わせることで、予想以上のシナジーを生み出す可能性もあります。

4.秘密保持契約を締結する

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 この段階は、双方の企業や個人が契約交渉や技術移転の過程で共有する情報、特に機密性の高い情報を第三者に漏洩しないように取り決めることを指します。

 秘密保持契約(NDA: Non-Disclosure Agreement)は、特定の情報が「秘密」として扱われる内容や期間、情報の取り扱い方、違反時の罰則などを定義します。

 使用許諾契約の前段階や交渉中には、技術的な詳細、ビジネス戦略、価格設定など、外部に公開されることでビジネス上の不利益を被る可能性のある情報が共有されることが一般的であるため、このような情報を保護するために、秘密保持契約を締結することは、信頼関係の構築とビジネスリスクの低減のために不可欠です。

5.相手との交渉を進める

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 この段階は、契約の詳細条件や条項について双方の間で話し合い、合意を形成する過程を指します。

 この段階では、ライセンス料の金額、支払い条件、技術の使用範囲、期間、独占的または非独占的なライセンスの有無、終了条件、知的財産権の取り決めなど、多くの要点について議論されます。

 交渉の過程は、双方の利益やリスクを適切にバランスさせるための重要なフェーズであり、時には外部の専門家や弁護士の協力を求めることもあります。

 正確で公正な交渉を進めることで、後にトラブルや誤解が発生するリスクを低減し、長期的なビジネス関係の基盤を築くことができます。

6.ライセンス契約による技術提携の締結

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 この段階は、双方が交渉を経て合意に至った条件や条項を文書化し、正式な契約を締結するフェーズを指します。

 このライセンス契約には、技術やノウハウの提供範囲、使用条件、ライセンス料の額や支払い方法、契約期間、知的財産権に関する取り決め、契約終了時の取り扱いなど、技術提携に関する重要な事項が詳細に記載されます。

 この契約締結をもって、ライセンシーはライセンサーから技術やノウハウを正式に使用する権利を得ることとなります。

 この段階は技術提携の成立を意味し、双方の義務と権利が明文化されることで、ビジネス上のリスクを低減し、長期的な協力関係を確立する基盤となります。

ライセンス提携開始

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 この段階は、正式なライセンス契約が締結され、双方が契約に基づいて具体的な活動や業務を開始するフェーズを指します。

 この段階で、ライセンサーは約束された技術やノウハウをライセンシーに提供し始め、ライセンシーはこれを基に商品の生産、サービスの提供などのビジネス活動をスタートさせます。

 また、技術移転のサポート、トレーニングや、必要な場合の技術サポートなどのサービスもこの時期に行われることが多いです。

 ライセンス提携開始という段階では、契約の文書だけでなく、実際のビジネスの現場での協力と技術交換が活発になる時期であり、双方のパートナーシップが実質的に形成される重要な瞬間と言えます。

注意点

使用許諾(ライセンス)契約とは、当事者の目的を達成するためにライセンサーの産業財産権を使用します。

 そのため、ライセンスの範囲や判断基準となる使用許諾料、独占か非独占かは特に契約書にて取り決める必要があります。


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