三方よしの経営を建設業界にも導入しては

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 京都の老舗呉服屋さんのお話です。この呉服屋さんは、三方よしの経営を代々実践してこられたそうです。
①経営の基本はお客様の満足。②そして職人の満足。そうして信用が付けば世間の評判も高まり③世間よし。三方がよしとなったところで会社よしということになるそうです。
 この呉服屋さんは目利きのお客様に「値付け」をしていただくそうです。そして値が付くと、職人さんにしっかりと伝え、職人さんに納得をさせます。そのことにより職人さんは、自分はまだまだと捉え、よりいっそう腕に磨きをかける努力をするといいます。呉服屋さんは、職人さんに注文を付けて作ってもらう代わりに、できあがった商品は全て現金で買い取っていたそうです。
 また戦時中には、贅沢禁止令により着物がまったく売れなかったときでも、職人さんが職を変えなくても生活ができるよう着物の注文をし続け、商品を買い取ってきたそうです。そのことにより、呉服屋さんは信頼され、職人さんは安心してその技術を代々受け継がせていくことができたそうです。
このようにして、伝統技術は数百年にもわたって受け継がれてきたのかもしれません。そうして長年にわたり継続され、信用が付き、世間からも評価され、世間よしということになるのだと思います。

 さて、工務店に置き換えて考えて見るとどうでしょうか。まず、住宅建築の目利きに工事の出来栄えを評価していただいて、施工費を査定する。それを職人さんに説明、納得していただいて現金で支払う。そうすると職人さんの向上心が上がり、モチベーションも高まり、技術力がより一層高くなり、お客様の満足度も高くなるかも知れません。その代わり、会社もやる気のある職人さんの生活は保証するくらいの覚悟が必要でしょう。まあ、やってみる価値はありそうですね。
 米国では、各業種の組合(ユニオン)があり、組合が年に数回、職人さんの技術査定を評価するテストがあります。このテストの結果を受けその職人さんの技術等級が決まり、時間給が決まります。米国には、親方制度がないので、この等級が明示されたライセンスカードをハウスビルダーに直接提示することによって時間給が保証されます。高級住宅では、等級の高い職人さんが使用され、ローコスト住宅では等級の低い職人さんが使用されます。
 その辺は、日本ではあいまいとなっています。高級住宅もローコスト住宅も使う職人さんは同じで、賃金は、親方しだいのところがあります。親方が職人さんのでき具合のリスクを取るかわりに、言い方悪いがピンハネする構造になっています。これでは、お客様を裏切っていることになります。そういった意味では、米国のほうが、つじつまが合っていて考え方も合理的です。日本でも米国のようなシステムや、三方よしのような制度ができると単価に見合う仕事が期待できるようになるかもしれませんね。

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