「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~➀」

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(1)素朴なギリシア神話と星座の世界:神話学
①宇宙にはロマンとドラマがある

「星座」の誕生と「ギリシア神話」との結合~約6000年の昔、古代オリエント時代、メソポタミア地方のカルデア人が「星座」の概念を作ったということが文献的に定説になっています。その後、バビロニア地方のシュメール人が紀元前3000年~紀元前2000年頃までが今日の星座を「天の羊達」、惑星を「年老いた羊の星」と呼んでいたという記録が遺跡に残されています。
 その後、地中海沿岸に住み、レバノン杉の巨木で建造した外洋船を走らせて地中海貿易を盛んに行っていた海洋民族であるフェニキア人は、航海の方法として星の動きを重要視し、メソポタミアに起こった「星座」を受け継ぎ、彼らの貿易の中で徐々に広まっていくようになりました。
 そして、フェニキア人との貿易を行ったギリシア人達が、船員達から聞いた星座を自分達の間に広く信仰していた「神話」や「伝説」に登場する人物や獣達と結びつけることによって、自国の中で容易に広めることに成功したのです。ギリシア神話はホメロスやヘシオドスらによる古代ギリシア及び周辺地域の伝承の集大成であり、アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデスの「三大悲劇作家」に代表されるギリシア悲劇の詩人達によって奥行と人間的な深みがもたらされ、ヘレニズム期のアレクサンドリア図書館での整理を経て、1世紀頃にアポロドーロスの『ビブリオテーケー』(ギリシア神話)によって今日のような形となりました。ヨーロッパの教養の源泉にして、今なお造語・造話の源泉として人々にインスピレーションを与え続けています。そして、そうしたイメージを強化するのに主たる役割を演じたのは「占星術」であり、何世紀にもわたって用いられ続けた結果、それは不動の存在となり、天文学もそこから誕生しました。

ギリシア哲学の出発点は「根元」(アルケー)~神話世界からの脱却は宇宙・万物の「根元」の追求(「存在論」「本体論」)から始まりました。
タレス:「哲学の祖」「最初の哲学者」(アリストテレス)。万物の根源は「水」。
アナクシマンドロス:万物の根源は「限定されないもの」(ト・アペイロン)。
ヘラクレイトス:万物の根源は「火」。「万物は流転する。」生成変化そのものが宇宙の実相であると説きました。
ピタゴラス:万物の根源は「数」。ピタゴラスの定理(三平方の定理)で知られます。ピュタゴラス派(教団)は天体の運行をはじめ、一切の自然現象が織り成す「調和」(ハルモニア)を数学・幾何学のロゴスに求め、音楽理論もこの延長に打ち出しました。さらに「大宇宙」(マクロコスモス)と「小宇宙」(ミクロコスモス)としての人間を対比させ、新しい医学を切り開くと共に、死と再生を繰り返すディオニュソス信仰に基づくオルペウス教の「輪廻転生説」を引き継ぐ「霊魂(プシュケー)論」も持っていました。
パルメニデス:南イタリアのエレアを拠点とするエレア学派で、万物の根源は「有るもの」。「有るものは有る、有らぬものは有らぬ」「有るものはただ一にして一切の存在である」として、一切の運動変化を否定しました。プラトンの「イデア」論の原型とされますが、生成流転する自然に関する認識は一切虚妄というパルメニデスの呪縛を克服するためには、レウキッポスとデモクリトスによる原子論の登場を待たなければなりませんでした。弟子のゼノンは「アキレウスは亀に追いつくことができない」という逆説(ゼノンのパラドックス)で有名です。
エンペドクレス:自然哲学者。火・土・空気・水の四元素で世界が成り立っているとしました。これは中国の五行(木・火・土・金・水)論と通じる考えで、後に西洋占星術に取り込まれ、牡羊座・獅子座・射手座は火の星座、牡牛座・乙女座・山羊座は土の星座、双子座・天秤座・水瓶座は風の星座、蟹座・蠍座・魚座は水の星座といったカテゴリー化がなされたりしています。
デモクリトス:万物の根源は「原子」(アトム)。原子の離合集散の物理的運動として、自然現象の一切を首尾一貫した理論に構成した原子論により、自然哲学は完成したとされます。

「宇宙論」から「宇宙科学」へ~「宇宙論」という言葉が使われるのは、人間の体験できる範囲をはるかに超えた世界を扱うからで、宇宙に関して実験することも、再現することも、観察することも出来ないからです。これは生物の進化を扱う学問領域が進化学ではなく、「進化論」であるのと同じですが、最近では総合的・包括的な「宇宙科学」という言葉が一般的になってきました。

【参考文献】
『物理学の歴史』(竹内均、講談社学術文庫)
『宇宙像の変遷』(村上陽一郎、講談社学術文庫)
『神さまはサイコロ遊びをしたか 宇宙論の歴史』(小山慶太、講談社学術文庫)
『99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』(竹内薫、光文社新書)
『宇宙の迷宮への挑戦 般若心経と最新宇宙論』(糸川英夫、青春出版社)
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