キャンパスライフ充実編④:いろいろな人の話を聞きましょう。

記事
学び
Better to ask the way than go astray.(道に迷うよりは道を尋ねる方がよい。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」)
「質問することは、学ぶことの第一歩である。」(『タルムード』)
「どんな人も他人の経験によって学びとるほど利口ではない。」(ヴォルテール)
「他人の災難から英知を習得する者は幸いなり。」(シルス『箴言』)
「神は人間に1つの舌と2つの耳とを賦与したのは、しゃべるよりも2倍多く聞くためなり。」(エピクテトス)

 『宮本武蔵』を書いた吉川英治は「われ以外皆師也」を座右の銘にしており、極真空手の創始者・大山倍達がそれから多大な影響を受けたことは有名な話です。どれほどの逆境でも必ず道を切り開こうと思えば、忍耐力・向上心・吸収力の3つ(これらは「逆境の哲学」に不可欠のものです)を持たなければなりませんが、そのうちの吸収力がこれに相当します。また、成功への最短距離は「成功者から学ぶ」から始まるとされますが、これは自分であれこれ考え、工夫するよりも、最初は素直に成功者の言に耳を傾け、その物真似から始めることの重要性を言っています。すぐれた文章の書き手もセンスのいいデザイナーも、皆、最初はうまい人の技術を盗むことから始めたのです。
 ここで重要なことは失敗者からは、「反面教師」として以外、決して学ばないことです。司法試験の受験勉強などでも、予備校などによくたむろする経験豊富な司法試験浪人の話に耳を傾けていてはいけないとされますし、セールスなどでも「失敗例」よりも「成功例」に学べ(例えば、車のセールスではトップセールスマンの営業でも140~150回に1回売れるとされます。あるトップセールスマンは車が売れなくて悩み、自殺まで考えたそうですが、この事実を知った時、早く149回「NO」を言われないかなと思えるようになり、トップセールスマンへの道が開けたと言います。「なぜ売れないのか」とくよくよ考えるより、それぐらいは「NO」をくらうのが当然なのですから、「なぜ売れたのか」に目を向けた方が建設的なのです)とされます。ただし、その一方で、「過去の成功体験が足を引っ張る」ということが多いのも事実です(ユニクロのケースやいわゆる「2年目のジンクス」もこれに当てはまります)。むしろ、数多くの失敗を経験し、それを克服しようともがく中から新たな開発が生まれ、「成功」に結びついていくわけです。したがって、他人の「成功体験」を研究し、自分の「失敗体験」を教訓にするのがベスト・ポジションと言えるかもしれません。
 ところで、欧米人は概して食事の場を非常に大切にしており、洗練されたマナーに加えてユーモアとウィットがあれば言うことなしですが(日本人には苦手な分野です)、この場が単に交流を温める場であるだけでなく、知的情報交換の場としても非常に貴重であることに注目しなければなりません。もちろん、ただ情報を受け取り、吸収するだけでなく、逆に情報を発信し、接触した相手にプラスを与える存在に自らがならなければなりませんが、こうしたコネクションを如何にゲットしていくか、日頃から関心を持ち、アンテナを張り巡らしておく必要があるでしょう。参考までに日本の地方大学を中退した後、イスラエルに渡ってヘブライ大学に留学後、ニューヨークのアメリカ・ユダヤ神学校で学び、日本人で初めてヘブライ文学博士号を取得した人のニューヨークでのひとコマを紹介してみましょう。場所は1970年代のラビ・ケルマン家におけるある金曜日の晩餐です(手島佑郎著『ユダヤ人はなぜ優秀か その特性とユダヤ教』より)。

ラビ・ケルマン(ユダヤ教保守中道派の総帥、ユダヤ教徒の宗教上の諸問題に対して最終的判断を下すラビニカル議会副総裁):昨日、ベギン首相の特使が来て、西岸入植地問題でイスラエルの立場をバックアップして欲しいと我々に頼んできた。
ジェイムズ・モートン(英国聖公会首席司祭、保守的な聖公会の中で常に革新路線を唱え、女性を聖公会司祭に叙任することに最初に踏み切った):それでどうしたんだ?
ラビ:丁重に断ったよ。入植地問題は微妙すぎて、我々アメリカ・ユダヤ人としては深入りできない性質の問題だ。
セイモア・スィゲル(大学教授、ユダヤ法・ユダヤ倫理学・ユダヤ神秘哲学の泰斗にして共和党の政治顧問。当時のニューヨークで最も影響力のある10人の1人に数えられている):我々はアメリカ市民、ベギンはイスラエル市民。我々は一般論としてしか入植地問題を云々できない。
モートン:しかし、それでベギンは納得したかね?
ラビ:納得はしないさ。その代わり、中東和平の維持の重要性についてアメリカ・ユダヤ人の関心をもっと喚起するように努力したいと答えた。
スィゲル:イスラエル・エジプト和平条約調印まで持ち込んだのは、確かにカーターの功績だ。彼の理想主義にサダトもベギンも感激したからなあ。カーターの宗教的情熱が一挙にサダトとベギンを口説き落とした。しかし、和平を維持するための実務経験が民主党には欠けている。ベトナム反対のシュプレヒコールを指導できても、休戦・撤退となると、民主党の手には負えない。この次は共和党の出番だよ。
エリエ・ヴィゼル(ポーランドの収容所生活を生き延び、ナチス・ドイツ下の数々の悲劇やユダヤ人虐殺を小説化して有名に。フランス語で考え、英語でものを言うとされる):どっちが政権を取っても、アメリカ人はアメリカ人だ。大して変わらないよ。
弁護士N:そんなことはない。共和党は地道だし、民主党は議論に明け暮れるし…。
医者S:セイモアは、不言実行型の共和党の方が、中東の政情安定化には力があると言いたいんだよ。アラブ人にしても、ユダヤ人にしても、理論より実質を取る民族だからね。ニクソンは内政面でウォーターゲートの汚点をつけたが、彼の外交手腕は大したものだった。
ラビ:ところで、ジム、君の方もエジプト政府から招待されているそうじゃないか?
モートン:ウン、近々、キリスト教の代表達と一緒にカイロに行く予定だ。君はサダトに会って、どんな印象を受けた?
ラビ:一口で言えば、アラブ人にしておくには惜しい男だ。あんな人物がユダヤ人であったらな、と思うぐらいだ。我々が彼を訪問したその朝に、彼の親友セバイ(エジプトの日刊紙「アル・アフラム」編集長)がキプロスでパレスチナ・ゲリラによって暗殺された。だが、そんな重大事件が発生しているにもかかわらず、彼は我々のために充分時間を割いてくれた。平和実現の暁には、シナイ山にユダヤ教・キリスト教・イスラム教の礼拝所を建てるつもりだ、と語っていた。
 彼はイスラエルで熱烈な歓迎にあったことがよほど嬉しかったらしい。何度も、「あの訪問は聖なる(セイクレッド)使命だった」と言っていた。それからイスラエル政府の反応がぐずだとこぼしていた。和平に向かってイスラエル政府がもっと速やかに対応しないと、反対派のリビア、シリア、イラクに時間を稼がせることになる…と。
スィゲル:イスラエルは民主主義国だから、意見をまとめるのに時間がかかる。サダトの注文通りのペースというわけにはいかない。
ラビ:その通りさ。サダトにしてもベギンにしても、大変だと思うよ。ちょうど仕立屋みたいなものだ。新しいあつらえ服を縫う一方で、古いくたびれたズボンの繕いもしなければならない。流行服のデザイナーや口の悪い批評家には、場末の仕立屋の苦労は分からない。中東和平という流行の陰で、2人は30年来の憎悪に満ちた古傷を繕う努力をしている。
ヴィゼル:サダトに何か約束したかね?
ラビ:直接には何もしていない。当面は、カイロ大学とアメリカのユダヤ研究機関との間で学術交流を盛んにするつもりだ。君なんか適任だよ…。
画商W:それにしても、サダトは大丈夫なのかな。アラブ圏で孤立して…。
スィゲル:それには秘密がある。エジプトはアラブ諸国に文明を輸出している。サウジ、クウェートをはじめ、エジプト人の技術者、事務管理者、教師のお陰で国家らしい骨組が出来ているのだ。この種のエジプト人の専門家がアラブ諸国には百数十万人いる。彼らが万一、他のアラブ諸国から引き揚げでもしたら、その日の内にどの国も機能停止だ。国交断絶だと口では言っても、現にどの国もエジプトとの領事事務は交換している。
 アラブにも建前と本音がある。外交問題は言葉に踊らされても、本音と実はつかんでおかなければいかん。エジプトはアラブ圏に文明を輸出し、我々ユダヤ人は世界に文化を供給する。イスラエル・エジプトの話し合いの共通点がここにある…。

 この食卓ではさらに話題が発展し、夜半に至っても尽きることを知らなかったと言います。その後の中東情勢の進展や現状を見ると、この会話のすごさが分かります。また、この場に名も無い一日本人留学生が同席していることも驚きですね。

【ポイント】
①聞き上手になることです。
 コミュニケーションの基本は「聞くこと」です。どんなに人間関係が苦手な人でも、「この人から何か学んでみよう」というスタンスで、聞くことはできるものです。欧米では会話術は発達しており、高校などで食事の場での会話の運び方を訓練する所すらあるぐらいですが、「聞く立場」「教えてもらう立場」に立てば、たいていのコミュニケーションは何とかなります。実際、どんな人からでも何がしかは学べるものであり、それが分かってくると人間に対する関心が出てきます。
 要領のいい人は「人の頭で勉強する」ということすらやってのけます。ある本を読破しようと思えば、3日かかるところが、それを読んだ人に「何が書いてあるの」と聞けば、わずか3分でエッセンスをつかむこともできます。知らないことは、1から10まで分かっている人に聞けばいいわけです。こうした要領をつかんでいる人の1人に、『コスモス』で有名なカール・セーガンがいます。彼はディスカッションの名手であり、そうしたプロセスの中からあの膨大な知識を体系化したと言われています。

②聞いた話は貴重な財産となります。
 実は「メモ魔」になることは重要です。相手の話をその場でメモし始めるとイヤな顔をされる場合がありますが、貴重な話は後でメモしておかないと必ず流れてしまいます。さらにこうした話をインプットするだけではなく、アウトプットする場を持つことがコツです。そうすると、「この話、使えるな」という観点で情報としての値打ちを判断できるようになるからです。
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